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【心の糧となる作品たち】第4回 喪失を受け入れる『ムーランルージュ!ザ・ミュージカル』

親友が亡くなってから、
初めて劇場で観たミュージカル
それが『ムーラン・ルージュ!』だった。

何かを観たり聴いたりするたびに、
「教えてあげたい」「話したい」と
真っ先に思う相手がいた。
でもその人は、もうこの世界にはいなかった。
何を目にしても、
心の底からそのことを思い知らされる日々。

毎日、通勤電車の中で突然涙がこぼれ、
お風呂の中でも静かに泣いた。
笑っていても、
胸の奥ではずっと傷がうずいていた。

そんなある日、
私は『ムーラン・ルージュ!』を観に行った。

この作品を初めて観たのは2023年。
圧巻のパフォーマンスに感動しつつも、
「話の内容は少し薄いかも」と思っていた。
だから、再演が決まったときも、
正直そこまで期待していなかった。

でも、同じ作品を1年後に観たとき、
まるで世界が変わったように感じた。

主人公のクリスチャンは、
ムーラン・ルージュのスター
サティーンと恋に落ちる。
だがサティーンは結核におかされていた。
彼には病のことを伝えず、
彼の夢を支えるために
最後まで舞台に立ち続ける。
そして、クリスチャンの腕の中で息を引き取る。

その姿を見た瞬間、
私は苦しくて、寂しくて、たまらなくなった。
病室へ通っていた日々を
そのまま繰り返しているようで、
魂を抉られるような痛みに襲われた。

でもそれ以上に胸を打たれたのは、
サティーンの亡骸を抱きしめながら、
泣きながら、
それでもどこか穏やかな表情で
「あなたと出会えた世界は素晴らしい」と歌う
クリスチャンの姿だった。

心の底から、私もそう思った。

ラスト、クリスチャンは
観客に向かって語りかけるように歌う。

「どんな痛みも悲しみも
いつかは思い出になる
唇にこのメロディー
愛してる 何があろうと
命が果てる日まで」

その歌声は日によって違っていた。
穏やかな日もあれば、
絞り出すような日もあった。

それが、毎日のように泣いてしまう
自分と重なった。

あの頃の私は、
なにかを見るたび「伝えたい!」と感じては、
「もう居ないんだった」と落胆し、
傷ついていた。
毎日のようにそれを繰り返していた。

「この痛みは一生癒えない」
そう思っていたからこそ、

「どんな痛みも悲しみも 
いつかは思い出になる」

という歌詞は、私にとって確かな希望だった。

舞台の最後に語られる台詞も忘れられない。

「数日が数週間になり、
数週間が数ヶ月になった。
そしてある日、僕はまた歌を書き始めた。」

まっすぐに前を向いた、
凛としたクリスチャンの姿は、
あの時の私にとって希望そのものだった。

劇場の客席を見渡すと、
ラストシーンで涙を流している人が
少なからずいた。
きっと、私と同じように
喪失を経験した人たちなのだろう。

一緒に観ていたまだ学生の従兄弟は、
以前の私と同じように、
きらびやかな舞台の世界を
無邪気に楽しんでいた。

羨ましいと思う気持ちもある。
でも、今の私は知っている。

この痛みさえも、
きっと、私を豊かにしてくれるのだと。

喪失は、誰にでもいつか訪れる。
そのタイミングも、痛み方も、癒し方も、
人それぞれ。
そして、どんなに時間がかかっても、
それでいいのだと思えるようになった。

『ムーラン・ルージュ!』の再演を観たことで、
私はようやく気づくことができた。

出会えたことが、どれほどの奇跡だったか。
過ごした時間は、
確かに私の中に生きている。

この世界であなたと出会えたこと。
その事実が、こんなにも愛おしい。
悲しみが癒える日はまだ遠くても、
この痛みごと抱いて、
私は生きていこうと思えた。

たとえ今は涙が止まらなくても、
いつかきっと、笑って思い出せる日が来るから。

そんな気づきをくれたこの作品に
感謝の意を表したい。

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