家族の未来を育てる対話集|60干支シリーズ④甲子(きのえね)のあなたへ
ーーまだ誰も知らない朝へ、最初の根を伸ばす木ーー
あなたが生まれる前。
世界にはまだ、
道も、名前も、
「こうすればいい」という答えも
ありませんでした。
そこにあるのは、
しんと静かな夜と、
まだ誰にも見つけられていない未来だけ。
その暗がりの中で、
一本の木が目を覚ましました。
まっすぐに空へ伸び、
やがて大きな森の始まりとなる木。
その木を、人は
**甲(きのえ)**と呼びました。
甲は、十干の先頭に立つ木。
誰かがつくった道を歩くのではなく、
まだ道のない場所に根を下ろし、
「ここから始めよう」
と、未来へ向かって
最初の枝を伸ばす木です。
そして、あなたが選んだ日は、
**子(ね)**という印を持つ日でした。
子は、十二支の始まり。
一日が終わり、
次の一日が生まれる真夜中を表します。
__________________________________
世界は眠っているように見えても、
土の下では小さな種がふくらみ、
新しい朝の準備をしています。
甲という、始まりの木。
子という、始まりの時。
二つの「始まり」を持つ甲子は、
「きのえね」と読み、
音読みでは「こうし」と読みます。
甲子のあなたは、
まだ誰も見たことのない未来に
最初の一歩を置く人です。
もしかすると、あなたには、
周りの人にはまだ見えていない景色が
見えているのかもしれません。
_____________________________
まだ言葉にはできないけれど、
「きっと、こうなる」
「ここには、何かがある」
そんな予感を、
胸の中に抱えてはいませんか。
けれど、最初に立つ人には、
お手本がありません。
「どうして、そんなことをするの?」
「今のままでいいじゃない」
そう言われて、
自分の感じている未来を
疑いたくなる日もあるでしょう。
________________________________
そんなときは、
自分に尋ねてみてください。
誰かの正解ではなく、
私は本当は、何を始めたいのだろう。
まだ誰にも伝わっていなくても、
私には見えている未来は何だろう。
森の最初の一本も、
はじめはひとりでした。
隣に並ぶ木も、
守ってくれる木陰もない場所で、
地面の奥へ、奥へと
静かに根を伸ばしました。
すぐに理解されなくてもいい。
すぐに大きくならなくてもいい。
大切なのは、
誰かに認められてから始めることではなく、
あなたの中に生まれた小さな芽を、
あなた自身が見失わないこと。
やがてその木は、
長い時間をかけて根を張り、
大きな木になりました。
___________________________
ある日、
大樹は湖に尋ねました。
「どうして私は、
ここから動けないのですか」
湖は静かに答えました。
「動けないからこそ、
あなたは深く根を張ることができるのです。
あなたがいつも
同じ場所に立っているから、
鳥は帰る枝を見つけられる。
疲れた人は、
休める木陰を見つけられる。
動かないことは、
あなたの弱さではありません。
あなたがそこにいることが、
誰かにとっての
帰る場所になるのです」
だからあなたも、
動かない時間を恐れなくていいのです。
あなたが信じた場所に根を張り、
立ち続けることもまた、
新しい未来を育てる力なのです。
____________________________
今、あなたの中には、
どんな芽が生まれていますか。
小さすぎるからと、
見なかったことにしている願いはありませんか。
「いつか」と言いながら、
土の中に眠らせたままの未来はありませんか。
あなたが最初に伸ばした根は、
やがて誰かが立ち上がるための
大地になります。
あなたが勇気を出してつくった道を、
あとから歩く人が現れます。
あなたが始めることで、
歩きやすくなるのは誰でしょう。
あなたがこの世界に生み出すものは、
誰の未来を明るくするのでしょう。
_____________________________
甲子なあなた。
あなたは、
完成された森を眺める人ではありません。
まだ誰も知らない朝に立ち、
最初の根を伸ばす木。
あなたの中で、
もう始まっているものは何ですか。
そしてあなたは、
この世界に何を初めて生み出すために、
生まれてきたのでしょう。
その答えが、
今はまだ小さな予感でしかなくても。
あなたが最初の一歩を置いた場所から、
新しい世界は、静かに育ち始めます。
――まだ誰も知らない朝へ、最初の根を伸ばす木――
な、あなた
生まれてきてくれて、ありがとう
