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この骨は本当に本人の骨なのか? マレーシア華人の納骨で抱いた疑問

「この骨、本当に本人の骨なのだろうか。」

マレーシアで初めて華人の納骨に立ち会ったとき、僕の頭に真っ先に浮かんだのはそんな疑問でした。

マレーシアに住んで20年になりますが、これまで葬式や納骨の場に出たことはありませんでした。

ところが年齢を重ねたせいか、最近は身近な人が亡くなることも増えてきました。

先日、友人のお母さんが亡くなり、その納骨に立ち会うことになったのです。

お母さんはある日の未明に亡くなりました。すぐにでも戻ろうと思いましたが、地方で仕事をしていたこともあり、その日のうちには行くことができませんでした。

仏教徒である華人の葬式は、亡くなってから2日間ほど行われます。

葬儀は、クアラルンプール市内チュラス地区の近くにある「広東義山」と呼ばれる広大な墓地の一角で行われました。

この墓地は、華人墓地としては世界最大の規模を誇ります。面積は約135ヘクタールで、東京ドームに換算するとおよそ29個分にもなる広さです。

1895年に造成されたこの土地は、風水を強く意識して選ばれた場所。20世紀初頭までは土葬が主流だったため、長い年月のなかで墓地がどんどん拡張されていったと考えられています。

名前からも分かる通り、この墓地に埋葬されるのは主に広東系の人々です。

クアラルンプールには広東系の華人が多いのですが、その隣にはこれまた広大な福建系の墓地もあります。

納骨は「広東義山」の一画の納骨堂に。

納骨堂前の仏像

火葬場はこの墓地の敷地内にあり、そこで遺骨を受け取るのですが、日本の感覚からすると少し不思議な点がありました。

日本では火葬の数時間後に遺族が骨を拾い、骨壺に入れます。

しかし、ここでは、遺骨の引き渡しは翌朝。火葬場の火力が弱いのか、順番待ちのためか、それとも別の理由なのか、かなり時間がかかったようです。

翌朝、遺骨はシルバー色の金属製の容器に入れられて出てきました。そこで僕はふと疑問に思いました。そこで出てきたのが冒頭の疑問です。

この骨が、本当に本人の骨だと、誰が確認できるのだろうか。

引き渡しの際には書類にサインをしますが、見せられるのは容器の中の骨だけです。

これでどう確認するのでしょうか。

DNA鑑定でもしない限り、確認のしようがないのではないかと思ったのです。

日本では遺骨の取り違えなどがあれば大問題になりますが、ここでは、誰もその点を気にしていないようでした。

そんな疑問を抱きつつも、僕も骨拾いをさせてもらい、骨壺に入れました。

日本では二人一組で骨を拾いますが、ここでは少し違います。

右手に箸を持ち、左手で右手首を支える形で1人ずつ骨を拾うのです。なぜこの作法なのかは、よく分かりません。

遺族が大きな骨を拾って入れたあと、灰状になった残りの骨は骨壺に「ジャー」と流し込まれました。

その後、納骨の儀式が始まります。納骨堂の前に、オレンジ色の袈裟を着た僧侶が現れました。

最初に北京語で歌のようなものを唱え始めます。お経なのだと思いますが、非常にリズミカルです。僧侶がお辞儀をすると、参列者も一斉に頭を下げます。

お経が終わると線香を立て、その後、近くの仏像にも線香を持って三拝します。そして骨壺を持って納骨堂へ向かいました。

日本にも納骨堂はありますが、ここにはかなり大規模なものがあります。建物は二棟あり、そのうちの一つはなんと13階建てです。

今回納骨されたのはもう一方の4階建ての低い建物でしたが、内部は骨壺が入るサイズのロッカーが無数に並んでいます。

扉は透明で、中に納められた骨壺が見えるようになっています。

骨壺の前には、出生地・生年月日・逝去日が書かれ、写真も飾られていました。

並んでいる骨壺の多くは、やはり広東系の人々です。移民二世、三世と思われる方が多い印象でした。

そこでは、あることに気づきました。

華人の墓は「家族の墓」ではないのです。

あくまで個人の墓なのです。

華人は家族を非常に大切にする文化を持っています。しかし、死後は「家族」ではなく、あくまで個人として祀られます。これは土葬の場合でも同じです。

日本のように「〇〇家之墓」という形式はありません。

そもそも華人の女性は結婚しても姓を変えません。そのため、「家に入る」という感覚自体が日本ほど強くないのでしょう。

また姓が変わってしまうと、「自分の祖先がどこから来たのか」が分からなくなるという問題もあります。

真偽は分かりませんが、例えば男性が「陳」という姓なら、華人社会では同じ陳姓の女性とは結婚しないという話も以前に聞いたことがあります。たとえ、かなり遠くても同族の血が混ざることを避けるためだそうです。

こうして友人のお母さんの骨壺も、納骨堂の一画に納められました。そこで再び僧侶がお経を唱え、儀式はすべて終了しました。

結局、納骨までにおよそ3時間かかりました。

本当は葬式にも出たかったのです。というのも、マレーシアの華人の葬式では、夜通し麻雀をするという話を以前から聞いていたからです。

本当にそんなことをするのか、確かめてみたかったのです。

日本人の感覚からすると不謹慎に思えるかもしれません。

しかし、こちらでは「故人を寂しくさせないため」と言われています。

もっとも、実際のところは遺族たちの長い時間をつぶすためという面もあるのかもしれません。

葬式は長時間に及びます。麻雀だけでなく、お酒が振る舞われ、宴会のような雰囲気になることもあるそうです。

同じアジアでも、死者の扱い方にはこれほど大きな違いがあるのには正直驚きました。

そしてそれは、生きている社会の考え方の違いを、そのまま映し出しているのかもしれません。

納骨堂近くにあった大香炉

最後までお読みいただきありがとうございました。

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