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補助金より強い? 日本政府がスタートアップの“最初のお客さん”になろうとしている理由

スタートアップにとって、補助金より嬉しいものがある。

それは「誰かが実際に商品を買ってくれること」だ。

しかも、その「誰か」が政府や自治体だったらどうだろう。

これはかなり強い。

なぜなら、起業直後の会社が最も苦しむのは、

「商品を作ること」だけではないからだ。

本当に難しいのは「誰が買ってくれるの?」という問題である。

どれだけ素晴らしいAIを開発しても。
どれだけ革新的なロボットを作っても。
どれだけ社会問題を解決するサービスを考えても。

売れなければ会社は潰れる。

身も蓋もないが、これが商売だ。

そこで政府が、

「じゃあ、まず行政で使ってみよう」

という役割を担う。

これが「政府・自治体によるスタートアップの調達」という考え方だ。


補助金をもらっても、会社は儲からない

ここは非常に重要だ。

スタートアップ支援というと、どうしても、

「国から補助金が出る!」

という話に目が行く。

しかし、補助金は基本的に売上ではない

たとえば、

「新しい防災システムを開発するので、1,000万円補助します」

とする。

会社には1,000万円が入る。

研究開発は進む。

素晴らしい。

でも、その後どうする?

誰が買うの?

ここで止まる。

補助金を使って商品を作った。

完成した。

営業を始めた。

「素晴らしいですね」

と言われた。

誰も買わない。

スタートアップにとって、これは地獄である。

「評価は高いのに売れない」

ほど悲しいものはない。


だから「政府が顧客になる」という発想が重要になる

政府・自治体には、民間企業とは違う巨大な特徴がある。

大量の課題を抱えている。

防災。

福祉。

介護。

教育。

交通。

インフラ。

行政手続き。

環境。

地域医療。

人手不足。

高齢化。

空き家。

災害対策。

こうした問題は、日本中の自治体が抱えている。

そして、その問題を解決するために、

毎年、大量の税金を使ってサービスやシステムを調達している。

つまり政府は、

ものすごく巨大な「お客さん」

でもある。

ここにスタートアップが入り込めれば、単なる補助金とは全く違う。


例えば「AIで行政を効率化する会社」があったとする

架空の会社を考えてみよう。

社員5人。

資本金も少ない。

でも、

「AIを使って自治体の問い合わせ対応を自動化するシステム」

を開発した。

例えば住民から、

「住民票はどこで取れますか?」

「粗大ごみはどう出しますか?」

「保育園の申請は?」

といった問い合わせが来る。

AIが24時間回答する。

職員の負担が減る。

住民も便利になる。

素晴らしい。

……ところが問題がある。

実績がない。

民間企業に営業しても、

「自治体で使った実績はありますか?」

と聞かれる。

ありません。

「何人くらい使っていますか?」

まだいません。

「セキュリティは?」

もちろん対応しています。

「でも実際に導入したところは?」

……ありません。

はい。

スタートアップ営業あるある地獄。

実績がないから売れない。

売れないから実績ができない。

完全なニワトリと卵である。


そこで自治体が「実証実験」をする

ここで自治体が、

「じゃあ、うちで実証してみませんか?」

となる。

これが非常に大きい。

自治体で実際に使う。

問題点が見つかる。

改善する。

住民からフィードバックを得る。

実績ができる。

別の自治体に営業できる。

民間企業にも営業できる。

つまり、

行政が最初の顧客になることで、会社が「実績」という最強の営業資料を手に入れる。

これが政府調達・自治体調達の大きな意味だ。


「自治体で採用された」は営業資料になる

例えば営業マンが、

「うちのサービスは凄いですよ!」

と言う。

相手は、

「へえ……」

で終わる。

ところが、

「○○市で導入されています」

と言った瞬間、話が変わる。

なぜなら、

第三者による信用

が発生するからだ。

しかも自治体。

一般企業とは違い、一定の審査や手続きの中で採用されている。

もちろん自治体に採用されたから絶対に優秀、という話ではない。

しかし、

「誰にも使われていないサービス」

から、

「実際の行政現場で使われたサービス」

へ変わる。

これはスタートアップにとって猛烈に大きい。


さらに面白いのが「政府が市場を作る」という考え方

ここから少し専門的になる。

政府による調達は、

単にスタートアップを助けるだけではない。

市場そのものを作る可能性がある。

例えば新しい環境技術があるとする。

民間企業は、

「まだ高いな」

「市場が小さいな」

「本当に普及するのかな」

と様子を見る。

当然だ。

誰だって売れるか分からない商品には大量投資したくない。

そこで政府が、

「まず行政で一定量使います」

となる。

すると企業側は、

「市場があるかもしれない」

と判断できる。

開発投資が増える。

量産される。

価格が下がる。

民間にも普及する。

つまり政府が、

最初の需要を作る。

これは経済政策としてかなり重要だ。


例えば「防災スタートアップ」

日本は災害が多い。

そこで、

AIによる災害予測システム

を開発したスタートアップがあるとする。

ところが、自治体からすれば、

「実績のない会社に防災を任せて大丈夫なの?」

となる。

当然だ。

人命に関わる。

そこで、

小規模な実証実験。

自治体の防災担当者が検証。

実際のデータを使う。

システム改善。

正式導入。

という段階を踏む。

この過程で会社には、

「行政現場で検証した」という経験

が蓄積される。

その後、

「隣の市でも導入しませんか?」

と営業できる。

さらに、

「海外の自治体でも使えます」

となれば、

今度は海外市場まで見えてくる。

最初の小さな自治体案件が、

世界市場への入口

になる可能性すらある。


ただし「政府が買ってくれる=簡単に売れる」ではない

ここは絶対に勘違いしてはいけない。

行政には行政のルールがある。

調達には、

入札
契約
予算
仕様
公平性
透明性

などが絡む。

「このスタートアップ面白いから、1000万円で買おう!」

と担当者が勝手に決めるわけにはいかない。

税金を使う以上、当然だ。

だからスタートアップ側にも、

行政の調達ルールを理解する能力

が必要になる。

「技術が凄いんだから買ってください!」

では通らない。

行政が何に困っているのか。

どんな仕様が必要なのか。

予算化できるのか。

既存システムとの連携は可能か。

セキュリティ要件は満たすか。

個人情報をどう扱うか。

導入後の保守はどうするか。

こういうところまで考えなければならない。


だから政府は「スタートアップが政府調達に入りやすくする」方向へ動いている

経済産業省も、スタートアップが成長するためには政府が市場・需要を創出することが重要だとして、スタートアップからの調達を促進する取り組みを進めている。

ここが面白い。

政府は、

「補助金を出して研究してください」

だけではなく、

「あなたの商品を実際に政府が買える市場を作ろう」

という方向に踏み込んでいる。

つまり、

金を渡す政策から、売上を生む政策へ。

これはスタートアップにとって非常に大きな違いだ。


補助金と売上は、似ているようで全然違う

ここで比較してみよう。

補助金



企業

お金が入る

しかし、

顧客は増えない。


政府調達

政府

企業

商品・サービスを提供する

売上が発生する

顧客実績ができる

信用が生まれる

次の顧客へ営業できる

この差は巨大だ。

だから、

「政府が顧客になる」

というのは、スタートアップ支援の中でもかなり重要な考え方なのである。


自治体にとってもメリットがある

もちろん、スタートアップだけが得をするわけではない。

自治体側にもメリットがある。

例えば、

職員不足。

予算不足。

高齢化。

人口減少。

災害。

空き家。

交通問題。

これらを従来型の行政サービスだけで解決するのは難しくなっている。

そこで、

民間の新しい技術を使う。

AI。

ドローン。

IoT。

ロボット。

クラウド。

データ分析。

遠隔監視。

こうした技術を行政に取り込む。

つまり、

「行政だけで全部やる」

から、

「民間企業の技術を行政サービスに組み込む」

へ変わっていく。


そして、この仕組みは地方ほど面白い

人口が減っている自治体ほど、

人が足りない。

窓口業務。

インフラ管理。

高齢者支援。

防災。

ごみ収集。

道路管理。

こうした仕事を少ない職員で回さなければならない。

だからこそ、

「人間がやらなくてもいい仕事をテクノロジーにやらせる」

需要が生まれる。

ここにスタートアップが入れる。

例えば、

道路のひび割れをAIで検出する。

水道管の異常をセンサーで検知する。

ドローンでインフラを点検する。

AIで問い合わせ対応をする。

こうしたサービスは、

自治体の「人手不足」という巨大な問題そのものが顧客ニーズになる。


実は「自治体が顧客になる」は、かなり合理的

考えてみれば当たり前だ。

日本には、

47都道府県
約1,700の市区町村

がある。

それぞれが、

「防災どうする?」

「高齢者支援どうする?」

「道路どうする?」

「水道どうする?」

「職員不足どうする?」

と悩んでいる。

つまり、

全国に似た問題を抱えた顧客候補が大量に存在する。

一つの自治体で成功すれば、

「同じ問題を抱えている自治体があります」

となる。

スタートアップにとっては、

横展開しやすい市場

になる可能性がある。


ただし、ここにもブラックな現実がある

行政案件は、

売上になるまでが長い。

民間企業なら、

「これ欲しい」

契約。

で終わることもある。

行政では、

予算要求。

予算確保。

仕様策定。

調達。

契約。

導入。

と進むことがある。

だから、

「行政向けだから安泰」

なんて甘い話ではない。

むしろ営業サイクルが長く、行政特有のルールへの対応力が必要になる。

それでも政府がスタートアップ調達を重視するのは、

一度実績を作った会社にとって、その後の市場拡大が期待できる

からだ。


つまり「最初の一社」がものすごく重要

スタートアップの世界では、

最初の顧客

が本当に重要だ。

最初の顧客が、

「この会社の商品を買いました」

と言ってくれる。

それだけで、

ただのアイデアが、

「市場で使われている商品」

に変わる。

だから政府・自治体が最初の顧客になる政策は、

単なる売上支援ではない。

信用創出支援

でもある。

そして、

市場創出支援

でもある。

さらに、

製品開発支援

でもある。

実際に使われるから、商品が改善される。


「補助金をください」より「買ってください」

この違いは、かなり大きい。

補助金なら、

「あなたの会社を応援します」

という関係。

政府調達なら、

「あなたの商品に対して、税金を払って対価を支払います」

という関係。

つまり、

「あなたの会社」ではなく「あなたの商品」に価値を認める。

これは市場経済として健全な部分がある。

もちろん、公平性や費用対効果は厳しくチェックされるべきだ。

だが、

「税金で企業を助ける」

というだけではなく、

「税金で必要なサービスを買い、その結果としてスタートアップが成長する」

という構造なら、意味はかなり違ってくる。


スタートアップ政策の本当の狙いは「売上の自走」

結局、政府が目指したいのは、

補助金

政府調達

実績

民間顧客

海外顧客

売上拡大

企業成長

という流れだ。

そして最終的には、

「政府に買ってもらわなくても売れる会社」

になる。

ここがゴール。

政府が永遠に顧客でいる必要はない。

むしろ、

政府が最初の顧客になり、その実績を足場にして民間市場へ飛び出す。

これが理想的な姿だ。


「国に育ててもらう会社」ではなく「国を踏み台にして飛ぶ会社」

かなり乱暴に言えば、そういうことだ。

政府は、

資金を出す。

自治体は、

課題を提供する。

行政が、

実証の場を提供する。

政府が、

最初の顧客になる。

企業は、

商品を改善する。

そして最後には、

自分の力で市場を取る。

これがスタートアップ政策の面白いところだ。

政府が会社を永遠に養うのではない。

最初の一歩を踏み出すための「足場」を作る。


最後に

スタートアップにとって、一番怖い言葉は、

「面白いですね」

かもしれない。

技術を褒められる。

アイデアを褒められる。

プレゼンを褒められる。

SNSでバズる。

でも、

誰も買わない。

会社は、それでは生きられない。

だから本当に欲しいのは、

「すごいですね」

ではない。

「いくらですか?」

である。

そして政府・自治体がスタートアップの顧客になる政策は、まさにこの「いくらですか?」を生み出す可能性がある。

補助金は会社に金を入れる。

しかし、

顧客は会社に「市場」を与える。

この違いは大きい。

心を打たれる珠玉の一文:
企業を救うのは、拍手ではない。誰かが財布を開いて「これを買う」と言ってくれる、その一瞬だ。

そして日本政府がスタートアップ政策で狙っているのは、まさにその瞬間なのだ。

「国が会社を育てる」のではない。
「国が最初の市場になり、その会社が自力で飛び立てるようにする」。

これが、政府・自治体によるスタートアップ調達の本質なのである。



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