採用担当者が本当に見るべき数字――「応募が来ない」と悩む会社が陥る罠
「とにかく応募が足りません」
「もっと応募数を増やすための施策はありませんか?」
採用支援の現場や、同業の採用担当者と話をしていると、毎日のようにこんな相談を受けます。
確かに、応募数は大事です。応募がゼロであれば、どれだけ素晴らしい面接を行おうが、採用は絶対に成立しません。
しかし、もしあなたが「応募数が少ないこと」だけを問題視し、求人広告の予算を増やしたり、出稿する媒体を増やしたりしているのだとしたら、少し立ち止まってみてほしいのです。
かつての私も、応募数という目先の数字ばかりを追いかけ、盛大に失敗を繰り返してきました。
今回は、私が数々の失敗を経て行き着いた「採用で本当に追いかけるべき数字」についてお話しします。
1. 応募数をひたすら追っていた頃の失敗
採用担当になったばかりの頃の私は、「応募数=自分の成果」だと思い込んでいました。
目標の採用人数を達成できないとき、真っ先に疑ったのは「応募数の不足」です。
「求人媒体の掲載プランを上げて、予算を増やそう」
「露出を増やすために、別の求人サイトにも出稿しよう」
「求人票のタイトルやキャッチコピーをもっと目立たせよう」
矢継ぎ早に手を打ちました。その結果、一時的に応募数は増えました。以前の1.5倍、時には2倍近くの応募が集まることもありました。
「よし、これで採用目標はクリアできるはずだ」と胸を張っていたのですが、現実は残酷でした。応募数は増えたのに、最終的な採用人数はほとんど変わらなかったのです。
「なぜ、これだけ母集団(応募)が集まっているのに採用できないのか?」
いくら予算を投じても成果が出ない状況に、当時の私は頭を抱えていました。
2. 応募が増えても採用できない理由
頭を冷やして採用プロセス全体を分解したとき、私は恐ろしい事実に気づきました。
問題は「応募の数」ではなかったのです。応募があった後のプロセスで、候補者を大量に失っていた(離脱させていた)ことこそが最大の原因でした。
穴の開いたバケツに、どれだけ勢いよく大量の水を注いでも、バケツの中に水は溜まりません。それどころか、水を注ぐスピード(予算)を上げれば上げるほど、穴から流れ出る水の量が増えるだけです。
「応募を増やすこと」に躍起になっていた私は、バケツの底に大きな穴が開いていることにすら気づいていませんでした。
3. 私が最初に見る数字:「面接設定率」
採用の状況を改善しようとするとき、私が応募数の次に――いや、時には応募数よりも最初に見る数字があります。
それが、「面接設定率(応募から一次面接の予約に至った割合)」です。
たとえば、ある求人で100件の応募があったとします。一見すると十分な応募数に見えます。しかし、そこから実際に面接の日程が決まった(設定できた)のが30件だったとしたらどうでしょうか。
面接設定率はわずか「30%」です。
この時点で、あなたは残りの70人の応募者を何らかの理由で失っている(辞退させている)ということになります。
応募から面接設定までの間で離脱が起きる理由は様々です。
応募が来てから、面接案内の連絡をするまでに2〜3日かかっている(スピード不足)
応募者への連絡文面が定型文すぎて、冷たい印象を与えている
面接の候補日時が少なく、現職で忙しい応募者が日程を選べない
設定率が30%のまま応募数を2倍に増やしたところで、失う人の数が70人から140人に増えるだけです。まずは、この「面接設定率」を40%、50%と引き上げる努力をする方が、予算をかけずに採用成果を何倍にも高めることができます。
4. 面接実施率はもっと重要
面接の日程が無事に決まった後、次に見るべき重要な数字が「面接実施率(設定した面接が実際に開催された割合)」です。
100件の応募
30件の面接設定
10件の面接実施
もしこのような歩留まり(歩留まり=各プロセスの通過率)になっているとしたら、設定した30件のうち20件(約67%)が「直前辞退」や「無断キャンセル(ドタキャン)」で消えていることになります。
「最近の応募者はマナーがなっていない」と相手のせいにするのは簡単です。しかし、実施率が極端に低い場合、原因は社内のコミュニケーションにあることがほとんどです。
面接日までのリマインド連絡(リマインダー)を適切に送っているか?
面接の前に、会社への興味や親近感を高めるような情報提供ができているか?
応募者が「ここなら安心して話せそうだ」と思える丁寧な案内ができているか?
設定から実施までの間に応募者の熱量を下げてしまっていれば、どれだけ優秀な面接官が待っていても、会うことすらできずに終わってしまいます。
5. 採用は単なる足し算ではなく「掛け算」である
採用活動とは、ひとつの数字で決まるものではありません。すべてのプロセスが繋がった「掛け算」で成り立っています。
[採用数]= 応募数 × 面接設定率 × 面接実施率 × 内定率 × 内定承諾率
(※入社後の活躍まで考慮するなら、ここにさらに「定着率」が掛かってきます)
どれかひとつの数字がゼロに近ければ、他の数字がどれだけ大きくても、掛け算の合計(採用数)は激減します。
採用が弱い会社ほど、「応募数」という一番手前の足し算(または掛け算の最初の数字)ばかりに目を奪われがちです。
一方で、採用が強い会社は「どこで候補者が離脱しているか(歩留まりのボトルネック)」を正確に把握し、その確率を1%でも引き上げる泥臭い改善を繰り返しています。
6. 数字を見る場所を変えると、採用の課題が見えてくる
もし今、あなたの会社で「なかなか採用できない」と悩んでいるのであれば、一度数字を見る場所を変えてみてください。
応募から初回の連絡まで、何時間(何日)かかっているか?
応募者のうち、実際に面接の予約が取れているのは何割か?
日程調整が完了したうち、当日ちゃんと面接に来てくれる人は何割か?
これらの数字を可視化するだけで、「求人媒体のせい」でも「応募者の質の問題」でもなく、自社の選考プロセスの中に原因があったという事実が浮き彫りになるはずです。
連絡スピードを「24時間以内」から「2時間以内」に変えるだけで設定率が跳ね上がることもあります。面接日程の候補を夜間やオンライン対応に広げるだけで実施率が劇的に改善することもあります。
これらはすべて、追加の広告予算を1円もかけずに今すぐ社内で取り組める改善です。
7. おわりに:原因は求人媒体ではなく、社内にあるのかもしれない
採用できない本当の理由は、外の世界(求人媒体や市場)にあるのではなく、社内の選考プロセスや応募者対応の中にあるのかもしれません。
「応募が来ない」と嘆く前に、まずは今来てくれている大切な1人の応募者に対して、自社がどのようなプロセスで向き合っているかを見直してみてください。
数字を見る場所をほんの少し変えるだけで、あなたの会社の採用力は、今日から大きく変わり始めるはずです。
