AI Leaders Connectというイベントでお話しました
先日、AIの社内推進担当者が集まる「AI Leaders Connect」というイベントでお話させてもらいました。
業種も立場も異なるメンバー同士が集まる場は新鮮で、各社の取り組み(テレビ朝日さん、SALES ROBOTICSさん、富士通さん)はどれも参考になるものばかりでした。
参考になったことメモと、僕が話した内容、考えたことをメモがてら書いておきたいと思います。
完全に余談ですが、この会場がコクヨさんのTHE CAMPUSという東京品川オフィス。パブリックスペースやお店、今回のようなイベントを行えるスペースもある。こんなオフィスだったら毎日出勤したい。
学び
■ 内製LLMツールのハードルをとにかく下げる&失敗しにくい工夫をする
登壇者のお一方は、社内で独自に開発したLLMツールのお話。
まだプロンプトに慣れていない社員が多いという状態に対して、プロンプト文の例をボタン操作で呼び出せる仕組みを取り入れ、使用の心理的ハードルを下げる工夫をされていました。
具体的には「要約してください」「例を挙げて説明して」といった定型フォーマットを即座にプロンプト欄に反映できるUIを構築し、使う社員の成功体験を促進しているとのこと。
また、表示する回答は、「わかりやすく短文で」、「誤りが入る余地を最小限におさえる」という観点のもとで設計を工夫しているよう。社内情報が多いと参照情報の揺らぎや、文脈に依存して正解が変わりうることを防ぐ目的です。なるほど。
表示文章が長かったりある程度網羅的に説明されるような形だと、誤った情報が表示される可能性が高くなるので、なるべくそういった可能性を低くする工夫です。
社内のナレッジベースの構築や整理が肝だと思うのと同時に、フロント側でもできる工夫として参考になりました。
■ セキュリティやリーガル、倫理へのまなざし(地味だけど、ここが重要)
別の登壇者の方の発表では、コンプライアンス(セキュリティ、リーガル、倫理)や、既存の他社・自社製品との整合性、投資対効果を考慮する視点のお話を伺いました。
データの取り扱いルールやアクセス権限設定、内部監査への報告フローを明確化しつつ、現在導入済みのSaaSや社内運用フローへの影響や関係性を鑑みた導入検討などは、極めて実務において重要だと思います。
また、法務部門や情報システム部門、セキュリティ部門との連携を早期に開始し、「安心して試せる環境」を構築することが鍵だと感じました。
■ 「目の前の顧客に向き合う時間を増やす」という目的
別の登壇者の発表で「やっぱりそうですよね」と思ったのが、生成AI導入の目的として掲げられていたのが「目の前の顧客に向き合う時間を増やす」という言葉。
生成AIに限らず、生産性向上系のツールやシステム等の導入の背景でほぼ語られる文脈だと思います。AIに定型的な情報検索やチャットボット応答を任せることで、社員が提案資料作成やメール対応の時間を短縮し、本質的な顧客対応に集中できる、みたいな内容です。
ただ、やはりここは陳腐化しない王道の目的。
そういった目的を灯台の光のように持ち続けることが重要だと思います。
そしてこれは、BtoC/BtoB関わらず同じことが言えると思うので、今後もこの目的を念頭にしつつ社内の推進や研究開発を考えていきたいです。
自分が話したこと
僕からは、そもそも参加者にあまり馴染みがなさそうな「障害とは何か」という話題、AI×障害福祉の可能性、取り組み事例(自社、他社)を話しました。


■ 障害とは何か
いつも、よく使う車いすユーザーの事例を用いて「障害の医学モデル」と「障害の社会モデル」の話をしました。

画像でも示している通り、「Impairment(機能障害)」と「Disability(障害による社会的不利)」は異なる概念です。
従来のアプローチでは、個人のImpairmentを「治す」「克服させる」ことに焦点が当てられてきました。
しかし、より重要なのは社会環境を変え、Disabilityを減らすことだと考えています。
■ AI×障害福祉の可能性
そのうえで、「なぜAI×障害福祉なのか」という視点。
それは・・・、
Impairmentを変える・克服させるのではなく、
Disabilityが起きにくくするための(生成)AIを志向する
(生成)AIは、社会〈環境因子〉の可塑性を高めて、
個人に合わせて形を変えさせてくれる
という考えがあるからです。
(生成)AIは社会環境の「柔軟性」を高める強力なツールとなりえます。例えば、視覚に障害がある方には音声で情報を伝え、聴覚に障害がある方には視覚的に情報を提示するといった変換を、個人のニーズに合わせて瞬時に行えます。
「一人ひとりに合わせた環境調整」には、場所や組織によってはコストが掛かります。コストがかかると、なかなかその環境調整は受け入れられにくく、実現のハードルが高くなってしまいます。
しかし、生成AIならばそれを効率的に効果的に実現できる可能性があります。つまり、個人が社会に合わせるのではなく、社会環境が個人に合わせて変化する世界が可能になるのです。
この考え方は「社会モデル」と呼ばれる障害観に基づいています。
障害は個人の問題ではなく、多様な特性を持つ人々を受け入れられない社会の側の問題だという視点です。(注:ここでいう「受け入れる」というのは心情や態度で「受け入れる」という話ではなく、もうちょっと物理的なイメージで「対応できる」みたいな話です)
生成AIはこの社会の側の可塑性(形を変える柔軟さ)を高め、多様な特性を持つ全ての人が参加できる包摂的な社会の実現を後押しすると考えています。
■ 予測:支援者の2つの役割・AIの2つの役割
そういったことも含めて今後の予測(という名の、榎本個人の妄想)もプレゼンの中では触れました。
今後、介護・福祉・医療・教育などの対人支援職は、その本質的価値を保ちながらも大きな構造転換を迎えるでしょう。AI技術の発展により、支援職に従事する人々は「人間にしかできない業務」に集中できるようになります(なってほしい)。この変化は避けられないものであり、同時に必要不可欠なものでもあります。
人間の支援者は主に二つの重要な役割を担うことになるでしょう。
「伴走者」として、「この人が応援してくれるからがんばろう」と思わせる存在になること。
「共同意思決定者」として、人生の選択に寄り添い、共に考える役割です。
一方、利用者側から見れば、AIは二つの重要な機能を果たすようになります。
「可塑剤としてのAI」は環境を柔軟に変化させ、生活の不便さや障壁を取り除きます。
「社会資源としてのAI」は新たな支援ツールとなり、今までアクセスできなかった機会や情報への扉を開きます。
これらの変化に伴い、AIを活用した意思決定支援の方法論や、AIが関わる判断における責任の所在についての議論も本格化していくでしょう。
ちなみに、「社会資源としてAI」という言葉は、株式会社パパゲーノの田中康雅さんの書籍からの引用です。この本はこの話題に関心のある人、必読です。
この話題はまた別のnote記事で詳しく深めていきたいなと思っています。
■ 自社の取り組み
この記事では詳しくは割愛しますが、今取り組んでいる取り組みについてさわり程度お話ししました。
■ 他社事例
他社事例として、Googleの生成AI Geminiを予測変換機能として用いて、コミュニケーションの支援をする実験的な取り組みである「Project VOICE」と、視覚障害者支援アプリ「Be My Eyes」の活用シーンを動画で紹介しました。
Project VOICE
Be My Eyes
今後のアクション
いろいろと持ち帰れる学びや、気づき、内省がありました。
ガイドラインの策定・運用・ブラッシュアップ、社内ナレッジ共有会やコミュニケーションの場の設計、愚直にいろいろなPoCの企画と調整、スピーディな実行など、全力で進めていきたいと思います。
これらのアクションを通じて、「AI×障害福祉」の可能性を具体的な成果へとつなげていきたいと思います。

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