ボーイフレンド💛~友情から恋へ発展していく物語~(第8話)
(第8話)
第1章 ~1988年~
「送ってくれて ありがと・・・」
「ぅん・・・」
リョウちゃんが軽く頷いた。
ちょうどそのとき、私の”1個上”のお姉ちゃんが学校から帰ってきた。
「・・・ぁ なぎ姉だ」
「リョウくん! サオリを送ってくれたの?」
「ぁあ、今日は バイト休みだったし・・・」
橘 渚 17歳。
リョウちゃんは、渚姉ちゃんのことをいつも、「なぎ姉」って呼んでいる。
「せっかくだから、夕飯でも食べてく?」
「ホントに~? ラッキー!!」
待っていたかのように、素直に喜ぶリョウちゃん。
まさか・・・。
「夕ご飯」目当てで、サオリを送ったんじゃないよね?
「此処の家のご飯 美味しい〜」
ちゃっかり、家族の一員みたいになってた。
「遠慮しないでいっぱい食べてね」
うちのお母さんはリョウちゃんが来ると、いつも嬉しそうな表情をする。
「うちは 女の子しかいないから、リョウちゃんが来たら賑やかになるわ〜」
お姉ちゃんも、「リョウくんみたいな弟が欲しかったなぁ」って、我が家の女子たちには、すっかり気に入られてる。
「お代わりもあるからね」
「ホント? じゃぁ、もらおかなぁ〜」
ちょっと! リョウちゃん。
少しは遠慮くらいしてよ!
誰に対しても、人なつっこくて態度が変わらないリョウちゃんなのだけど・・・・・・。
うちのお父さんだけには、苦手意識を持ってるみたいだ。
堅苦しくて真面目な性格のお父さんは、リョウちゃんが来ても、特に「ニコリ」とすることもなく、あまり喋らない。
そんなうちのお父さんの性格を知ってか知らずか、お姉ちゃんときたら、リョウちゃんのことばかり話題にする。
その日も、お父さんが一緒に食卓にいるのに・・・・・・。
「そうか。リョウくんが、サオリと”結婚”したらワタシの弟になるんだよね~」
・・・って、まだはっきりと決まってもいないのに、勝手に口にする。
「え・・・? 『結婚』・・・?」
リョウちゃんは、思わず「結婚」って言葉に反応する。
バカバカ!
お姉ちゃんったら、お父さんの前で何言うのよ?
リョウちゃんにも、訊かれちゃったじゃないのよ~。
私は、恥ずかしくて下を向いてしまう。
胸の「ドキドキ」が聞こえちゃったらどうしよう~。
一瞬、チラッとリョウちゃんの方を見る。
でも、今の話を訊いてなかったかのように、平然としていた。
やっぱり、リョウちゃんはサオリのこと・・・・・・。
何とも思ってない・・・のかな?
玄関先までリョウちゃんを見送ったとき、リョウちゃんがマジマジとこっちを見た。
え・・・?
何・・・?
すると、突然。
「そっか。お前も、いつかは『誰か』と結婚するんだよな~」
・・・って、まるで人事みたいに呟いていた・・────。
今、思えば・・────。
リョウちゃんの性格上、これが「精一杯の照れ隠しだったんだ」って分かったけど、当時は、ものすごぉ~く空しい気分だった。
********
明日からは夏休み。
今日は、ユウコのお宅へお邪魔することになった。
それにしても、大きなお屋敷。
まるで、一流俳優が演じている「映画」か「ドラマ」のワンシーンを観ているみたいだ。
トオルくんは、かなり緊張して私に話しかけてきた。
「すげぇな・・・ オレ、こんな広い屋敷 初めて見たぜ・・・」
「う、うん・・・」
あまりにも凄すぎて、言葉が出なかった。
それとは対照的に、リョウちゃんは、屋敷内をキョロキョロ見回して、高価なものがいっぱい置いてあるのに壊さないかヒヤヒヤ。
「コバヤシ・・・? そこはもういいから。この子たちを部屋に案内してあげて」
「かしこまりました。お嬢様」
すご・・・!
大人の男の人を呼び捨て・・・・・・?
いつも、学校で見ているユウコとは大違い。
ホントに、良家のお嬢様なんだぁ。
ユウコは、私たち3人を残して、別の部屋へ入っていった。
「オレ 夢でも見ているみたいだぜ。ホントに、あのユウコかよ。本気でもう、”アイツ”とは普通に喋れなくなるかも・・・・・・?」
トオルくんは、目の前のユウコと初めて出逢ったかのような堅い表情をしている。
私は、初めてユウコの偉大さを感じた。
「こちらの部屋でしばらくお待ちくださいませ」
コバヤシさんは、私たち3人を部屋に案内すると、すぐに出ていってしまった。
張り詰めていた空気が、一気に抜けると・・────。
まず最初に、トオルくんが喋りだした。
「リョウ。これからユウコには、言葉に気を付けろよ」
「何で?今まで通りでいいじゃん。それに、ユウコと”結婚”したら逆玉に乗れるじゃんか」
「おいおい、冗談だろ?あいつと”結婚”でもしたら、女の子たちと遊べなくなるじゃないか」
楽天的な喋り方をするリョウちゃんに対して、今から自分の将来を決められるのかと、急に青ざめたトオルくん。
そのとき・・────。
コバヤシさんが、部屋に戻ってきた。
「お茶のご用意が出来ました」
コバヤシさんの後に着いていくと、案内された場所は、今まで見たこともない豪華なお部屋だった。
「ねぇ オレたち、ホントに こんな格好で大丈夫?」
トオルくんが、場違いな自分たちの格好に、急にオドオドし始めた。
私たち3人は、学校からそのまま来てしまったので、制服姿のまんま。
「こちらへどうぞお掛けください」
コバヤシさんは、出入り口近くの席へ案内してくれたけど、何だか緊張して足が動かない。
料理が並べられたテーブル席の前には、たくさんのシェフたちが、立っていた。
********
小林 秀和・・・・・・。
年齢は、40歳代くらいだろうか?
すらりと伸びた手足に、整った目鼻立ち。
ユウコが「子供だった頃から、面倒を見ていた」と言う。
どうやら彼は、ユウコの専属の執事さんらしい。
ユウコが、母親らしき人と一緒に中央のテーブル席に座っていた。
今日は、いつも見慣れている制服姿とは違って、ドレスを身に着けている。
すっごく綺麗・・・。
ユウコにしばらく見惚れていると、トオルくんが話しかけてきた。
「サオリちゃん、ヤバいぜ・・・ あれほどとは思わなかった。どうしよう・・・・・・」
トオルくんは、さっきから ユウコと目も合わそうとしない。
ユウコのお父さんは、海外出張へ行ってるらしくて、その日はいなかった。
トオルくんは、そのことに少しホッとしているようだった。
料理を食べ始めて数分後・・────。
突然、派手な音がしたかと思うと、私の隣りの席に座っていたリョウちゃんが倒れていた。
え・・・
リョウちゃん?
次の瞬間、私はギョッとした。
リョウちゃん!!
何、飲んでんの!?
リョウちゃんの身体から、アルコールの匂いがプンプンする。
ボトルが一本、空になっていた。
そして。
静寂した空気が一気に、大騒ぎになる。
「誰よっ! ここに ”ブランデー”置いたのはっ!?」
「早くっ! 水、水っ・・・!!」
ユウコのお母さんは、未成年にお酒を飲ませたことを知って、急に慌てだした。
「まぁ! どうしましょう!」って、おたおたしていた。
ユウコの執事のコバヤシさんは、「元気な坊っちゃんで・・・」って、困ったように苦笑いしていた。
「・・・・・・ナニやってるのよ。もぅ・・・」
私は、赤い顔をしてそのまま眠ってしまったリョウちゃんを起こそうとしたのだけど。
「大丈夫ですよ」
コバヤシさんは、優しい口調で私に声をかけた。
「こちらの坊っちゃんは、後で私がお家まで送って差し上げますので、お嬢様方はお先にお帰りくださいませ」
そう言って、私とトオルくんを屋敷の外まで送ってくれた。
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