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認知症と一人暮らし——地域包括支援センターから見えたもの

「一人で暮らす認知症の方を、どう支えるか」——地域包括支援センターに寄せられる相談の多くは、この問いに集約されます。88歳、一人暮らしの女性を支える日々の中で見えてきたのは、医療や介護の枠を超えた「生き方の選択」の体験です。


「ここが私の家」という思い

女性は88歳。子どもはおらず、夫もすでに他界。市内にはいとこの家族が暮らしていますが、頻繁に行き来するほどの関係ではありません。それでも彼女は、「ここが自分の家だから」と強い意思を持って暮らし続けています。

持ち家で、遺族年金などの収入もあり、生活に大きな不安はありません。認知症の診断を受けてはいるものの、「嫌なことは嫌」「こうしてほしい」と自分の気持ちを伝える力も残っています。その姿は、支援する私たちに「本人の声をどう守るか」という課題を突きつけます。

しかし数年前から夜間の外出が増え、金銭管理も難しくなってきました。心配したいとこ家族が相談に訪れ、社会福祉協議会が運営する地域包括支援センターが関わり始めたのです。金銭面のサポートを社会福祉協議会が担い、生活全体の見守りが動き出しました。

揺れ動く支援チーム

毎年夏になると食欲が落ち、体調を崩す彼女。今年も体調が急変し、在宅医に緊急連絡が入りました。そこからケアマネジャー、訪問看護師、訪問介護士などが新たに関わり始め、支援チームが少しずつ整っていきます。

とはいえ、現場は理想どおりには進みません。誰が窓口になるのか、どこまで関わるのか、役割分担はまだ曖昧です。支援者同士も手探りで、迷いながら動いているのが実情です。ときには情報共有が追いつかず、支援の方向性にズレが生じることもあります。

それでも彼女と関わる中で見えてきたのは、小さなやりとりの積み重ねこそが信頼につながるということ。食事の好みを尋ねること、室温をどう感じているかを確認すること、ささいに見えるやりとりの一つひとつが、彼女に「自分を理解してもらえている」という感覚を生みます。そこから「治療や介護について話し合える関係」へと近づいていけるのです。

「生ききる場所」を共につくる

現在の彼女は、自宅の中でベッドに座って食事をとり、ポータブルトイレを使いながら暮らしています。以前のように外出することはなくなりましたが、それでも「自分の家で生きたい」という願いは揺らいでいません。

問題は、体が徐々に弱っていくこれからの時間をどう支えるかです。最期までこの家で過ごせるのか、それともどこかで病院や施設に移る必要が出てくるのか。どの選択肢にも正解はなく、答えを決めるのは本人の価値観です。

地域包括支援センターの役割は、彼女の声を拾い、つなぎ、形にしていくこと。いとこ家族や在宅医、ケアマネジャー、介護職、訪問看護師など多様なメンバーと協力しながら、「彼女本人が生ききれる環境」を少しずつ整えていきたいと考えています。

認知症と一人暮らし。その二つが重なると、利用者本人の願いをどう守るかが大きな問いになります。支援する側の連携と、利用者本人の声を丁寧にすくい上げるまなざし。その積み重ねこそが、地域に生きる力を与えてくれるのだと思います。地域包括支援センターも、その一員として共に考え、歩み続けたいと思っています。

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