【読書感想文】正しいものを正しくつくる(プロセス編)
なぜ製品開発はいつも失敗するのか?
どうしたらうまくいくのだろう?
恐らく製品開発に携わる多くの人がその疑問を持っていることでしょう.
かくいう私も製品開発の現場ではたらき,なかなかうまくいかない日々を送っています.
そんな中で出会ったのがこの本です.
著者はカイゼンジャーニーやチームジャーニーのシリーズ,またリーン開発の現場の翻訳をされている方です.難しい内容をわかりやすく解説してくれるので,個人的に何冊か購入しています.
正しいものを正しくつくる
そもそも,「正しいもの=顧客にとって価値のあるもの」を作らなければ,だれも買ってくれませんし,「正しくつくる=十分な品質を担保する」ことができればやはり顧客の求める者にはなりません.
なぜ多くの製造業やIT企業では,プロダクトづくりに苦戦するのでしょうか?
その答えは,誰も正解を持っていないものをそれでも形にすることが求められるからです.何を作ったらいいかもわからないし,どうやって作ったらいいかわもわからないというのが現実です.
この本では前半で正しくつくることについて,後半で正しいものをつくることについて解説してくれます.
前後半に分けて,今回紹介する前半分では「正しくつくる」ことにフォーカスしてみていこうと思います.
正しくつくる
現代のソフトウェア開発では次のアジャイル型という方法が推奨されています.
しかし,アジャイルというのは素早く作って素早く試すんでしょ,と概念がわかっても実際何をどうしたらいいのかわからないという問題があります.
本書では,製品開発における不確実性をアジャイルプロセスによって低減していく方法をより具体的に説明してくれています.
まず初めに,調整の余白を作るべきだといいます.調整の余白とは,どんな機能をどのレベルまで作りこまなければならないのかという点を調整可能にすることです.
機能はわかりやすいと思いますが,そのレベルとは何でしょう.本書では「度合い」=深さと呼んでいます.
わかりやすい点として,決済機能を例に挙げています.
一言で決済といっても,クレジットカードによる決済機能だけでいいのか,銀行決済もできなければいけないのかによって機能の「度合い」が変わります.
製品にどんな機能を搭載しなければならないのか(満たすべき要求の範囲)を決めたら,その度合いで調整できるようにしよう,というのが本書の主張です.
クレカ決裁でいいのか,全ての決済ができなければいけないのかによって松竹梅の選択肢を設定します.クライアントとは,松竹梅のどの選択肢(どの度合いまで掘り下げるのか)について合意をとることで,コンフリクトを避けることができるといいます.
さて,それではどうやって松竹梅の選択肢を決めればいいのでしょうか?
そこで有効になるのがユーザーストーリーマップです.
ユーザーストーリーマップとは,ユーザーが使用するケースを書き出して,一覧にしたものです.先ほどの決済を例に挙げるなら,クレジットカード決済や銀行決済などが一枚一枚のカードになっており,それを並べていきます.
機能を横軸に取り,その度合いを縦軸に取ると,横一列にさまざまな機能(商品の検索,選択,決済など)を縦一列にその度合い(クレカ決済,銀行決済など)を見ることができます.深くなればなるほど,それだけ充実した機能がついていることになりますね.
そして,このマップを見ながら最低限作らなければならない製品の全体像を議論することができます.特にアジャイル開発では,MVPと呼ばれる最低限の機能を持った製品から作り始め徐々に機能の度合いを深めていきます.
ユーザーストーリーマップを見ることで,どの深さの製品をMVPとするのか決めることができます.最初に選ばれる機能というのは松竹梅における梅(最低限)であり,マップのどの深さまで作りこんだら松,竹,梅のいずれにするかを設定できます.
これが,選択肢を提示する余白の調整につながるというわけですね.
この本では,調整の余白のほかに期間の余白,受け入れの余白というものも紹介されています.
興味があれば是非,本書を読んで確認してみてくださいね.
最後に
今回は,ものづくりの難しさと希望を与えてくれる本「正しいものを正しくつくる」について紹介しました.
このタイトルは,ソフトウェア開発でも有名なV&Vになぞらえていると思います.
V&Vとは検証(Verification)&妥当性確認(Validation)と呼ばれ,検証は正しく作れているか,妥当性確認は正しいものを作っているかをそれぞれ確認する工程です.
これはソフトウェアに限らずあらゆる製造業に共通する考え方で,個々のプロセスが正しくできているか?最終的な製品仕様は顧客が満足するものなのか?の確認は業界問わず求められます.
