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#03 「昨日の焼肉」は今日のあなたを救わない「隠れ栄養失調」の正体と解決策

「毎日しっかり食べているつもりなのに、なんだか疲れが取れない」
「肌が荒れやすくなったし、髪のパサつきも気になる」
「ダイエットしているわけでもないのに、体力が落ちた気がする」

もしあなたがそんな悩みを感じているなら、それは「隠れ栄養失調」かもしれません。

こんにちは、国際中医薬膳師の川上えりこです。食事を通して皆さんの体調を整えるお手伝いをしています。

今回は、飽食の時代と言われる現代の日本で急増している「タンパク質不足」の真実と、今日から始められる具体的な解決策についてお話しします。


1. 「見た目が普通」でも体の中はスカスカ?

「栄養失調」と聞くと、多くの人はガリガリに痩せて骨が浮き出ている姿を想像するかもしれません。しかし、今の日本で問題になっているのは、見た目はふっくらしていたり標準体型だったりするのに、体内がボロボロになっている「隠れ栄養失調」です。

その最大の原因が、タンパク質の圧倒的な不足です。

「私はお肉が大好きだし、昨日も焼肉をお腹いっぱい食べたから大丈夫!」

そう胸を張る方にこそ知ってほしい、タンパク質の「不都合な真実」があります。

2. タンパク質は「貯金」ができない

私たちの体には、エネルギーを貯蔵する仕組みが備わっています。余ったカロリーは「脂肪」という形で、何日分でも、何ヶ月分でも蓄えることができます。

しかし、タンパク質(アミノ酸)には、そのタンクが存在しません。

血中に流しておけるアミノ酸の量はごくわずか。一度に大量のお肉を食べたとしても、その時に体が必要としていない分は、材料としてプールされることはありません。悲しいことに、エネルギーとして燃やされるか、脂肪として蓄えられるか、あるいはそのまま排泄されてしまうのです。

つまり、「昨日の夜に焼肉を食べたから、今日の朝と昼は抜いてもいい」という理屈は、体には通用しないのです。

一晩明ければ、血中のアミノ酸濃度は下がっています。あなたの体は、朝起きた瞬間から「材料がない!」という悲鳴を上げているのです。

3. ピンチの時は、自分を「溶かして」生きている

生物学者の福岡伸一先生は、その著書『動的平衡』の中で、私たちの体は常に壊され、作り替えられ続けていると説いています。この新陳代謝の工事は24時間、1秒たりとも止まることはありません。

もし、食事からの材料(タンパク質)が途絶えたらどうなるでしょうか?
工事を止めるわけにはいかない体は、「自分の組織を溶かして」材料を賄おうとします。

真っ先にダメージを受けるのは、代謝の回転が早い組織です。

  • 膵臓(すいぞう): 大量の消化酵素を作るため、常にフル稼働している臓器。

  • 腸の壁: 栄養を吸収する大切な場所。

  • 皮膚・髪・爪: 生命維持の優先順位が低いため、後回しにされやすい場所。

「肌がボロボロになる」「髪がパサつく」「爪に縦筋が入る」……。これらは単なる加齢のせいではなく、体が自らを削って生き延びようとしている「SOS」のサインかもしれません。

4. 目指すべきは「1日60g」のコツコツ摂取

では、私たちは毎日どれくらいのタンパク質を摂ればいいのでしょうか。

目安となるのは、体重50kg前後の成人で「1日約60g」です。
そして、ここからが最も重要なポイント。

「一度に60g」ではなく、「20gを3回」に分けて摂ること。

貯金ができないタンパク質は、こまめに補給し続けるのが唯一の正解です。

【1日20g×3回のイメージ】

  • 朝: 卵1個、納豆1パック、豆腐の味噌汁(これで約15〜20g)

  • 昼: サバの味噌煮定食、副菜に和え物(魚1切れで約15〜20g)

  • 夜: 鶏肉の煮物、厚揚げ、豚汁(肉や大豆製品を組み合わせて20g)

もし「一度にそんなに食べられない」という方は、間食を活用しましょう。お菓子の代わりに、ゆで卵、チーズ、豆乳、あるいは最近コンビニでも手軽に買えるプロテインバーなどを取り入れるだけで、体の材料不足は劇的に改善されます。

5. 3ヶ月後の自分を楽しみに

実は私自身も、数年前までタンパク質不足に陥っていました。

爪に縦筋が入り、何となく不調を感じる日々。自分の食事を振り返ってみると、バランスよく食べているつもりでも、おやつに和菓子を食べてお腹を満たしたり、昼食を軽く済ませたりして、タンパク質の比率が圧倒的に低かったのです。

そこで、「朝・昼のタンパク質を増やす」「間食にゆで卵やチーズを食べる」という生活を意識して続けてみました。

変化が現れたのは、3ヶ月が経った頃です。
あんなに気になっていた爪の縦筋が消え、厚みのある、しっかりとした爪に生まれ変わりました。爪切りをした時の「パチン、パチン」という力強い音を聞いた時、「ああ、体の中に材料が満ちているんだな」と実感しました。

おわりに

私たちの体は、食べたものでしか作られません。
今日、あなたが口にする卵ひとつ、納豆ひとつが、数ヶ月後のあなたの肌になり、髪になり、内臓になります。

「一度にたくさん」ではなく「コツコツと」。
明日からの食事に、ほんの少しのタンパク質をプラスしてみませんか?

次回は、タンパク質の「質」についてお話しします。「お米のタンパク質ってどうなの?」という疑問にお答えしますので、楽しみにしていてくださいね。

あなたの食事が、明日への活力に変わりますように。

筆者プロフィール:川上えりこ
国際中医薬膳師。食事でみんなの体調を良くしたい、ちょっとおせっかいな専門家。日々の食事を進化させるヒントを発信中。


この内容は音声でも配信しています。


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