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ボーイフレンド💛~友情から恋へ発展していく物語~(第30話)

(第30話)

第4章 ~告白~ 


1994年 春・・───。

リョウちゃんとトオルくんが殴り合いの喧嘩をしてから1年が経っていた。
私は22歳になっていた。あれから私たちは、トオルくんとは会ってない。
そんな時、ユウコから「久しぶりにみんなで集まろうよ」って、連絡が来た。
その日は、トオルくんの就職祝いをする為だった。
リョウちゃんは、初めそれを聞いて「オレは行かない」って言ってたんだけど、ね。仕方なく来たって感じ。
トオルくんと口も訊きたくないからずっとそっぽを向いていた。
それとは対照的にトオルくんの方は、自分が漸く社会人になれたことで上機嫌だった。笑顔で、自分の名刺をみんなに配っていた。
でも、リョウちゃんだけは、トオルくんの名刺を受け取らなかった。
トオルくんは、そんな事はお構いなしに、お喋りを続けていた。

「今は ”就職氷河期” だからさぁ、就職浪人にならなくて良かったよ。サオリちゃんのいる病院トコロとも近いし。これから、楽しくなりそうだなぁ♪」

ユウコは、トオルくんのお喋りに口を挟むこともなく、黙って聞いていた。
リョウちゃんは、イラっとした表情を見せたけど、何も言わなかった。
トオルくんの「就職祝い」は、微妙な空気のまま終わった。

帰る前にお化粧室へ寄って、みんなのところへ戻ろうとした時、真面目な表情をしたトオルくんが、私をジッと見つめていた。
そして、今までの行為を謝ってきた。

「過去のことは、ごめん!君を怖がらせてしまったこと、本当に申し訳ないと思ってる。でも、今は、君を守りたいし、幸せにしたいんだ」

私は、何も応えなかった。

「サオリちゃん‥‥‥。オレが嫌いなのか?」と、トオルくんは言った。
私は、「嫌いじゃないけど‥‥。でも‥‥‥」って、応えた。

「じゃあ、オレと付き合ってくれるんだね?」
ってトオルくんが訊いて来た。

「ご、ごめんなさい!私‥‥‥」
私は怯えながら、漸く声を上げた。

トオルくんの気持ちには応えられないの。

そう言おうとした時、言葉が詰まって上手く言えなかった。
そしたら、トオルくんが、壁際のところまで私を追いやったと思ったら、静かに言った。

「なぁ。リョウなんかめちまえよ。また裏切るぞ。オレが、この会社を選んだ理由、分かる?オレが、どんなに君を愛しているか分かるだろ?」

そして、トオルくんは‥‥。
私にキスしようとしてきた。

トオルくんは、私の顎をグイッと持ち上げると、ゆっくり顔を近づけてきた。

ぅわぁ。
キス、されちゃう!

私は、硬く目を瞑った。
・・・と、その時、トオルくんのうめき声が聞こえたかと思うと、何かがドサッと落ちる音がした。

「え?」

私は、目を開けるとその音のした方を見た。
そこには、床にひっくり返って頭を抱えているトオルくんと、見覚えがある青いリュックサックが目に入った。

「痛ってぇ~! な 何すんだ・・・」
「お前こそ、何 やってんだよ・・・」

トオルくんの後ろに、拳を握りしめたリョウちゃんが立っていた。
そして、自分のリュックサックを手に取ると、私を庇うようにトオルくんから引き離した。

「サオリ?大丈夫か?」
「う うん」

私は、リョウちゃんの問いかけに軽く頷いた。
すると、トオルくんが怪訝な顔をして、私たちに向き合った。

「お前、オレに言ったよな?」
「は? 何の話だ?」
「『サオリをお前にくれてやる』って」

えっ?

私は、驚いてリョウちゃんの顔を見た。
トオルくんが、じりじりと私たちの方へ近づいて来た。

「なぁ、彼女をオレにくれよ」
「お前なんかに、やれるか!」

今にも、飛び掛かっていきそうな勢いで、激しく口論した。

お願いっ!
誰か、めて!

そう思っていた時。

「2人とも、めなさい!」

ユウコが、2人の間に入って、喧嘩の仲裁をした。

「全く。”男の子”って、どうしてこうなのかしら?」

ユウコが、呆れ顔で呟いたとき・・───。

「じゃ、オレは、このまま帰るから」

リョウちゃんが、私の手を引いて店の出入り口へ歩き出した。
ユウコは、何だか怒っているように見えた。
私は、何も言えなかった。

《私たちが店を出た後、ユウコはイラついていた》

(ユウコの心の声)
あ~ 何だかイライラしてきたわね。
何で、アタシが此奴コイツらに支払わなきゃいけない訳?

「あの2人、付き合ってるのか?」
「知らないわよ!」
「何、苛ついてんだよ」
「じゃ、お会計 お願いね」
「何で、オレが? 就職したばっかだぞ!」
「初任給、頂いたんでしょ?」

《ユウコは、トオルに伝票を渡して店を出て行った》

**********

店を出たら、リョウちゃんは、駐車場の方へと歩いて行く。

こっちの方角は・・・?
バス乗り場と反対方向だけど‥‥?

不思議に思いながら付いて行くと、リョウちゃんが「サオリ。こっちだよ」って、乗用車の前で立ちどまった。
そして、こっちを振り向いて「じゃ〜ん。これ、オレの愛車」って、言った。

えっ?
ぇええええ~~~~!!

私は、ぶったまげてしまった。

「何、これ~! リョウちゃんの車?」
「”リース” で買ったんだ。今日、納車してきた」
「何で?そんなこと、一言も言ってなかったじゃない!」
「びっくりさせようと思ってさ。サオリが一番乗りだよ」

今日は、「用事がある」って言ってたから、私だけ先にバスで行った。
てっきり一緒に行くと思ってたのに。
新車コレを取りに行ってたのね。

リョウちゃんは、助手席のドアを開けると、「どうぞ。姫」って、言った。
「やだ!何それ。あははっ!」

リョウちゃんの悪ふざけに、思わず声をあげて笑った。

生まれて初めてのリョウちゃんとのドライブデート。
夜風が気持ち良かった。
しばらく車を走らせていると、やがて海岸通りへ辿り着いた。

「もう一つ、サプライズがあるんだ」

リョウちゃんは、海岸線が見える場所へ車を停めると、ポケットの中から何やら取り出した。

「これ。鎖が切れてたから、直しといた」

それは、高校生の時に、初めてリョウちゃんがプレゼントしてくれた ”アクアマリン” のペンダントだった。でも、今となっては、嫌な記憶しか蘇って来ない。
私は、「いいよ~。もう、要らないし」って、リョウちゃんの手を振り払おうとした。

「今は、辛い思い出かもしれない。でもこれは、オレがお前に買ってあげたものなんだから。お前に、持っていて欲しい」
「うん・・・。分かった。大事にする」

二度目のリョウちゃんからのプレゼント。
今度は、絶対に失くさない。

「すごく似合ってる」
私がそれを付けると、リョウちゃんは満足そうに言った。

「もっと、よく見せて」

月明りだけだとよく見えないかなって思って、彼の方へ身を乗り出したとき、突然グイっと腕を引っ張られて、キスしようとしてきた。
私は、びっくりして、思わずそれを振り払った。

「ダメだった?ごめん・・・」
「ううん。大丈夫・・・」

リョウちゃんだったら、きっと、大丈夫。
私は、自分に言い聞かせて、そっと目を瞑った。

リョウちゃんが、私の唇に軽くキスした。

「大丈夫?震えてるみたいだけど」
「だ、大丈夫・・・。ちょっと、寒くなってきただけだから」

私は、咄嗟にウソをついた。
まだ、少し怖いんだ。

「そっか。ごめん。じゃ、窓 閉めとくよ」

私は、さっきまでのトオルくんの会話を思い出していた。

「ねぇ、リョウちゃん。トオルくんが言ってたこと、本当? ・・・その、『お前にくれてやる』って」
「あ~。それ? 実は‥‥」

リョウちゃんは、言い辛そうにしていたけど、決心したのかポツリと話し出す。
「それ、お前のお父さんに‥‥」

言いかけて、リョウちゃんは突然、口籠った。

「お父さんがどうかしたの?」
「今まで言えなかったんだけど、あの事件の日に、お前のお父さんに会ったんだ」
「えっ?お父さんに?」

あの時、お父さん。
一言も、その事言ってなかったのに。

「オレ。お父さんに、挨拶しようとしたらさ。物凄い厳しい顔で『娘にはもう会わないで欲しい』って。その時、突然 ”記憶” が戻ったんだ。その瞬間、何か走馬灯ソウマトウみたいに、小さい時の記憶が蘇ってきてさ。そしたら、初めてお前が ”大事な存在” だって気付いたんだよね」

リョウちゃんは、一気に喋り出した。

「オレと一緒にいたら、また危ない目に合わせるかもしれない。お前と会わないことで、お前を護ろうとしてたんだ。だから、記憶が戻ってないフリをした。オレ、感じ悪かったろ? 今更だけど・・・。ウソをついてごめんな」

そして、一呼吸置くと、言ったんだ。
「オレたち、付き合おうか?」って。

「え?」
「やっぱり、そうした方がお前を護れると思うし・・・」

嬉しかった。私は、すぐに「うん」って頷いた。

「よしっ!じ、じゃぁ、決まりだな!」
リョウちゃんは、少し照れながら言った。

「それから。約束してくれ。これからは、お互い ”隠し事” は、しにしようぜ」

リョウちゃんは、「告白」したことで、胸のつっかえがとれたかのように、スッキリした顔つきになった。
私は、リョウちゃんの辛さを思うと、涙が出て来て止まらなかった。

「何で、泣くの?」
「だ、だって・・・ 初めて分かったんだもん。リョウちゃんが、こんな風にずっと、辛い思いを抱えていたなんて」

私たちは、会えなかった時間を埋めるように、もう一度キスをした。

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#創作大賞2024 #恋愛小説部門

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