見出し画像

ボーイフレンド💛~友情から恋へ発展していく物語~(第29話)

(第29話)

第4章 ~告白~ 


1993年4月。

二週間の研修期間が終わり、漸く配属先が決まった。私の配属先は、産婦人科になった。
新人看護婦として、初めてのお仕事だった。
その日の仕事が終わり、帰宅しようと外へ出ると、リョウちゃんが私を待っていた。

「お疲れ!」
「リョウちゃん!何で?」

私は、まさか迎えに来ているなんて知らなかったので、驚いた。
すると、リョウちゃんが、私の質問に返答した。

「ユウコがさー、『なるべくサオリを1人にしないで』って。『帰りも、一緒に帰ってやって』ってオレに言ったんだ」

そうか。ユウコが、リョウちゃんに連絡してくれたんだ。

「オレも、忙しいんだけどなぁ」
リョウちゃんは、そう言った後、私に「何か、あった?」って、訊いて来た。

あの日あったことは、勿論、リョウちゃんに言う訳にはいかなかった。
ユウコも、約束通り、リョウちゃんには言わないでいてくれたらしい。

数日前、ユウコが「大丈夫よ。サオリ。アタシが何とかするから」って言ったのは、その事だったんだね。
リョウちゃんは忙しいのに、態々、私の為に迎えに来てくれたんだ。

「ごめんね。ありがとう」
「あぁ。いいよ。ちょうど那覇ナハで乗り換えだったから」

私は、リョウちゃんと一緒にバス乗り場まで歩いた。
そして、高校生の時みたいに、リョウちゃんは、手を繋ごうとしたんだけど、私は、リョウちゃんの手を振り払ってしまった。

っ!」

リョウちゃんは、私の反応にキョトンとしていた。

男の人の「手」が怖い‥‥!

そう。私は、この時、「男性恐怖症」になっていた。
リョウちゃんは、何も言わなかったけど、もう隠しておくのは限界だった。

その日を境に、リョウちゃんは毎日私の送り迎えをするようになっていた。
そんなある日、一緒にバスの座席に座っていたら、彼が突然言った。

「最近、着けてないよね?」
「えっ?」

私は、しばらく忘れていたのに、彼は気付いていたみたい。
そう。高校生の時に、プレゼントしてくれたあのペンダントだ。
あの頃は、嬉しかったのに、今は、嫌な記憶しか蘇ってこない。

くしちゃった・・・」
私は、咄嗟にウソをついてしまう。

リョウちゃんは、「何だ、そんなことか~」って言うと、「また、新しいの買ってやるよ」って言ったきり、これ以上は何も聞かなかった。
そして、ホッとしたように、ポツリと言ったんだ。

「着けてねぇし、手も繋ごうとしねぇからオレのこと、嫌いになったのかと思った」

リョウちゃんは、口では言わなかったけど、ずっと気にしてくれてたんだね。

もうこれ以上、隠し通せないのかも。
そう思ってた矢先、私の嫌な予感は的中した。

一週間後、私の所にユウコから電話が掛かってきた。

「サオリ? どうしよう。・・アタシ、リョウくんに言っちゃった」

その後、すぐにユウコと一緒に、トオルくんの家に駆けつけたんだけど、リョウちゃんは既に此処からいなくなってて、トオルくんが部屋に仰向けになって倒れていた。

「トオル!」

ユウコが、慌ててトオルくんの側へ駆け寄る。
トオルくんは、ゆっくりと起き上がると、自分の頬を摩《さす》った。

ってぇ~。アイツ、思いっきり殴りやがった」
「トオル!リョウくんに殴られたんでしょ?」
「あぁ。アイツ、いきなり部屋に入って来て、『返せよ』って言うから、オレが『何のことだ』って言ったら、部屋中、物色し始めたんだ」

トオルくんは、その時の状況をユウコに話し始めた。

『あ~それ。サオリちゃんが身に着けてたモノ‥‥』
『何で、お前の家にある?(怒』
『知らねえよ』

オレは アイツに、ウソをついた。

『お前、サオリに何した?』
『何って。別に。ただ、話をしてただけだよ』
『部屋で、二人っきりでか?』

リョウちゃんは、きっと、私の「ペンダント」を探しに行ったんだ。
それで、2人は言い争って‥‥‥。
リョウちゃんも、きっと怪我を負っているはずだ。
私は、居ても立ってもおられず、リョウちゃんの家に走っていた。

リョウちゃんの家に行ったら、モノが散乱してて、真面に見れる状態じゃなかった。リョウちゃんは、相当・・・怒ってた。
何度も、何度も、テーブルに自分の拳を叩きつけて、悔しそうに「オレだけ?」って、やり場のない怒りをぶつけていた。

私は「リョウちゃん・・・」って声を掛けたけど、それ以上は掛ける言葉が見つからなかった。

「オレだけが知らなかったのかよ?」
リョウちゃんは、独り言のように呟いていた。

ごめん・・・。
リョウちゃん‥‥。

私は、リョウちゃんの側へ座り込んで、怪我の手当てをしてあげた。
やがて、落ち着いてくると、リョウちゃんが言った。

「アイツが、やたらとお前のことばかり訊いてくるから、おかしいと思ったんだ。それなのに、オレは・・・。ベラベラと馬鹿みたいに‥‥」
「ごめ・・・ リョウちゃん‥‥」

サオリが、言わなかったからだね‥‥‥。
心の中でそう思った私は、泣きそうになった。

「何で、独りでアイツの家に行った?」
「うっうっ、だっ、だって・・・ リョウちゃんだったら、家にひとりで行っても、大丈夫でしょ?トオルくんも、リョウちゃんの友達だから、だいじょぶ、だと思ったの」

私は、泣きじゃくりながら喋っていた。

「オレはいいよ。けど、他の男の家に独りで行っちゃダメだ!」
「ごめんなさい、ごめんなさい。ごめ・・・」

その時、リョウちゃんの手が私の方へ伸びてきた。
私は、殴られると思い、反射的に目を瞑った。でも、リョウちゃんは‥‥。
ポンポンと、私の頭を軽く撫でて、「マモってやれなくて、ごめん!」って。
リョウちゃんの手は、優しくて、暖かくて、安心できる手だった。

そういう事情を知ってからなのか、リョウちゃんは、自分が「休日」の日でも、送り迎えをするようになっていた。

最初から読む☟

#創作大賞2024 #恋愛小説部門

いいなと思ったら応援しよう!