24時間稼働システムは、人間には早すぎたのかもしれない
効率が良い斧と悪い斧、どちらを選びますか。
そりゃあ良い斧のほうがいい?
あなたは正直者ですね。両方あげます。
そんな女神はいないけれど、今日も私の部屋には段ボールが溜まっている。
私が住むマンションには、エントランスに宅配ロッカーがある。なんて便利。なんてありがたい。これがあるからこのマンションを選んだと言っても過言ではない。荷物は24時間いつでも受け取れるし、いや、私は24時間いつでも受け取れるっちゃ受け取れるんだけど……ほら、WEB会議とかは……ない会社だけども……(ないんだ……)
ところで、このマンションにはもう一ついいところがある。24時間ごみ出しが可能なのだ。なんて便利。なんてありがたい。私がこのマンションを選んだ理由の、堂々たるツートップである。どっちがきのこでどっちがたけのこ……やめよう、死人が出る。
このマンションにおいてはルールが比較的穏やかで、自治体の分別ルールさえ守れば本当に24時間いつでもごみを出していい。段ボールのような資源ごみも例外ではない。大丈夫か、私のようなズボラ人間ばかり居住者として集まってきてやしないかとたまに心配になるが、廊下もごみ捨て場もずっと綺麗なところを見るに、最低限のモラルは皆持ち合わせているのだろう。私のようなズボラ×ビビりな人間も含めて。
さて、ズボラといえばネット通販である。だって日焼け止めすら塗りたくないんだもの。落とす時の肌負担を考えたら在宅仕事の部屋に遮光カーテンを付ける選択に至ったわけで、そこに荷物受け取り時の日光は存在していない。ズボラの計算は必ずどこか抜けている。
さらに厄介なことに、私は綺麗好きだ。綺麗好きというよりは、片付いている状態が好きなのだ。物が散らかっている時に視界に勝手に入ってくる情報をこれまた脳が勝手に咀嚼して暴走して運転ストップした時のやるせなさを回避できるのなら、私は率先して部屋を片付けてごみを捨てる。そう、面倒くさい事態になるぐらいなら更に面倒くさいルートを通ってでもそれを回避したい性分ということである。石橋なら叩き壊して谷底を安全に歩きたい。最後に崖を登らなければならないことはやはり忘れている。
通販で出た段ボールは部屋の隅に畳んで、資源ごみを出す時まで保管している。──問題は、「次にいつ資源ごみを出すか」である。
資源ごみの自治体回収日は、申し訳ないが覚えていない。24時間ごみ出しシステムに慣れきってしまったこの脳は、どちらかといえばごみ出しに隣人と鉢合わせない時間帯だけを記憶している。甘やかされたもんだ。だがそのシステムがあるからこそ、逆にいつでも出すことができる。ただ、どうせ出すなら効率よく出したいものだ。そう、例えば「次に宅配ロッカーへ荷物が届いた時」なんかに。
日光をなるべく避けて廊下の日陰を歩くぐらいなら、おとなしく日焼け止めを塗る……方向へは私は育たなかった。花は自分がより生きやすい方へ向かって伸びる。夜に宅配ロッカーへ行けばいいのだ。その時間なら仕事も終わり、複数荷物があっても大体は届いている。
段ボールを資源ごみとして出し、その帰り道に荷物を宅配ロッカーから出す。なんて美しい動線。手に持つモノにも無駄がない。
そして、開封された荷物の梱包資材は段ボールとなる。
おかしい。さっき部屋に溜まっていた段ボールをごみ捨て場に出してきたばかりなのに、もう次の段ボールが綺麗に並んでいる。スペースが空いていたのはたったの数分、前回の段ボールを資源ごみとして出し、宅配ロッカーから荷物を受け取りに行っていた間だけだ。その間、なんなら私は部屋にいない。段ボールのないすっきりした部屋を堪能できたのは、数分どころか数十秒かもしれない。
なんてことだ。私の畳む段ボールなんて、ペプシ生600mlだのミネラルむぎ茶だの、あとはヨドバシ、Amazon、楽天。畳んで隙間に押し込んだとて、自己主張の激しいカラフルなロゴ情報が否応なしに視界に入ってくる。ノイズのない状態で過ごしたい私にとって致命的だ。そもそも、全部幅も高さも違う段ボールというのは、まとまっていたところで情報量が多い。美しくない。だから、すぐにまとめて資源ごみとして出してしまうのが一番いい。とはいえ、次の荷物が来たらまた新しい段ボールが出て、何度ごみ捨て場と往復するのか、という話になってしまう。そこまでの潔癖症ではないし、そこまでの体力もない。なれば必然、効率で勝負するしかない。
だから、段ボールがある程度溜まるまでは少し我慢して、持って行けるギリギリの量になった日の夜、宅配ロッカーへ行くついでにごみ捨て場へ寄る。完璧だ。私は少しの面倒を避けるために大きな面倒を背負うことがままあるが、部屋を綺麗に保つという大きなミッションの前にはこれぐらい効率を求めたっていいだろう。
段ボールをまとめる。ごみ捨て場へ運ぶ。宅配ロッカーから荷物を取り出し、持ち帰る。梱包を解き、荷物を取り出す。
そして、今日も私の片付いた部屋には段ボールだけが溜まっている。
泊エオ(TomariEo)です。日常のささいなバグを、イラストと2,000〜4,000字程度の読み物として言葉にしています。
次回はたぶん5月10日、日曜の夜あたりに更新します。
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