ボーイフレンド💛~友情から恋へ発展していく物語~(第32話)
(第32話)
第5章 ~天国から地獄~
【中村 徹】side・・・。
サオリちゃんを置いて出て来たけど‥‥。
一瞬 迷ったが、オレは上の階のボタンを押していた。
エレベーターの扉が開き、オレと同時に若い女が乗りこんだ。
(オレに会いに来てくれたと思ったのに、寄りによってユウコの話を持ってくるなんて)
期待した自分にも腹が立った。
「随分、苛ついているみたいね。”彼女”さんと揉め事?」
オレと一緒に乗りこんだ女が、話しかけてきた。
顔見知りではないが、恐らく此処の会社の社員なのだろう。
「彼女じゃ、ないっすよ。あのコは、オレの親友の彼女で‥‥」
オレが咄嗟に応えると、その女が近づいて来た。
「じゃぁ、”片思い”って訳か」
女がそう言ったとき、ブラウスからチラッと胸の谷間が見えた。
オレは、見下ろす体制になった。
おっぱい、でかっ!
「お、お姉さん。す 凄いっす・・・ 色っぺぇ♡」
(やべっ!心の声が、聴かれちゃったかも・・・?)
オレはもう、その白くて、柔らかそうな胸の膨らみに目を奪われてしまった。
「協力してあげよっか?」
巨乳女は、妖艶な笑みを浮かべて言った。
「お姉さんが、オレに?」
初めて彼女の顔を見たとき、一瞬、見間違ったのかと思った。
あまりにも、彼女がサオリちゃんに激似していたからだ。
「私の名前は、”ワタナベ エリコ”よ」
そう言って、名刺をオレに差し出した。
そこには、「経営企画部 渡辺 恵理子」と、書いてあった。
「宜しくね」
オレと同じ階で降りると、巨乳女は去って行った。
こうして、オレは彼女と「作戦会議」をすることになる。
**********
翌日、リョウちゃんが「トオルの名刺、まだ持ってる?」って、訊いてきた。
私は、思わず「う、うん・・・」って、応えたけど。
リョウちゃんが、トオルくんの話をするのは久しぶりだった。
なぁんだ。
リョウちゃんも、トオルくんの名刺が欲しかったんじゃん。
なんて、心の中で思いながら名刺を見せた。
するとリョウちゃんは、私から奪うように”それ”をもらうと、グチャグチャに引き千切ってしまった。
えっ?
ヤキモチ?
リョウちゃんは、私を睨み付けて「トオルに会いに行ってないだろうな?」って言い出した。
私は、トオルくんに会いに行ってしまったことを隠して反射的に、無言で首を振った。
嘘を‥‥吐いちゃった。
「そっか。それなら、良かった」
リョウちゃんは、私の嘘を信用して、すぐに優しい笑顔になった。
リョウちゃんが、あんなに激しくトオルくんに嫉妬するなんて。
もう二度と、トオルくんに会いに行くのは止めようって、心に誓った。
だけど、その時は。
そう思っていたのに‥‥‥。
**********
1994年 9月。
「今日、お前の『鳩子』っていう人に会ってさ~」
「ハトコ?」
「ハトコ」なんていないけど?
首を傾げながら、彼に訊いてみる。
「どんな人だった?」
「女の人だったよ。遠い親戚だって言ってた」
「ふぅ~ん。後で、お母さんに訊いてみるね」
リョウちゃんが高校生の事を打ち明けてくれた日、私たちはその日あったことを毎日、報告しようって約束した。
リョウちゃんは、包み隠さず何でも私に話してくれた。
「自動販売機の前で、蹲っている所を助けた」
困っている人を見かけたら、例え営業中であっても見捨てておけない。
彼は、高校生の頃からちっとも変わっていなかった。
「人助けだよ」
って、彼はそう言ったけど、私は高校2年のときに体験した嫌な思い出は二度と繰り返したくないって思ったら、
「もう、あんな危ないことには首を突っ込まないでよっ!」
って、つい口煩く言ってしまった。
12月24日。
恋人たちにとって、一年で一番大切な季節が来た。
「今日は、絶対に遅れないでよっ!」
いつも「デート」の時間に遅れて来るリョウちゃんに、私は彼と約束した。
彼は、「レストランの予約をしておくよ」って言って、私たちはいつも通りに仕事へ行った。
リョウちゃんと付き合ってから、初めて過ごす「クリスマスイブ」・・・のはずだった。
夜7時。
「7時過ぎには行くよ」
って、その日の朝にリョウちゃんが言ったので、私は少し早めに待ち合わせ場所で待っていた。
そして約束の時間、彼の姿が見えてこっちへ歩いてきた。
今日は、遅れないでちゃんと来たね。
偉い、偉い。
と、そう思っていたときだった。
突然、リョウちゃんの目の前に女の人が現れて、リョウちゃんに抱き付いてきた。
えっ?
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
彼は、女の人を自分の車に乗せると、そのままUターンして行ってしまった。
しばらくして、彼からポケベルのメッセージが届いた。
「0906」
お・く・れ・る
遅れる?
「1052167」
ど・こ・に・い・る・の?
「4510」
し・ご・と
彼は、ウソをついた。
信じられない。
あんなに約束したのに。
「付き合おう」って約束した日に「隠し事はなしにしようぜ」って、自分から言ったんじゃない?
あんなに楽しかったのに。
あんなに幸せだったのに。
私は、辛くなってその場から離れて歩き出した。
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