カリスマ
新興宗教「熱狂笑」の教祖が壇上に立った。
数十人の信者が、その教祖の声を待つ。
やがて教祖は深呼吸をすると、マイクに語り始めた。
「今日は皆きてくれてありがとう。どうだい調子は?」
信者は一斉に答える。
「元気いっぱいです!!」
「オッケーいつもありがとう。さあ、今日も始めようか。準備はいいかい?」
「はい!!」
教祖の言葉に、信者達は答える。
「いくぜ!」
「おお!!」
「いくぜ!」
「おお!!」
「いくぜ!」
「おお!!」
教祖も、信者達も、ボルテージがあがっていく。
教祖の言葉を、信者達は復唱する。
「昨日~買った」
「昨日~買った」
「箱のトマト」
「箱のトマト」
「全部カビ」
「全部カビ」
信者のマサキが、こみ上げる感情を堪える。
「昨日~買った」
「昨日~買った」
「ビール3缶」
「ビール3缶」
「全部噴出す」
「全部噴出す」
自分の腕をツネって耐える者が複数発生。
「昨日~買った」
「昨日~買った」
「豚のひき肉」
「豚のひき肉」
「裏側ブス色」
「裏側ブス色」
信者は戸惑ったが、教祖の出身地がバレた。
「昨日~買った」
「昨日~買った」
どんだけ昨日の買物続くんだよと、決して思ってはいけないと、あらためて腕をツネる者多数。
「格安こしひかり」
「格安こしひかり」
「10%だけ残り産地不明」
「10%だけ残り産地不明」
マサキが限界ラインに到達しようとしている。
(頑張って耐えろ!笑うなマサキ!)
自分に襲いかかる苦しみより、マサキが心配になってしかたがなかった。
他にも数人、限界ラインに到達している。
できることなら、もう終了してほしいと思ったが、教祖がそんな甘ちゃんなわけがなかった。
「オッケーオッケー!なまら最高だよ皆。こっからドンドン行くから、皆ついてきてくれるっしょ?」
「はい!」
すっかり、北海道弁丸出しになった教祖に、信者たちは何故か痺れあがっているのだった。
「いくぜ!」
「おお!」
「田舎の車道に」
「田舎の車道に」
「牛逃げる」
「牛逃げる」
(ブフォッ!!)
マサキが噴出して膝から崩れた。
(マサキーーー!!)
友を救えなかった自分を責めた。
落ち込み苦しんでいた自分を、この宗教に誘ってくれた、心の友マサキを救えなかった。
ただ、入ってから知ったのだが、勧誘するごとに、その人のお布施の20%がバックされるシステムでケチがついた。
さらに教祖は畳みかける。
「昭和の家には」
「昭和の家には」
「デッカイ銀バエ」
「デッカイ銀バエ」
(ブフォッ!!)
複数の信者が噴出して倒れた。
教祖の恐ろしい攻撃に、カリスマの凄さを知る。
「昭和のおじさん」
「昭和のおじさん」
「パンチパーマ」
「パンチパーマ」
昭和の連続攻撃になんとか耐えていた。
「昭和のおばさん」
「昭和のおばさん」
「パンチパーマ」
「パンチパーマ」
(ブフォッ!!)
多数の信者が、我慢しきれず噴出して倒れた。
残った者は自分を入れてごく少数だ。
「オラーイ。みんな元気?今日も僕の声聴いてくれてありがとう。僕はね、みんなを救いたいんだ。ぶっちゃけ言うと、救えるのは僕しかいないよ。だからさあ、まだまだ声出していくんでそこんとよろしくメカドック!」
意味のわからない、コンサートのMC調も罠かもしれないと思うと、気が休まる瞬間はなかった。
「いくぜ!」
「おお!」
「いくぜ!」
「おお!」
「昨日~買った」
また戻ってきた、(昨日~買った)で一人泡噴いて崩れた。
「昨日~買った」
「俺のパンスト」
「俺のパンスト」
「クーリングオフ」
(ブフォッ!!)
遂に自分も噴出してしまった。
「俺のパンスト」で限界に到達していたが、意味のわからないクーリングオフで、遂にライフがゼロとなった。
果てしない大地が、また、とんでもない神を生み出したと、瞑った瞳から涙が溢れた。
薄れゆく意識の中、今回のお布施、いつもより弾まなきゃと笑みを浮かべたのだった。
