焔の残光 2.台風の目
私は楓を意識するようになった。
そうでなくても、スクールバスでは毎日乗り合わせる。自然と会話することが増えていった。
楓はいつも本音でぶつかってくる。そのことがとても新鮮だった。
毎朝顔を合わせるうちに、互いの機嫌もわかるようになっていく。
家族とケンカしてきた日はすぐにわかる。
そんな日は口がへの字に曲がっていた。そして、惨状をぽつぽつとこぼし始めるのだ。
お金をちょろまかしたことがばれて目覚まし時計がぶっとんできただの、生まれたばかりの弟のことが気に食わなくて仕方がないだの。
ふたを開けてみれば自業自得だったり、大したことはなかったりするのだけれど、当事者にしてみれば一大事だ。
そんな愚痴を聞くことで、今まで構えていた自分が馬鹿らしくなっていった。
そして——。
あるとき、選択を突きつけられる出来事が起こった。
いつもお昼ごはんを食べているメンバーで遊びに行くことになった。
そこに楓も加わることになったとき、反発が起こった。
その瞬間、はっとした。
楓と話すのは、私にとってはもう当たり前になっていた。
だけど、それは私の中だけの話だった。
楓は"浮いた存在" だった。
そのことを、私は忘れかけていた。
スクールカーストなんてクソ喰らえ。でも、それを一番気にしているのは私なのだろう。
人にはそれぞれの価値観がある。ほとんどの人はステータスを気にする。それも分かりやすい基準で。見た目、勉強、運動、言動。みんなクラスのバランスを気にして、それぞれキャラを演じて、それに応じたグループにわかれていく。学生の頃は特にそれが顕著だ。私はいつも無害だとアピールして真ん中にいられるように誰の肩も持たず、つかず離れずいることに何よりも力を入れてきた。それは今でも変わらない。でも、この時に突きつけられたのだ。「どちらの道を選ぶのか」
楓と話すようになってから、部活が同じ子から何度か言われてもいた。「あの子には関わらない方がいい」と。なぜ他人にそんなことを言われなければならないのか、ふつふつとした怒りが湧いていた。確かに楓は変だ。でも、それだけで拒絶するのはなんだか違う気がした。
クラス全員が見ていた。楓のことを言っていたはずなのに、いつの間にか、私が責められていた。
2回遊べばいいのでは?と提案したけど
「無駄なことはしたくない。」その一言が、教室の空気を決定づけた。結局、遊びの話は消えた。もう一緒にはいられない。そう悟った。
私はそのグループを抜けた。ハブられたことの居心地の悪さと理不尽さに心底呆れながら過ごす日々が続いた。それでも、楓とくだらないことを話す時間は居心地がよかった。相手の出方を伺って、地雷を踏まないように気を張る必要がなかった。それは楓がいつも本音で話してくるからだ。周りにどう思われようと、自分のしたいことをする。言いたいことを言う。楓にはいつも一本の軸があって、流されることがなかった。
楓のそばは台風の目のように穏やかだった。
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