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面接官が最も勘違いしていること


「自分には、人を見る目がある」

面接官という立場に就いたばかりの頃、私はどこかでそう思っていました。

応募者の立ち居振舞い、話し方、経歴、受け答えの滑らかさ。それらを数十分観察すれば、その人が入社後に活躍できるかどうかを見抜くことができる――本気でそう信じていたのです。

しかし、何百人もの採用面接を担当し、その後の彼らのキャリアを追いかけていく中で、私は自分の考えがいかに浅はかで傲慢だったかを思い知らされることになりました。

結論から言えば、面接で人のすべてを見抜くことなんて、絶対に不可能です。

今回は、過去の私と同じように「人を見抜こう」と肩肘を張っている面接官や採用担当者の方へ、そして面接という場に緊張して臨んでいる求職者の方へ向けて、私が失敗から学んだ「採用の本当の意味」をお話ししたいと思います。

1. 完璧な履歴書と、現場でのギャップ

初めて面接官を担当した頃の私は、いわゆる「優秀な人」を探すことに必死でした。

履歴書に書かれた華やかな経歴、洗練された志望動機、どんな質問にも即座にロジカルに答える応答力。「この人は完璧だ! 必ず現場で大活躍する」と自信満々で太鼓判を押し、採用が決まった方がいました。

しかし、実際に現場で働き始めると、周囲とのコミュニケーションがうまく噛み合わず、予期せぬトラブルが起きた際に自責ではなく他責にしてしまう傾向があり、早期離職につながってしまったのです。

逆に、こんなこともありました。

面接では緊張のあまり口数が少なく、言葉も詰まりがち。お世辞にも「話が上手い」とは言えない応募者の方がいました。正直、面接評価としてはスレスレのラインでしたが、何か嘘のない誠実さを感じて採用することになりました。

するとどうでしょう。彼は現場に入ると、誰よりも泥臭く仕事に向き合い、分からないことは素直に周囲に質問し、チームの誰からも信頼されるエースへと成長していったのです。

こうした経験を何度も繰り返すうちに、私は痛感しました。面接という「1時間の切り取られた時間」で見える情報なんて、その人のほんの一部に過ぎないということを。

2. 優秀な人を採るより大事な「価値観の相性」

なぜ、面接での高評価が入社後の活躍に直結しないのでしょうか。 その最大の理由は、採用担当者が「スキルや優秀さ」ばかりに目を奪われ、「価値観の相性」を置き去りにしてしまうからです。

どんなに能力が高く、前職で輝かしい実績を残した人であっても、転職先の企業の文化やチームの「当たり前」に馴染めなければ、その能力を発揮することはできません。

  • スピード感を最優先するベンチャー精神の会社に、完璧主義で慎重な人が入ったらどうなるか。

  • チームワークと調和を重視する組織に、個人主義でスタンドプレーが得意な人が入ったらどうなるか。

どちらが正しい・間違いということではありません。単純に「相性」の問題です。

能力やスキルは、入社後の教育や本人の努力によって後から伸ばすことができます。しかし、その人が人生で何を大切にしているかという「価値観」や「考え方のクセ」は、そう簡単に変わるものではありません。

「優秀な人を採る」のではなく、「自社の価値観に合う人を採る」。これこそが、採用において最も重要であり、最も見落とされがちなポイントなのです。

3. 私が面接で「能力」ではなく「行動パターン」を見る理由

では、「人を見抜くことはできない」と知った上で、私は面接で一体何を見ているのか。

それは、これまでの言葉で飾られた実績ではなく、「壁にぶつかった時にどう行動したか」という素の価値観です。

具体的には、以下のような問いかけを意識して行うようにしています。

  • 「これまでで一番落ち込んだ失敗と、そこからどう立ち直ったか」

  • 「チームで意見が割れた時、自分はどう振る舞ったか」

  • 「どんな時に一番やりがいを感じ、どんな時にストレスを感じるか」

人は理想や綺麗な建前を語るとき、いくらでも自分を良く見せることができます。しかし、「困った時の行動」「失敗した時の学び」を語るときには、その人のごまかしようのない素顔や価値観がにじみ出ます。

知識の量や話の上手さを見るのではなく、「この人の考えていることや大切にしていることは、私たちのチームと響き合うだろうか?」という部分に全神経を集中させるのです。

4. 採用は見抜く仕事ではない。「お互いを理解する」仕事だ

面接官が陥りがちな一番の勘違いは、「面接=評価・選別の場」だと思ってしまうことです。

上から目線で相手をジャッジしようとすればするほど、求職者は警戒し、面接対策で作られた「隙のない仮面」を被るようになります。仮面と仮面で対話をしている以上、本音や価値観の相性など分かるはずもありません。

採用とは、「見抜く仕事」ではありません。 「お互いを深く理解し合う仕事」です。

面接官は、会社の良いところだけでなく、泥臭い課題や大変な部分も正直に開示する。 応募者も、自慢話だけでなく、自分の弱みや転職に至った本当の理由を正直に明かす。

そうやってお互いに「素の自分」を見せ合い、「この環境で、この仲間と一緒に働いたら幸せになれそうか?」を擦り合わせる対話の場。それこそが、面接のあるべき姿だと私は考えています。

5. 最後に:面接に臨むすべての人へ

もしあなたが面接官なら、「面接で相手のすべてを見抜いてやろう」というプレッシャーを手放してみてください。見抜こうとするのをやめた時、初めて相手の生身のストーリーが聞こえてくるようになります。

もしあなたが求職者なら、「自分を優秀に見せよう」と背伸びをするのをやめてみてください。面接官が本当に知りたがっているのは、満点の回答ではなく、あなたという人間のありのままの価値観です。

採用は、勝ち負けや合否のテストではありません。 これから続く長い人生の中で、お互いが「出会えて良かった」と思えるパートナーを探すための、対等なコミュニケーションなのですから。

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