見出し画像

見つめる私を、彼らも見ている

一人で動物園に行った。
田舎の市営動物園。入場料は大人300円。
私が子供の頃からある、古びた動物園だ。

動物はあまり好きじゃない。
動物園に行ってみたいけれど、動物はこわいから、毎回、檻から少し離れた場所で眺める。


スタートはタヌキから始まる。
暗く寂れた檻の中に、数匹丸まっている。タヌキの臭いがする。
ハクビシンやキツネなど、近くの山や畑で見る獣が、並んだ檻の中に展示されている。

キツネは、極端に痩せた脚で、グルグルと室内を回っていた。お尻の部分の毛が抜けている。
キツネはずっと私を見ている。
他にお客さんはいない。
私は病んだ様子のキツネを見ていたけれど、なんだかキツネに見られているような気がして、居心地が悪くなった。

平日昼間の動物園はとても静かだ。お客さんが、ほとんどいない。
寝ている動物も多かったが、起きていたテナガザルやオナガザルは、うつろな目で、私を見ている。
私はこわくて、檻から少し離れた場所に立った。


動物園のそこかしこに、まだ昭和の匂いがする部分がある。
きれいに改装された場所と、以前から変わらない場所とのコントラストに、戸惑う。
遠くから、併設された遊園地の音楽が聞こえる。
フラミンゴの檻から、鳴き声なのか、なにかが軋む音なのか、ずっと音がしている。

なんだか夢の中にいるような感覚になって、ちょっとこわくなった。
子供の頃の景色が出てくる、楽しくはない夢。

新設されたプレーリードッグゾーンで写真を撮って、家族LINEにあげた。
一匹がじっと、私の方を見ていたのだ。


しばらくして、息子からメッセージが入った。


「プレーリードッグが、困惑しているやんけ」


改めて写真を見返してみたら、私の方を見つめていると思ったプレーリードッグは、たしかに困惑しているような顔をしていた。

え?

もしかして、みんな、おばさんが一人で動物園にきていたのに、困惑してただけ…?
私、動物たちの視線に、「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている」とか思っていたのに。

え?


ヤケクソ気味に写真をいっぱい送ったら、うるさいと、家族に怒られた。


いいなと思ったら応援しよう!