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コーラを飲むたびに、この仕組みが回っている——Coca-Cola(KO)を公認会計士が解剖する

生涯現役CPA
2026年5月

あなたの飲み物はどこから来るのか——飲料帝国チェーン 第1回/全5回

※本記事の財務数値は2026年5月時点の公開情報(FY2025決算)に基づいています。投資判断の際は必ず一次情報をご確認ください。

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あなたは今日、何かを飲みましたか?

コーラ、お茶、スポーツドリンク——その「飲む」という行為のたびに、ある会社のビジネスが静かに回っています。創業140年、世界200以上の国と地域で1日約22億杯分が消費されている「その会社」を、あなたはどれだけ知っていますか。

「知ってる、コカ・コーラでしょ」

そう思ったあなたに聞きます。ではなぜ、コーラを「提供している」はずのこの会社の粗利率が61%を超えるのか——説明できますか。

■ このシリーズで何がわかるか

第10シリーズ「飲料帝国チェーン」は、こんな問いから始まります。

「あなたが今日飲んだものの裏で、誰がどう稼いでいるのか?」

コーラの帝国が設計した仕組みを、ライバルが食と飲料で包囲し、エナジードリンクが嗜好品市場を制し、プレミアムアルコールが価値を塗り替え、健康機能飲料が次世代を狙う——全5社が「飲む価値連鎖」でつながっています。

Coca-Cola【KO】→ PepsiCo【PEP】→ Monster Beverage【MNST】→ Constellation Brands【STZ】→ Celsius Holdings【CELH】→ KOへ帰還。

第1回は、チェーンの頂点に立つThe Coca-Cola Company(NYSE: KO)です。

■ Coca-Colaとはどんな会社か——「コーラを作らない」帝国の設計者

The Coca-Cola Companyは1886年創業、ジョージア州アトランタ本社。「コカ・コーラ」をはじめDasani、smartwater、Minute Maid、Costa Coffee、Powerade、スプライト、ファンタなど約200のブランドを展開し、世界200以上の国と地域でビジネスを行う世界最大規模の飲料企業です。

FY2025(2025年12月期)の純売上高(Net Operating Revenues)は$47.9B(約7.3兆円、前年比+1.9%)、粗利率は61.6%です。純利益はKO株主帰属で$13.1B(GAAP)を計上しました。ただし、この純利益には投資・資産売却等の非経常的利益が含まれる可能性があり、事業の実力を見るにはFCF($5.3B)を合わせて読むことが重要です。

なお、KOは2025年も64回目の連続増配を実施し、Dividend Kingの地位を維持しています。

■ ビジネス構造——KOは実は「コーラを直接作らない」

ここが今回最大の驚きです。

Coca-Cola Companyの本体は「コンセントレート(濃縮液)」をボトリングパートナー(ボトラー)に販売する会社です。ボトラーがコンセントレートを希釈・充填し、トラックで流通させ、スーパーや飲食店に届けます。製造・物流・在庫リスクの大半はボトラーが負い、KOはコンセントレートとシロップを販売するというビジネス構造です。

これが粗利率61.6%の正体です。製造固定費の多い事業をボトリングパートナーに委ねることで、KO本体は「ブランド・レシピ・マーケティング」に集中するAsset-Light(資産軽量)モデルを実現しています。

なお、KOはコカ・コーラ ヨーロッパ パシフィック(CCEP)など主要ボトラーの株式を一部保有し、持分法等を通じて連結外での影響力も持ちます。

■ 会計士である筆者の視点——3つのポイント

①「粗利率61%」の正体——コンセントレートモデルが生む構造

KOの粗利率61.6%を「飲料を売る会社」として見ると違和感があります。しかし「コンセントレートを販売する会社」として見ると合点がいきます。コンセントレートはブランド・レシピという知財が価値の核心であり、製造コストは相対的に低い。製造コストの大きな工程をボトリングパートナーに委ねることで、KO本体の粗利率が高くなります。

ボトラーの粗利率は20〜30%台であることと比べると、この分業の経済効果の大きさが見えてきます。

②為替リスク——200カ国ビジネスが生む「OCI(その他包括利益)」の嵐

KOは売上の相当部分を米国外で稼ぎます。強みである一方、ドル高が進むと海外売上が目減りします。財務諸表の損益計算書の下にある「その他包括利益(OCI)」に毎年多額の為替換算調整額が計上され、純利益は好調でもOCIで大幅なマイナスが出ることがあります。純利益だけで読んでいると見えない落とし穴です。

③のれん+無形資産——ブランドM&Aが積み上げた「見えないコスト」と減損リスク

KOのバランスシートには巨額ののれんと無形資産が計上されています。過去のブランド買収(Costa Coffeeなど)が積み上げた結果です。

米国会計基準(US GAAP)では、耐用年数を確定できる無形資産(一部の顧客関係等)は償却しますが、耐用年数が確定できない商標等は償却せず、毎年減損テスト(Impairment Test)の対象となります。市場環境の悪化でブランド価値が低下すれば多額の減損損失が発生するリスクがあります。KOがGAAPとNon-GAAP(Core)の両指標を開示している理由の一つがここにあります。

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■ 投資判断のポイント(あくまでも筆者の私見です)

KOは「64年連続増配」というDividend Kingの称号を持ちます。1962年から一度も配当を減らしたことがない——多くの長期投資家にとって最強の安心材料です。FCFも年間$5.3B(FY2025)を生み出しており、配当の持続性は高い水準にあります。

一方で注意すべき点も明確です。

炭酸飲料市場の成熟・健康志向の高まり・砂糖税の各国拡大——KOの主力カテゴリーに構造的な逆風が続いています。コーヒー(Costa)、ウォーター(Dasani・smartwater)、スポーツ飲料(Powerade)への多角化は進んでいますが、炭酸飲料ほどの利益率を持つカテゴリーを新たに育てるのは容易ではありません。

FY2025のGAAPベース純利益$13.1Bは過去最高水準ですが、非経常利益の寄与を除いたFCF($5.3B)との乖離を見ると、持続的な事業キャッシュ創出力の評価には一次情報の確認が不可欠です。

「Dividend Kingとしての安定性」を評価するか、「成長の上限・為替リスク・GAAP利益の質」を重く見るか——その問いに明確に向き合うことが、KO投資の出発点です。

■ 第2回へ——「コーラ単体では勝てなかった会社の逆転」

コーラ単体の炭酸市場ではKOが圧倒的。しかしPepsiCoの売上規模はKOの約2倍に達しています。なぜか——その答えが次回の核心です。

次回はPepsiCo(PEP)。スナックという「飲料以外の武器」を持つことで、まったく異なる戦い方をしている会社の財務構造を解剖します。
5社横断の財務比較・リスクランキングは総集編(有料)でお届けします。
総集編のリンクはこちら

※本記事は情報提供のみを目的としており、特定銘柄への投資を推奨・勧誘するものではありません。記載の数値・指標は執筆時点のものであり、将来の投資成果を保証するものではありません。本記事の作成にあたっては情報の正確性に細心の注意を払っていますが、内容に誤りが含まれる可能性があります。投資判断の際は必ず各社のIR資料・SEC開示書類等の一次情報をご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任においてお願いします。筆者は公認会計士・IPOコンサルタントであり投資助言業者ではなく、本記事は筆者が関与する法人の公式見解ではありません。
無断転載・複製を禁じます。

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