この物語は創作であり想作である
その日そこには誰もいなくなった
見慣れた間取りと見慣れた家具たち
窓から見える公園はいつもと変わらずそこにある
はしゃぐ子供達の声
犬の散歩をしている青年
座って紙巻きたばこを吸いながら缶コーヒーを飲む人
いつもと変わらない景色
いつもと変わらない日常
そんな何気ない日常の中で変わったことがあるとすればそれは
いつもこの窓から公園を眺めていた主がいないこと
わたしはこの家の主ではない
ただ、この家に住んでいた記憶は鮮明に残っている
この家に住んでいた主
父親の記憶とともに
主とともに過ごした家具たちは時が止まったかのように
そこにある
「おかえり」の声も聞こえない
「お腹すいた?」の問いかけもない
ただ無音の空間がそこに存在しているだけ
寂しくて目を閉じて記憶を頼りに父の声を思い出す
大丈夫
まだ声も話す時の口癖も鮮明に残っている
けれど目をあけるとまたそこには誰もいない空間
頭では理解している
だけど感情は時として言うことを聞いてくれない
わたしは「また来るね」とだけ言い残し扉を閉める
足跡と滴を残して
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