ギスギスした現場を「お互いを応援し合える場所」に変えるために、リーダーの私が大切にした2つのアプローチ
「いりません」
「必要ありませんから」
ガチャ、と容赦なく切られる電話の音。
私がかつて管理者として率いていたコールセンターは、接点のないお客様へお電話をし、資料発送の許可をいただく業務を行なっていた。
目標は1日約20件。
数字だけ見れば小さく思えるかもしれない。
しかし、名乗った瞬間に切られ、話をしても断られ、時には無言でガチャ切りされる……そんな時間が延々と続くのだ。
「自分は誰の役にも立っていないんじゃないか……」
毎日、目標に届かない焦りと拒絶される恐怖で、みんなの自己肯定感は
どんどん削られていった。特に、真面目で「良い対応をしよう」と品質に
こだわる人ほど、最初にこの壁にぶつかって自信を失ってしまう。
現場には少しずつ閉塞感が漂い、心の余裕がなくなっていった。
「このままじゃいけない。どうすれば、みんなが自分の仕事に誇りを持って前を向ける現場にできるだろう?」
そう考えた私が取り組んだのは、「仕事の意味を伝え続けること」そして「孤立を作らないこと」だった。

1. 単調な作業を「誇りある仕事」に変える、仕事の捉え方
断られ続ける毎日の中にいると、どうしても自分の仕事が「単調で、誰の役にも立たない作業」に見えてくる。
だからこそ私は管理者として、メンバーに「自分たちの仕事に価値を見出すこと(仕事の捉え方)」を伝えていった。
これは情熱を強要するような、押し付けの精神論ではない。
自分たちの仕事の存在意義や価値を感じてもらうための「ポジティブな意味づけ(リフレーミング)」である。
なぜなら、管理者である私自身が「この仕事は、必ずお客様のお役に立てる価値あるものだ」と本気で信じていたからである。
「ただ『資料を送る作業』だと思うと、断られるのが辛くなっちゃうよね。でもね、私たちが届けている情報は、このお電話の先にいる『本当に困っているお客様』を救うきっかけに必ずなるんだよ」
一人ひとりの「断られてつらい」という気持ちに寄り添いながら、「作業」ではなく「お客様のお役に立つ仕事」へと向き合い方を変えていけるよう、言葉を変えて何度も何度も本気で伝え続けた。
すると最初は「怒られないために電話をかける」だけだったメンバーの中に、いつしか仕事に対する「使命感」と「誇り」が芽生えていった。
自分の仕事に本当の価値があると思えた瞬間、みんなの目の輝きがガラリと変わったのだ。

2. 60人を「一人にしない」ための仕組みづくり
仕事の意味を伝えるのと同時に、現場では「絶対に一人をつくらない」仕組みを工夫した。
当時、現場には約60名のスタッフがいた。さすがに私一人で60人全員の毎日の変化や心の不調を細かく拾い上げるのは不可能である。
そこで、6名×10チームの体制をつくり、各チームに信頼できるリーダーを置いた。
週に一度、リーダーたちと「今、メンバーがどんな状況か」を共有するミーティングを実施。「最近ちょっと結果が出ていなくて元気がなさそう」といったSOSをキャッチしたら、私の出番である。
私がやったことは、
「その人の課題解決に一番役立つ人(良い影響を与えられる人)」を繋ぎ、関わってもらうことだった。
時には同じチームの仲間、時には別のチームの話しやすい先輩、
あるいは私自身や他の上司……。
落ち込んでいる人にベストな人をマッチングし、サポートに入ってもらったのだ。
「誰かが自分のことを見ていてくれている」
「気にかけてくれている人がいる」
人はその温かさを感じた瞬間に、もう一度前を向く強さを取り戻せる。
さらに現場には、私の右腕となってくれる優秀な「ブレーン」たちも育った。彼女たちは私に対しても遠慮なく、「今〇〇さんが壁にぶつかっています。管理者から声をかけてあげてください!」と、私すらも現場のためにアテンドしてくれるほど頼もしい存在になっていったのだ。
お互いを応援し合える場所へ
最初はギスギスし、みんなが下を向いていた現場。
でも、「自分たちの仕事への誇り」を持ち、「お互いを気にかけ、孤立させない」循環が回り始めたことで、空気は劇的に変わっていった。
成果が出なくて苦しんでいる人がいれば誰かが寄り添い、小さな目標を達成できたら全員で喜び合う。
気づけばそこは、「お互いを応援し合える場所」になり、自ずと全員で目標を達成できる、笑顔があふれる現場になっていたのだ。
もし今、職場の人間関係やチームの雰囲気に悩んでいるリーダーの方がいたら、ぜひ知ってほしい。
厳しい管理よりも大切なのは、
「あなたの仕事には素晴らしい価値がある」と信じさせてあげること。
そして、「私はあなたをいつも気にかけているよ」というサインを送り、孤立させないこと。
仕事へのプライドと、人への温かい思いやり。
この2つが揃ったとき、どんな現場でも人は輝き始めるのだと、
私は現場の仲間たちから教えてもらった。
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