ボーイフレンド💛~友情から恋へ発展していく物語~(第25話)
(第25話)
第4章 ~告白~
1993年1月。
「看護学生」である生活もあと残り僅か。
冬休み期間も実習が入ってて、忙しい毎日を過ごしていた。
来月の中旬には「国家試験」があったので、今が一番大変な時期だった。
そういえば、トオルくん‥‥。
最近、会わないな。
どうしたんだろう?
もう、冬休みは終わってるはずだけど。
いつもなら、そんなの全然気にならないはずなのに。
その日は何故か、妙な胸騒ぎがした。
トオルくんには、いろいろ助けてもらったし。
ちょっとだけ。
様子を見に行こうかな。
トオルくん家の部屋のブザーを押して、出なかったらすぐ帰ろう。
そう心に決めて、トオルくんが今、住んでいるマンションへ向かった。
そっとブザーを鳴らしてみた。
反応がなかった。
いない?
“留守"なんだ。
そう思って帰ろうとしたちょうどその時。
玄関のドアが開いた。
中からトオルくんが出て来たけど、いつもの元気がない。
「ごめん。風邪で寝てた」
「え?風邪?」
そっとトオルくんの額に自分のおでこを当ててみる。
予想以上に熱かった。
「そんなことしたら風邪、うつっちゃうよ」
「大丈夫よ。ちゃんと予防はしてるから」
風邪予防の対策は、看護実習で習ってた。
「何か 買って来ようか? 私に出来ることがあったら何でも言って」
って言った直後。
トオルくんの身体が急にふらついたかと思ったら、突然ギュッと抱き締められた。
「トオルくん どうしたの? 何処か痛いの?」
「あ、ごめん。風邪の熱のせいでつい・・・」
トオルくんは、慌てて身体を離した。
「何かやってほしいことある?」
「えっ?」
トオルくんが 一瞬、私の顔を見る。
あれ? 何か 変なこと言っちゃったかな?
(トオルの心の中)
そりゃ~ 「やってほしいこと」って言えば、添い寝して欲しいけど。
でも、そんなことしたら、サオリちゃんにオレの風邪がうつっちゃうかもしれないしなぁ。
来月は、試験もあるって言うし。
もし、受けられなくなったら可哀想だよなぁ。
まさか、そんなこと思われていたとは露知らず‥‥‥。
強引に部屋から追いだされた。
**********
一週間後、看護学校からの帰り道。
またトオルくんと一緒に帰るようになった。
あの後、追い出されたような変な空気がずっと残ってたけど、トオルくんは、いつもと変わらない笑顔で話しかけてきた。
「・・・もう、大丈夫なの?」
「うん!サオリちゃんが看病してくれたお陰で、ほらっ!この通り。ピンピンだよ」
トオルくんは、元気になったのをアピールするかのように、握り拳を作り親指を立てた。
「良かった!ずっと気になってたの」
「オレのこと、ずっと考えてたの?嬉しいこと言ってくれるね。ありがとう」
って、実際は何もしてないけど、トオルくんがお礼を言った。
「そうだ!来月の国家試験が終わったら、看病してくれたお礼に、”カシスオレンジ”ってのを飲ませてあげるよ」
そして、「国家試験」当日の日になった。
試験が漸く終わって校門へ向かっていると、一台の真っ赤なスポーツカーが停まっていた。
「待ちきれなくて迎えに来た」
香水の匂いをプンプンさせて、いつもよりも良い格好をしたトオルくんが、1輪のバラを持って立っていた。
容姿端麗で身長が高い彼はそれだけでも目立っていた。
トオルくんは、助手席のドアを開けると、まるで王子様のように振舞った。
「お腹空いてない? いい店見つけたから」
トオルくんはそう言って、海辺のお洒落なレストランへ連れて行った。
その後、トオルくんは約束通り、カシスオレンジを飲ませてくれた。
初めて口に含んだお酒は美味しかった。
今日一日楽しかったぁ〜。
トオルくんにお礼を言おうとした時。
「もうちょっとだけいいかな?見せたいものがあるんだ」
見せたいもの?
って、何だろ?
ほろ酔い気分のまま、トオルくんに附いていった。
ここは、トオルくんの家?
大丈夫?
・・・だよね?
入り口で戸惑っていると、トオルくんが。
「どうしたの?入らないの?」って、私に言った。
中へ入ると、トオルくんは冷蔵庫から冷たい飲み物を出してくれた。
「ごめん。こんなものしかないけど」
テーブルに置かれた飲み物を飲み干すと。
「“カシスオレンジ“は、美味しかった?」って、トオルくんが訊いて来た。
「うん!美味しかったぁ。ありがとう」
私がお礼を言うと、トオルくんは満足そうに微笑んだ。
でも、一向にトオルくんが口に出した「見せたいもの」の話がでてこない。
「・・・あの、トオルくん?『見せたいもの』って、何?」
私は、思い切って訊いてみた。すると、トオルくんは‥‥。
「見せたいもの、ねぇ・・・」
まるで今言われたかのように考え込んでいた。
「そうだ!あっちの部屋にあるんだ」
って、指さした方向は、扉が閉まった個室?
初めて入ったトオルくんの部屋は、綺麗に整理整頓されてて、本棚には大学生の難しい本がいっぱい並んでいた。
「適当に座っていいよ」
トオルくんがそう言ったので、目の前の小さいテーブルの所へ腰を下ろす。
トオルくんも、テーブルを挟んだ私の向かい側に腰を下ろした。
でも、一向に「見せたいもの」の話をしようとしなかった。
何か、いつもと様子が変・・・?
そして、いきなり喋り出した。
「リョウと会ってる?」
「また」だ。
今まで何度も耳にしてきたトオルくんの台詞。
私は、無言で首を横に振った。
「喧嘩でもした?」
「・・してないけど」
優しく問いかけるトオルくんに、私は小さく応えた。
「あれから1年だぜ。今まで、ずっと連絡して来なかったのかよ?あいつは」
トオルくんは、「信じられない」っていう表情で私に言った。
「サオリちゃん。リョウのことまだ好きなんだろ?我慢しないで会いに行けばいいじゃないか」
私は咄嗟に、また謝ってしまう。
「ごめんね。トオルくんには色々相談に乗ってもらったのに。会いに行く勇気が出なくて」
「何で? そんなのは関係ないって。ずっと我慢してるのは辛過ぎるだろ」
「でも、また素っ気ない態度とか取られたら、何だか怖くて・・・」
私は、不安な気持ちをトオルくんに打ち明けた。
「ふぅ~ん」
トオルくんは、ブツブツと何やら呟いた。
え?
今、何て言ったの?
この後、今まで紳士的な態度をとってたのに、急に彼の表情が変わった。
まるで、今までのことが全てリセットされたみたいに、トオルくんが‥‥。
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