【ウクライナ銘柄 KYIV】2025年通期決算発表!通信インフラから「命のプラットフォーム」へ。数字が証明するキーウスターの真価と2026年への展望
ウクライナ最大のデジタルオペレーターであるキーウスター(Kyivstar)。戦時下という極限の環境において、同社がいかにしてインフラを死守し、さらに力強い成長を遂げているのか。先日発表された2025年第4四半期および通期の決算プレゼンテーション資料を紐解くと、そこには市場の期待を凌駕する驚異的な「稼ぐ力」と、未来を見据えた明確な戦略が記されていました。
2026/3/13 通期決算リリース
https://investors.kyivstar.ua/static-files/bdb65a21-80be-4fd3-a483-9fcfdfe93473
本記事では、個人投資家が注目すべき売上・利益・ガイダンスの数値から、爆発的に成長するデジタル経済圏の全貌まで、キーウスターが描く「命のプラットフォーム」への進化の軌跡を解説します。
第1章:市場の期待を打ち破る。数字が語る圧倒的な「稼ぐ力」
投資家が最も重視する3つの指標「売上」「EPS(1株当たり利益)」「ガイダンス」。今回の決算は、本業の力強さをこれでもかと見せつける内容でした。

【売上の鮮やかな成長】
2025年通期の総収益は前年比25.9%増の11億5700万ドルに達しました。第4四半期単体でも前年同期比28.4%増の3億2100万ドルを記録し、事前の市場予想を力強く上回る成長スピードを維持しています。
【高い利益率とEPS】
さらに驚くべきは、本業の儲けを示す「EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)」です。2025年通期のEBITDAは前年比25.8%増の6億4800万ドルとなりました。第4四半期単体でも1億7200万ドル(前年同期比21.7%増)を稼ぎ出しています。戦時下におけるインフラ維持には莫大なコストがかかるはずですが、同社は極めて優秀なコスト管理により高い利益水準をキープしています。
その結果、上場関連の一過性費用を除いた「通期の調整後EPS」は1.32ドルという堅調な数字に着地しました。第4四半期単体のEPSも0.37ドル(調整後0.39ドル)を記録しており、確かな利益創出力が証明されています。
第2章:通信会社からの完全なる脱皮。爆発する「デジタル経済圏」
力強い業績を牽引しているのが、デジタル領域の凄まじい躍進です。第4四半期のデジタル収益は前年同期比で実に619%(約6.2倍)も急増し、5000万ドルに達しました。これにより、デジタル領域は総収益の15.7%を占めるまでに急拡大しています。

この成長を牽引する具体的なサービス群を見ると、彼らが「ウクライナ国民の生活インフラ」を次々と自社の経済圏に組み込んでいることが分かります。
配車・デリバリーアプリ「Uklon」:第4四半期だけで3370万ドルの収益と、920万ドルのEBITDAを創出。
デジタルヘルスケア「Helsi」:月間アクティブユーザー(MAU)250万人を獲得。
エンタメ配信「Kyivstar TV」:こちらもMAU250万人を抱える巨大メディアへ成長。
もはや単に電波を提供する会社ではなく、通信と生活サービスが溶け合った「巨大なプラットフォーム企業」へと変貌を遂げているのです。
第3章:「攻め」のM&Aと「守り」のインフラ投資がもたらす未来
盤石な本業から生み出されたキャッシュは、未来への投資へ惜しみなく注がれています。
【医療×通信のシナジー:Tabletki.uaの買収】
最も注目すべきは、ウクライナ最大のオンライン薬局・ヘルスケア市場「Tabletki.ua」を1億6000万ドルで買収したことです。この買収はEV/EBITDA倍率で約7.0倍という魅力的なバリュエーションで実行されました。通信(Kyivstar)、医療予約(Helsi)、配送(Uklon)、そして薬の手配(Tabletki)がひとつのエコシステムとして統合されることで、強力な相乗効果が期待されています。

【途切れないインフラへの執念】
同時に、インフラ防衛という「守り」の投資も抜かりありません。エネルギー供給リスクに備え、12.9MWの容量を持つ太陽光発電所(SUNVIN 11)を買収。さらに、Starlinkの「Direct to Cell(スマートフォンとの直接通信)」サービスを推進し、すでに約500万人の顧客が衛星通信を利用しています。地上と宇宙、そして自前のエネルギーで、決して途切れない通信網を構築しているのです。
第4章:個人投資家目線でのバリュエーションと2026年への視界
これほどの逆境と成長性を併せ持ちながら、現在のキーウスターの企業価値評価(バリュエーション)はどうなっているのでしょうか。
プレゼンテーション資料によると、同社のEV/EBITDA倍率(過去12ヶ月実績)は「4.3倍」にとどまっています。新興国の成長企業、しかもこれだけ高収益なデジタルプラットフォームを抱える企業としては、非常に割安感のある水準と言えるでしょう。現在、株式の83.6%を親会社のVEONが保有し、15.6%が市場で取引(パブリック・フロート)されています。

経営陣が提示した2026年のガイダンスも強気です。米ドルベースで「収益を8%から11%成長」「EBITDAを5%から8%成長」させるという、明確で自信に満ちた目標を掲げています。同時に売上高の23%から26%を設備投資に回し、成長のアクセルを踏み続ける計画です。

おわりに:国家のレジリエンスと共に歩む投資
破壊されても、何度でも立ち上がり、さらに強く進化する。キーウスターの2025年決算は、ひとつの企業が国家の危機においてどれほどの役割を果たせるかを示すドキュメンタリーのようです。
高収益な通信事業でキャッシュを生み出し、成長著しいデジタル領域で未来を創る。米国(Nasdaq)に上場するキーウスターは、ウクライナの未来と急成長するテクノロジーセクターへ直接投資できる唯一無二の存在です。彼らが創り出す「希望の未来」を、一人の投資家としてこれからも見守っていきたいと強く感じさせる素晴らしい決算でした。

