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電力制度ニュース|2026年10月、インバラが変わる。インバランス制度のおさらいと事業者が備えること

需給ひっ迫時のインバランス料金を引き上げる制度改正が、2026年10月1日から施行されます。
当初は2026年4月の施行が予定されていましたが、JEPX(日本卸電力取引所)の時間前市場システム更新の延期に伴い、半年後ろ倒しになっています(第15回 制度設計・監視専門会合、2025年11月21日)。電気事業者の損益に影響がある制度改正のため、施行までの残り数か月を需給管理体制の点検をおすすめします。
本記事では、まず「インバランスとは何か」「現行制度のどこを変えるのか」を整理し、その上で2026年10月からの主な変更点を解説します。

改めてのおさらい:インバランスとは何か

同時同量の原則と計画値同時同量制度

電気は、発電量(供給)と消費量(需要)が常に一致していなければ、周波数が乱れて品質が維持できません。これが「同時同量」の原則です。
2016年度の小売全面自由化以降、日本では計画値同時同量制度が採用されています。小売電気事業者と発電事業者は、1日を48コマに分割した30分単位のコマごとに、需要計画と発電計画を作成し、実需給の1時間前(ゲートクローズ)までに需給を一致させる運用を行います。実需給で計画と実績にずれ(インバランス)が生じた場合、一般送配電事業者が調整力(電源等)に指令を出して系統全体の需給を維持し、その結果を事後的にインバランス料金として精算します。

インバランス料金の算定式

2022年4月の制度改正により、現行のインバランス料金は「調整力の限界的なkWh価格」を基本に算定されます。一般送配電事業者が広域メリットオーダーで実際に稼働させた調整力のうち、

  • 不足インバランス時:上げ調整した調整力の中で、最も高いkWh価格を引用

  • 余剰インバランス時:下げ調整した調整力の中で、最も低いkWh価格を引用

という考え方です。30分コマあたりの料金は、5分ごとの限界価格を加重平均した値となります。連系線分断が発生したエリアは、エリア毎に独立して算定されます。
なお、2022年3月までの旧制度では「スポット&時間前市場の加重平均値 × α + β ± K/L」という、卸市場価格を起点に調整項を加算する式が使われていましたが、これは廃止されました。新制度の眼目は、市場価格の代理計算から、実需給で実際に動いた調整力のコストを直接反映する設計への転換にあります。
そのうえで、需給ひっ迫時には「補正インバランス料金」が適用されます。一般送配電事業者が需給調整に活用できる「上げ余力」が薄くなるほど、追加的な供給力確保や将来の調整力確保増加といった社会的コストが膨らむため、これを価格に反映する仕組みです。

出典:電力・ガス取引監視等委員会「2022年度以降のインバランス料金制度について
(中間とりまとめ)」を基にenechain作成

C値・D値の位置づけ

補正インバランス料金は、「補正料金算定インデックス(広域予備率)」が低下するほど上昇するグラフで定義されます。このグラフを規定する2つのパラメータが、今回の改正の主役である C値とD値 です。

  • D値:補正インバランス料金が立ち上がり始める水準を決めるパラメータ。広域予備率8%以下で発動。

  • C値:補正インバランス料金の上限値(円/kWh)。広域予備率0%のときに適用される最高料金。

つまり、需給がやや厳しくなり始める8%でD値が発動し、極めて厳しい局面(3%以下)でC値の水準まで料金が引き上げられる、という二段構えです。価格を高くすることでDR(デマンドレスポンス)や自家発電など追加供給力を引き出し、需要家の節電などの行動変容を促す狙いがあります。

出典:電力・ガス取引監視等委員会「2022年度以降のインバランス料金制度について
(中間とりまとめ)」を基にenechain作成

横軸を補正料金算定インデックス(広域予備率)、縦軸を補正インバランス料金とした関係グラフは、電力・ガス取引監視等委員会「2022年度以降のインバランス料金制度について(中間とりまとめ)」の本文PDFに公式図解が掲載されています。A・B・B'・C・Dの各パラメータの位置と意味が一覧でき、本記事と合わせて確認すると理解が深まります。

なぜいま見直しなのか

現行のC値は 200円/kWh、D値は 45円/kWh に設定されており、これは2022年度から続く暫定値です。本則の600円/kWhを大きく下回る水準で、当初は2024年度から600円/kWhへの引き上げが計画されていました。
200円/kWhという暫定値が設定された背景には、2021年1月のJEPXスポット価格高騰(一時200円/kWh超)を受けた小売電気事業者の経営危機があり、激変緩和としてセーフティネット的に低めに設定された経緯があります。その後も小売事業者への急激な影響回避やシステム改修等の準備期間を理由に、200円/kWhの据え置きが2025年度まで4年間継続されてきました。
しかし、運用を通じて課題も明らかになりました。電力・ガス取引監視等委員会の第8回 制度設計・監視専門会合(2025年4月25日、事務局提出資料)では、C値・D値が需給ひっ迫時の社会的コストを反映しきれておらず、結果として時間前市場・スポット市場の価格上昇が抑制されてしまい、DRや自家発電など追加的な供給力を引き出す効果が弱まっているとの整理がなされました。
つまり、「価格シグナルが弱すぎて、需給ひっ迫時にリソースが集まらない」という構造問題です。今回の見直しは、この価格シグナルを実態に近づける方向の調整と位置づけられます。

変更点は3つ

1. C値の引き上げ:200円/kWh → 300円/kWh

広域予備率3%以下で発動するC値が、2026年10月以降は当面の間 300円/kWh に引き上げられます(沖縄エリアも同様)。本則の600円/kWhには戻さず、社会的コストとセーフティネットのバランスを取った中間的な水準として設定されています。
水準の根拠としては、容量市場の約定価格(2025〜2027年度の3カ年平均値253円)にD値の45円を加算すると約300円となること、直近の追加供給力公募(kW公募)の試算値が300〜400円であることが参考とされています。

2. D値の引き上げ:45円/kWh → 50円/kWh

広域予備率8%以下で発動するD値も 50円/kWh へ小幅に引き上げられます。一見地味な変更ですが、D値の発動頻度はC値より格段に高く、累積で見ると損益インパクトはC値を上回る可能性もあります。実務的には、こちらの方が注意すべき変更と言えます。
水準は、広域予備率8%で実施される余力活用電源の追加起動コストを反映した「定量的な実績に基づいた合理的な水準」として設定されました。

3. セーフティネットとして「累積価格閾値制度」を新設

引き上げ一辺倒ではなく、長期化を抑える仕組みも組み込まれます。対象日の直前7日間で、スポット市場のエリアプライスが200円/kWh以上となるコマが累積 30コマ に到達した場合、翌日から補正インバランス料金の上限を 100円/kWhまで一時的に引き下げる 制度です(沖縄エリアはインバランス料金を指標)。直前7日間で100円以上の発生コマがゼロになった時点で解除されます。
発動条件(200円以上の累積)と解除条件(100円以上が消滅)で参照する価格レベルを変えた非対称設計で、需給の揺り戻しを抑えながら段階的に通常モードへ戻す意図が込められています。長期間にわたって上限価格が継続する状況下では、追加供給力として期待できるリソースが出尽くし、小売電気事業者が回避困難な不足インバランスを累積負担し続けるリスクへの配慮です。

施行時期はなぜ2026年10月か

当初予定の2026年4月から半年後ろ倒しになった理由は、JEPXの時間前市場システム更新の延期です。第15回 制度設計・監視専門会合(2025年11月21日)で複数の事業者から対応困難との意見が示され、システム更新が延期されました。これに伴い、時間前市場のエリア別情報公表と合わせて、インバランス料金制度の施行時期も2026年10月1日に変更されています。
なお、制度内容(C値300円/kWh、D値50円/kWh、累積価格閾値制度など)に変更はなく、純粋に施行時期だけがずれた形です。

需給管理業務にどのような影響があるか

実務への影響は、シンプルに「インバランスを出した場合の単価リスクが拡大する」ことです。C値発動時は1.5倍、D値発動時も1割強の引き上げになります。
需給ひっ迫局面は冬季ピーク・夏季ピークの一部の時間帯に集中しがちですが、需要予測の精度や時間前市場での調整余地が不足していると、わずか数コマでも収支インパクトが大きくなります。業界関係者からは、低圧の需要予測の取り込み漏れで1日1億円規模の損失が発生したという事例も聞かれており、制度改正後はこうした事故の経済的影響がさらに拡大します。
国際的に見れば、英国のBalancing Mechanismでは、需給ひっ迫時の調整コストはリアルタイム入札価格にそのまま反映され、停電の社会的コストであるVoLL(Value of Lost Load)の£3,000/MWh前後がインバランス料金の事実上の上限として機能する設計です(電力・ガス取引監視等委員会「イギリスのインバランス制度について」2018年10月)。実際、2021年9月の風力低出力局面では、複数日でインバランス料金が£3,000/MWhを超え、これが英国小売事業者の連鎖破綻の一因にもなりました(日本エネルギー経済研究所「欧州における卸電力価格の高騰」)。欧州大陸側も、ACER(EUエネルギー規制協力庁)が定めるバランシングエネルギーの技術的な価格上限は15,000 €/MWh(円換算で概ね240万円/MWh)と、日本よりはるかに広い変動幅を許容する設計です(ACER Decision 09/2024 on the Pricing Methodology)。今回の見直しは、日本の制度を「実コスト反映型」へ一段近づける動きと位置づけられます。
加えて、2026年10月1日の施行と同時に、時間前市場のエリア別情報公表もJEPXのシステム更新と連動して開始される予定です。エリア別の市場情報を踏まえた時間前取引の重要性が一段と高まる見込みで、需給予測精度の向上と合わせて時間前市場を活用したインバランス抑制の社内体制の構築が重要になります。

まとめ

2026年10月のインバランス料金制度の見直しは、「需給ひっ迫時の価格シグナルを強める」と「小売電気事業者の累積負担に上限を設ける」の両方を組み込んだ、バランス重視の制度設計です。当初の600円/kWhが消えたわけではなく、段階的引き上げの第一歩という性格が強い点も押さえておきたいところです。
現場の実務から見れば、需要予測の精度、同時同量管理、時間前市場での機動的な調整──こうした需給管理の基本機能の重要度が、これまで以上に直接的に損益に効くようになります。施行までに整えておきたい具体的なアクションは、次の3点です。

  1. 需要予測精度の向上(特に冬季・夏季ピーク時など需給ひっぱく可能性の高い時間帯)

  2. 時間前市場での取引体制の整備(人員体制、取引ルールや取引システム・環境)

  3. 累積価格閾値制度の発動条件(200円以上が直前7日で30コマ)を社内アラートに設定

最後に

enechainは卸電力取引プラットフォームeSquare Liveやリスク管理SaaSのeScanに加え、SaaS型の需給管理システム「eBalance」を2026年秋に正式リリース予定です。2026年6月10日よりトライアル提供を開始しています。
(弊社プレスリリース:https://enechain.co.jp/news/enechain-to-launch-energy-supply-and-demand-management-system)
今回のインバランス料金制度の見直しと同時期のJEPXシステム全面更改に、リリース時点で対応済み。需要予測・供給力・約定データ・計画提出状況を1画面に集約し、取引先との計画値不整合を即時検知することで、需要予測の取り込み漏れに起因する インバランス事故の防止につながります。さらに、JEPX入札ロジックを事前設定し結果を検証する仕組みで、時間前市場での機動的なポジション調整も支援します。具体的なサービス内容・無料相談はeBalanceサービスサイトをご覧ください。
eBalanceサービスサイト:https://enechain.co.jp/services/ebalance

最後までお読みいただきありがとうございました。
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