『映画 タイパ時代に逆行 上映時間、10年で13分増 増配信台頭、制約なく』 は正しいか 1/5(日) 日経新聞1面
【 2009年11月1日 】
初めてインターミッションを映画館で体験した
思わずガラケーでスクリーンを“写メ”した
(この頃“写メ”はまだ死語ではない)
上映時間3時間22分 長かったがいい映画だった
(『沈まぬ太陽』 角川映画 )
Netflixの出資で2019年に公開された
「アイリッシュマン」は3時間29分
それより10年も前に角川はそれと同尺の
映画を製作して公開していた
【 2025年1月5日 日経新聞1面 】
“チャートは語る”シリーズ
映画の上映時間が長くなっているそうだ
世界興行収入上位30位内の平均上映時間が
10年前より13分長くなっているとのことだ

【 なぜ映画は2時間だったのか 】
①映画は公開期間中にできるだけ上映回数を増やしたいので
2時間前後の編集が求められた
②TV映画の放送枠に収まりやすい約2時間の娯楽作品が望まれた
③70年代半ば以降2時間規格のVHSが普及して“2時間”という枠組みが
強固になった
【 なぜ上映時間は長くなってきたのか 】
①動画配信サービス会社の台頭による旧来の映画ビジネスモデルが変容
②配信ではTVの放送枠を考慮せずに製作が可能
③サブスクで録画媒体の必要性が低下
以上のような内容の記事だったが
その趣旨といい示されているグラフといい
にわかには呑み込めなかった
【 年間興行収入TOPの映画の上映時間 】
年間興行収入トップ映画の上映時間の推移を
1924年から2024年までの100年間を調べて
その推移の“傾向”を捉えるために10年毎の
移動年計を取ってグラフ化してみた

1924年~1956年の期間は概ね120分前後で推移している
1956年から1964年に向けて上映時間が長時間化した
これは“十戒” “ベン・ハー” “アラビアのロレンス” “クレオパトラ”などの
叙事詩的な映画が多数制作され流行った時代だった
そのあと1996年あたりまではまた120分くらいで推移している
2008年に向けてまた上映時間が長時間化の傾向を見せているが
“タイタニック”を皮切りに“アルマゲドン” “ロード・オブ・ザ・リング”
“パイレーツ・オブ・カリビアン” “アバター”などCGを駆使した大作が
公開されて大ヒットした
その後は現在までヒット作品は2時間程の上映時間で推移している
【 動画配信サービスの配信時間 】
次に上映時間長時間化の理由とされている動画配信サービスの
オリジナル作品の配信時間の推移を見てみた
取り上げたのは“Netflix”
Netflixのオリジナル映画(ドラマ)の配信時間を配信時期を
上期・下期に分けて平均時間を算出してグラフ化してみた

このグラフを見ると半期ごとに平均してみると
1作品当たりの配信時間は2時間を超えてはいない
シーズンもので1話当たり50分前後で8~10話で
1シーズンとするようなドラマは別だが
1本モノの映画・ドラマだとそんなには
長時間の作品は制作されていない
【 “ルックバック”に関する考察 】
この記事内で24年6月公開の映画「ルックバック」について
『上映時間が58分に収めてヒットしたのは
観客の時短志向に合致したとも取れる』
としている
はたしてそうだろうか?と思ってしまった
“ルックバック”は原作が読み切り漫画なので
元々ストーリーは短いので長編化しにくく
短編になるのは必然だ
但しその短い時間の中で、登場人物の心の変化や
人間関係が深く描き出されて物語が非常に凝縮されている
またアニメーションという表現方法の特性を活かし
短い時間でも感情や世界観を豊かに表現している
原作の4コマ漫画という表現形式を最大限活かし
主人公である二人の関係性を見事に表現している
その二人の感性が観ている側の心に突き刺さって
気持ちいいくらいに感情を揺さぶられる
こういった事がファンの心に刺さったのではないか

また興行的には鑑賞料金を一律1,700円にして割引せず
58分という短い上映時間で上映館の高回転が実現
そのため上映館が通常の1/5という少数館でも
高い興行成績を上げることができたようだが
そんな時短志向などと無理やりこじつけた
陳腐なマーケティング論とは全く別次元の
アニメとしての完成度がヒットの要因だろう
つまり時短志向は多少はあったとは思うが
本質はそこではないだろう
すべては『需要』と『供給』のバランスなのだから
「それを見たい」「あの作品のアニメ化はどうるのか」
という欲求に応え、その期待レベルを遥かに越えるような
作品を送り出せば高いフィーも払ってもらえる
そう言うことなのだろう

【 “映画を早送りで観る人たち” 】
稲田豊史さんの指摘が掲載されていた
「冗長に感じる映画やドラマは倍速しても
面白いだろうと事前に予想できるものは
1日がかりで等倍で一気見する。好きな役者や
キャラクターが出ると分かっていればむしろ
長時間浸れる方がお得だと思う人も少なくない」
この記事は次の一文で締められている
「長時間映画は、消費者の両極端な時間感覚の
間隙を突いた成功例といえそうだ」
さっぱり分からず困惑してしまった
何をどう分析すると10年前と比較して
13分長くなった上映時間の「映画」が
『成功例』という表現になるのだろうか?
コスパ至上主義世代は見たいものだけを見たい
自分の見たい情報だけを見て生活している
多くの定額制動画配信サイトがユーザーごとの
視聴履歴に応じて“おすすめ作品”をレコメンドする
そうしてピッキーオーディエンスが激増する
人は自分の価値観や信条を疑われたくはない
求めるのは“真実ではなく自分の考えを正当化する情報”だ
そのためのデータや理論を見つけて集めてくる
ジャーナリストと称する人々もその傾向はないだろうか
自分と似た意見ばかりが返ってくる“エコーチェンバー”が
起きてはいないだろうか
自分にとって心地の良い情報だけに囲まれて
観点に合わない情報から隔離される“フィルターバブル”と共に
思い込みを正当化する志向に陥っていると感じてしまうのだ

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