ボーイフレンド💛~友情から恋へ発展していく物語~(第13話)
(第13話)
第2章 ~記憶・・・・・・~
翌日からリョウちゃんは学校へ来た。
まだケガの状態が完治してなくて痛々しい姿だったけど、元気に登校してくれて良かった。
「クラスの連中には、オレが『記憶喪失』になっていることを言わないでくれ」って、リョウちゃんに言われている為、担任の先生には「他の生徒たちには、しばらくの間黙ってて欲しい」って、告げている。
そのせいか、クラスメートたちも いつも通りにリョウちゃんを迎えてくれた。
でも、クラスメートたちの名前も顔も完全に忘れてしまっている為、覚えているフリをするのは結構大変らしく、同級生からは「お前、大丈夫か?」って、心配する声も掛けられていた。
「リョウちゃん、リョウちゃん・・・・・・」
私は、休み時間にリョウちゃんを呼び出し、そっと小さな紙を手渡した。
「おぉ サンキュー! 助かるよ」
「うぅん 役に立てて良かった」
その為に、昨日作ったんだもんね・・───。
それは、リョウちゃんの為に作ったクラスメートの席と名前を書いた小さな紙・・・・・・。
それをリョウちゃんに手渡して、クラスメートの名前と顔をなるべく早く覚えてもらおうと思っていた。
そして明日からは・・・・・・。
毎日、リョウちゃんの補習に付き合うことになった。
というよりも、先生からは「君は受けなくてもいい」って言われたけど、少しでも力になりたくて、無理やり頼み込んで一緒に『補習授業』を受けることになった。
このままでは、出席日数が足りなくてかなりヤバいらしかった。
それどころか、成績順位もどんどん下がっていった。
リョウちゃんの変化は、成績だけじゃなく、運動神経までも以前と比べて弱くなっていた。だから、次第に運動部からの声掛けもなくなっていった。
翌日の放課後・・───。
その日の授業が終わると、早速「補習授業」が始まった。
先生方は、忙しい合間を割いて私とリョウちゃんの為に、態々時間を作ってくれた。
1日目の授業は1時間ほどで終わり、今はリョウちゃんと2人で自習中。
いつもだったら、サオリがリョウちゃんから勉強を教わっているけど、今日は サオリがリョウちゃんに勉強を教えている。
それが何だか嬉しかった。
シンと静まり返った放課後の教室には、部活動をやっている運動部の生徒たちのハツラツとした掛け声が響いていた。
しばらくの間、リョウちゃんはバイトを休むことにしたらしく、帰り道は
一緒に帰ることが多くなった。
良く立ち入っているお蕎麦屋さんの前まで来ると、「腹越しらえをしたいから」って、リョウちゃんのマネをして言ったら、「いいよ。ここへ行きたいの?」って、すぐにお店の中へ入って行った。
まぁ、いいか。
ちょうど食べたかったし・・・・・・。
後からついて行って、空いている壁ぎわの席に向かい合って座った。
メニューに見入っていたとき、リョウちゃんはまるで、初めて来たお客さんのように辺りを見回していた。
「ここ 美味しいの?」
「うん すごく美味しいよ!」
私は、注文したお蕎麦をすすり始めた。
リョウちゃんも、自分の麺を食べ始めた。
「うん ホントだ。 美味しいね」
「でしょ? 良く学校帰りに、リョウちゃんと一緒に食べに来ていたんだよ~」
ホントに、忘れちゃったのかな?
リョウちゃんは、黙々と麺をすすって、こっちを見ようともしない。
「・・・ね 何か気付かない?」
「いや、別に。普通だけど?」
「ほらっ! お箸の持ち方とか、お蕎麦の食べ方とか~」
私は、しきりに手を動かして、リョウちゃんにアピールして見せる。
「全然、気にならないけど。自分が好きなように食べたら良いんじゃない?」
「だって、いつもだったら必ず、突っかかってくるのに・・・」
もぅ・・・。
何か 調子、狂っちゃうな・・・・・・。
「サオリちゃんって、”そいつ”のこと好きなんだ」
「え?」
リョウちゃんの思わぬ発言に、一瞬・・・言葉を失った。
「もっと話、聴かせてよ。”そいつ”の・・・ってか、オレの話?」
「ぅ、うん、いいけど・・・・・・」
私は、ペラペラと今まで積もり積もりに溜まっていたリョウちゃんへの鬱憤を話し始めた。
「リョウちゃんったらね、平気でいつも酷いこと言うのよ!この前なんか、店員さんのフリをしてサオリのこと騙そうとしたのよ!その後、お箸の持ち方が変だとか、”蕎麦”食うの下手くそとか~」
「へぇ ははっ(笑 そいつは、ちょっと酷いな・・・」
私の話を楽しそうに聞いていた。
「あ、それ オレが言ったことか」
しばらく考えてリョウちゃんは、あまり実感が湧かなかったらしく「フッ」と笑った。
「何か、可笑しいよね。自分のことなのに、他人の話を聴いているみたいでさ」
あ・・・。
ホントだ。
今 サオリの目の前にいるのは、確かにリョウちゃんのはずなのに・・・・・・。
まるで・・・・・・。
全く違う人に、「リョウちゃん」の話をしているみたいだった。
それからは、リョウちゃんと過ごした日常をたくさん話した。
もしかしたら、何か思い出すきっかけになるかも・・・・・・。
そう信じて・・──────。
「うん・・・ うん・・・」
リョウちゃんは、私の話に相槌を打ちながら、楽しそうに聞いていた。
「それでね・・・」
続けて喋ろうとしたとき、リョウちゃんが慌てて止めた。
「分かった。・・・そろそろ帰ろうか」
「・・・え?」
「だって、ほら~」
リョウちゃんが指さした方を見ると、いつの間にか外は暗くなり始めていた。
「・・・あ」
ちょっと待って!
サオリ こんなに喋ってたっけ・・・?
ハッと気付いた私の顔を見てリョウちゃんは、「何か面白いものでも見た」みたいに笑ってた。
だけど、今までの「大爆笑」していたリョウちゃんとは丸っきり違くて、暖かな優しい笑い方だった。
「じゃぁ 行こうか」
リョウちゃんが先に席を立ってその場から離れた。
私も慌てて後を追いかけた。
「待って! サオリの分・・・・・・」
急いで自分の食べた代金を払おうとしたら、リョウちゃんに、財布を出しかけた手を止められた。
「いいよ。オレが払うから」
「でも、リョウちゃん。お金、あるの?」
「え、何・・・ いつも、自分で出してたの?」
「だって、いつもこうやってたから」
そう。
今までは、決まって「割り勘」ってことになっていた。
それが、普通だと思ってた。
だけど・・・・・・。
今、私の目の前にいるリョウちゃんは・・・・・・。
当然の如く、言い放った。
「”男”が払うの・・・当たり前だから」
え・・・?
そうだったの?
今の今まで1度も言われたことなかったリョウちゃんの台詞。
本当に、これが「リョウちゃん」なの・・・・・・?
信じられなさ過ぎて頭が混乱しそう・・・・・・。
車の通りが多いところでは、「もっと こっち側、歩いて」とか、私を内側へ歩かせてくれるし、歩くスピードもちゃんと合わせてくれたりして、「彼女」扱いしてくれる。
自分が知っている、今までのリョウちゃんが生まれ変わったみたいだった。
そして、今のリョウちゃんに、自分がどんどん惹かれていくのが分かった。
何だか、浮気しているみたいな罪悪感を感じる・・・・・・。
でも、それと同時に、心の何処かにポッカリ穴が空いてしまったような寂しい気持ちも感じていた。
それでも、毎日リョウちゃんと一緒に過ごした思い出の場所を周って記憶を蘇らせようとしたけど、一向に変わらなかった。
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