見出し画像

USCマーシャル:世界マフィア的結束を持つ大学経営学部

本稿では、南カリフォルニア大学 (USC) マーシャル・スクール・オブ・ビジネスに関して日本の大学で経営学を専攻する学生に向けて解説する。

USCマーシャルは単なる経営学部ではない

それは50万人の卒業生が互いに採用し合い、互いの新興企業に出資し合い、全米第2位・世界第3位の大都市経済圏においてエンターテインメント・技術・不動産産業を席巻し続ける、好循環を形成するエコシステム(生態系)である。日本の大学で経営学を専攻する学生がアメリカのビジネス教育を検討する際には、他のいかなる学校も模倣できない二つの本質的特徴を把握する必要がある。第一に、マーシャルが公式に「理論と実践の融合(pairing theory with practice)」と表現する実践重視のカリキュラム。第二に、「トロージャン・マフィア」と呼ばれるほど強固な卒業生の連帯網である。

1920年に学生300名・学期授業料60ドルという規模で創立されたマーシャルは、今日ではロサンゼルス全域に年間80億ドルの経済的波及効果をもたらし、すべてのMBA学生を卒業前に海外派遣し、アメリカの高等教育史上初の起業家教育プログラムを生み出した機関でもある。

現学部長のGeoffrey Garrettは、2020年7月1日にマーシャルの第18代学部長に就任したオーストラリア出身の国際政治経済学者である。オーストラリア国立大学を卒業後、フルブライト奨学生としてデューク大学で修士・博士号(政治学)を取得した。オックスフォード大学・スタンフォード大学・イェール大学で教授職を歴任し、UCLAでは国際研究所長および国際研究担当副学長を務めた。その後オーストラリアに戻り、シドニー大学とニューサウスウェールズ大学のビジネス・スクール学部長を歴任するとともに、シドニー大学に「米国研究センター(United States Studies Centre)」を創設した。ペンシルベニア大学ウォートン・スクールの学部長を2014年7月から2020年6月まで6年間務めた後、マーシャルに着任した。世界最高峰のビジネス・スクールを率いた人物がマーシャルの学部長に転じた事実は、同校が自らをどの方向へ向かわせようとしているかを雄弁に物語っている。Garrett学部長のもとで、サプライチェーン・デジタル資産・エネルギー転換・AI・技術倫理への戦略的投資が推進されている。

売上高17億ドルの企業を築いたアマチュア無線の少年が大学の名を変えた

この学校はその名をGordon S. Marshall(1919〜2015年)に負っている。ロサンゼルス出身のMarshallの生涯は、同校が今日教える起業家精神そのものを体現している。サウスパサデナで生まれたMarshallは、のちにキャリアの礎となる電子機器への情熱を抱いたアマチュア無線の少年であった(コールサイン:W6RR)。サウスパサデナ高校を1937年に卒業した後、第二次世界大戦に従軍し、B-24爆撃機のパイロットとして任務を果たした。帰還後、退役軍人教育支援法(GI法)を活用してUSCに入学し、当時の商業経営学部から1946年に会計学理学士を取得して卒業した。

卒業後、Marshallは航空会社のパイロットになることを志した。しかし適性検査で不合格となった。試験の結果は「経営者・営業職に向いている」と告げた。後にMarshallはこう語っている。「営業マン?それは自分が最も望まない仕事だ。」しかし適性検査は正しかった。製造業者の代理店として経験を積んだ後、1953年にカリフォルニア州エル・モンテでMarshall Industriesを創業した。同社はアメリカ有数の産業用電子部品販売会社へと成長し、1959年にニューヨーク証券取引所に上場した。北米38都市にオフィスを構え、25万種以上の製品を25万社の顧客に供給し、Avnetによる買収直前には年間売上高は約17億2,000万ドルに達していた。1999年のAvnetによる買収額は約7億6,200万〜8億3,000万ドルに上り、電子部品流通業界史上最大の買収として記録されている。

MarshallとUSCの絆は深かった。1968年に評議員会(Board of Trustees)に選出され、1970年から1984年まで書記を務め、学術委員会の委員長や執行委員会の委員を歴任した。Marshallは47年以上にわたりUSCに貢献した最長在任評議員の一人である。1996年末に自らの母校となるビジネス・スクールへの3,500万ドルの寄附を誓約し、1997年1月15日に正式発表された。当時これはアメリカのビジネス・スクールへの史上最大の寄附であり、USC全体の歴史においても史上2番目の規模であった。同校は「Gordon S. Marshall School of Business」に改称された。USC学長Steven B. Sampleはこれを「その規模の大きさのみならず、ビジネス・スクール、とりわけ大学院課程の発展を可能にする力において卓越している」と評した。

Marshall自身はいつものように謙虚にこう語った。「こんなに注目を浴びることになるとは思わなかった。ただ少しばかりお金を寄附して、また自分の仕事に戻ろうと思っていただけだ。」Marshallは2015年6月2日、パサデナの自宅で95歳の生涯を閉じた。6人の子ども、14人の孫、8人のひ孫が遺された。

 
商業専門学校から創立100周年へ:106年の軌跡

同校が商業専門的な地域教育機関から世界的な研究機関へと変貌を遂げる軌跡は、いくつかの明確な時代に区分される。1920年1月27日、USC評議員会はロサンゼルス商工会議所の要請を受け、商業経営学部(College of Commerce and Business Administration)の設立を承認した。第一次世界大戦後の好況期にあって、南カリフォルニアの金融・エンターテインメント・製造・輸送各産業に訓練を受けた専門家が必要とされていたからである。初代学部長Rockwell Dennis Hunt博士は1908年からUSCで経済学を教えていた人物であり、22名の教員を集め、ほぼ全米各州および数カ国からの学生を受け入れた。設立の理念は当時としては極めて先見的なものであった。「学生が人生の要求と真の奉仕に対する広い視野、健全な事業活動の根底にある原則に対する徹底的な知識、そして実際のビジネスに対する包括的な把握力を身につけられるよう準備すること」がその目標とされた。

同校最初の専用棟であるBridge Hallは1928年に竣工した。設計は建築家のJohnとDonald Parkinson父子による。ある歴史家が記しているように、同校が「学術的に真の個性を確立した」のは、学部長Robert Docksonが1959年に就任してからである。Docksonはフルタイムの昼間MBAプログラムを開設し、1961年に同校初の博士号を授与し、校名を「School of Business Administration」に改称し、奨学金によって全国水準の学生を引き寄せた。続く学部長Jack Steele(1975〜1986年)の時代には、著名な研究者の積極採用によって同校は研究重視へと方向転換した。この時期に招聘されたリーダーシップ研究の先駆者Warren Bennisは、1992年にUSCにアメリカ初のリーダーシップ専門研究所を設立することになる。

主要な歴史的節目を年代順に示すと以下の通りである。1972年に起業家教育プログラムが開設された。これはアメリカ初のプログラムであった。1979年にレベンタール会計大学院(Leventhal School of Accounting)が設立された。同年、効果的組織センター(Center for Effective Organizations)が設置された。1997年にGordon Marshallの3,500万ドルの寄附とPRIMEプログラムが実現した。1999年にPopovich Hallが竣工した。2013年にワールド・バチェラー・イン・ビジネス(World Bachelor in Business:WBB)が開始された。学生はUSC・香港科技大学・ミラノのボッコーニ大学の3大学で学び、すべての学位を取得するプログラムである。2016年にFertitta Hallが開館した。延べ床面積9,700平方メートルの学部課程専用施設である。2020年1月27日に創立100周年を迎えた。そして現学部長のGeoffrey Garrettが2020年7月1日に第18代学部長として着任し、サプライチェーン・デジタル資産・エネルギー転換・AI・技術倫理への投資を推進している。

今日のマーシャルは南カリフォルニア最古のAACSB認定ビジネス・スクールであり、7つの学科に約7,000名の学生を受け入れ、50カ国以上・110カ国・地域に10万1,000名以上の卒業生を擁する。

 
「理論と実践の融合」を核心とするカリキュラム

マーシャルは自校の教育哲学を公式に「理論と実践の融合(pairing theory with practice)」と表現している。ハーバード・ビジネス・スクールがケース・メソッドによる議論をほぼ唯一の教授法とし、シカゴ大学ブース・スクールが厳格な定量分析を重視するのに対し、マーシャルは講義・演習・実際のコンサルティング・プロジェクト・国際現地調査・新興企業育成を組み合わせたカリキュラムを採用しており、体験的な実践に重点を置く傾向が際立っている。


PRIME制度:すべてのMBA学生が海外へ
この教育哲学を最も可視的に体現するのがPRIME(太平洋圏教育プログラム:Pacific Rim Education)である。Gordon Marshallの寄附を受けて1997年に創設されたPRIMEは、世界で初めてすべての1年生MBA学生に国際体験を義務付けたMBAプログラムであった。GSBA 580(「ビジネスのグローバル的文脈」)という授業コードのもと、学生はある地域の文化・経済・政治的状況を事前に研究した上で、主要な国際都市への10日間の実地調査を行う。現地では国内外の企業や政府機関を訪問し、戦略的提言をまとめ、上級管理職に対して提言の発表を行う。訪問先は日本・中国・ブラジル・ペルー・東南アジア諸国などに及んでいる。2019年には、マーシャルのMBA学生が東京の物流SaaS企業Hacobuを訪問し、同社の米国市場参入戦略を研究してCEOに対して提言を発表した。これはPRIMEが実際のコンサルティングとして機能していることを示す好例である。

PRIMEに加え、マーシャルはグローバル教育のための幅広いプログラム体系を運用している。PM GLOBEはパートタイムMBA学生向けの必修科目であり、1週間の太平洋圏実地調査を含む。ExPORTはエグゼクティブMBA学生が上海または北京で実施する現地調査である。LInCは学部1年生を対象とした国際ビジネス研修であり、シドニー・イスタンブール・台湾などへの渡航が組み込まれている。これは米国初の学部段階ビジネス国際研修として設計されている。さらに2003年以降は、マーシャルはAPEC(アジア太平洋経済協力会議)のビジネス諮問委員会(ABAC)に対して調査研究を提供する世界唯一のビジネス・スクールという地位を確立している。


アメリカ初の起業家教育プログラム

ロイド・グライフ起業家研究センター(Lloyd Greif Center for Entrepreneurial Studies)は、USCが1972年に設立した、アメリカ国内で最初の完全統合型起業家教育プログラムを起源とする。1997〜1998年にLloyd Greif(MBA '79)の名と寄附を冠し、2022年11月に創設50周年を迎えた。同記念式典においてGarrett学部長はこう述べた。「USCがこのプログラムを立ち上げた1972年当時、世界はスティーブ・ジョブズもビル・ゲイツも知らなかった。起業家という言葉の意味すら知る者はほとんどいなかった。」この言葉は、マーシャルが全米のビジネス・スクールに先駆けて起業家教育を制度化した先見性を端的に示している。

グライフ・センターは現在、学部・大学院レベルで50以上の科目を提供している。具体的には、起業・イノベーション修士(MS in Entrepreneurship and Innovation)、社会的起業修士(MS in Social Entrepreneurship。ビジネス・スクールとして世界初のプログラムである)、そして学部課程の起業・イノベーション専攻分野が含まれる。新事業シード・コンペティションでは15万ドル以上の賞金が授与され、マーシャル・グライフ・インキュベーター(2015年創設)はオフィス提供・指導・法律支援・助成金によってこれまでに数百の新興企業を育成してきた。エンターテインメント・消費者向けインターネット・ファッション・クリーンテック等のLA各産業に着目した同センターの約100の教育ケースは、The Case Centreを通じて世界各国のビジネス・スクールで使用されている。


他校に類を見ない複合学位の制度設計

マーシャルの学際的プログラムはUSCの17の学部・学校の全域にわたっている。2022年に開設された映画芸術ビジネス理学士(BS in Business of Cinematic Arts:BCA)はUSC初の真の意味での複合学位であり、マーシャルと全米第1位の映画芸術学校(School of Cinematic Arts)を組み合わせたものである。学生はエンターテインメント契約の交渉・映画の広報・学生映画制作者との協働を行う。2023年に開設されたAIビジネス理学士(BS in Artificial Intelligence for Business:BUAI)は、USC Viterbi工学部との連携により、基幹ビジネス教育と機械学習・ロボット工学・AI倫理を組み合わせたものである。ワールド・バチェラー・イン・ビジネス(World Bachelor in Business:WBB)は学生を三大陸で学ばせ、ロサンゼルス・香港・ミラノの三機関すべての学位を取得させる。その他の複合学位として、不動産ファイナンス・開発(Sol Price公共政策大学院との連携、2024年創設)とビジネス・オブ・イノベーション(Iovine and Young Academyとの連携、2025年創設)がある。マーシャルの学部課程の学位はすべてSTEM指定を受けており、アメリカでの就労を希望する留学生にとって、任意実務研修(OPT)期間の延長という重要な優位性をもたらしている。


上海交通大学との経営幹部向けグローバルMBA(GEMBA)

2004年5月に創設されたグローバル・エグゼクティブMBA(GEMBA)は、マーシャルが海外で提供した初の学位プログラムである。国際認証をトリプルで取得している中国唯一のビジネス・スクール(AACSB・EQUIS・AMBA)である上海交通大学アンタイ経済管理学院との連携のもと、21ヶ月のプログラムは上海での10セッション、USCロサンゼルスキャンパスへの2回の渡航、アジアのいずれかの都市での5日間の集中研修から構成される。授業はロサンゼルスの本キャンパスと同一のUSCマーシャル教員が英語で担当する。受講生は太平洋圏16カ国以上からの多国籍企業・民間企業・公共機関の上級幹部、起業家、ファミリービジネスの後継者等であり、最低10年以上の職務経験が入学要件とされている。修了者にはロサンゼルスのUSCキャンパスの卒業生と同一のMBA学位が授与される。2025年3月、Garrett学部長は上海大学との新たな戦略的協力協定に調印した。「中国とアメリカの大学間の協力は、未来のリーダーを育成するという使命を担っている」と学部長は述べた。


その他の際立った構成要素

ブリッティンガム社会的企業研究所(Brittingham Social Enterprise Lab、2008年設立・2014年命名)は、ビジネス・スクールにおける社会的企業専門の研究機関として世界初のものである。ここでは社会的起業修士プログラムとWarren Bennis Scholars Programが運営されている。レベンタール会計大学院(1979年設立)は全米トップクラスの会計学プログラムとして高い評価を受けており、会計学修士プログラムはPublic Accounting Reportにて全米第5位に評価されている。同大学院はSECおよび財務報告協会(SEC and Financial Reporting Institute)の年次会議を42年にわたり主催している。体験学習センター(Experiential Learning Center)は、演習とワークショップを設計するプロの指導者を採用した全米初の学部段階応用学習プログラムとして設立され、現在はAIとVR技術を組み込んでいる。学生投資ファンド(Student Investment Fund)では選抜された16名の学生が年間約800万ドルというUSCの実際の基金(endowment)の運用責任を担う。

マーシャルはまた新興分野への積極的な拡充も続けている。VanEckデジタル資産イニシアティブ(ブロックチェーン・NFT・メタバース教育)、Zageビジネス・オブ・エネルギー・イニシアティブ(持続可能エネルギー)、Peter Arkleyリスク管理研究所(次世代リスク管理人材の育成)、そして倫理的リーダーシップのためのNeely Center(技術と倫理の交点に特化)がその代表例である。

 
「トロージャン・マフィア」:48万人の卒業生が互いのために闘う理由

USCマーシャルに関するいかなる論考も、この学校を他のすべての競合校から際立たせる現象、すなわちトロージャン・ファミリー卒業生ネットワークを理解することなしには完結しない。アメリカの高等教育において最も結束力が強く、商業的に最も活発であると広く評価されるこのネットワークは、生存卒業生48万人、そして経営・会計系の卒業生10万人以上を擁する。「トロージャン・マフィア」という呼称はUSC内部でも誇りをもって受け入れられている。


ネットワークの実際の作動機制

トロージャン・ネットワークは、その構造と文化において常春藤大学連盟(アイビー・リーグ)のネットワーク体系とは根本的に異なる。ハーバードやプリンストンのネットワークが階層的で威信を意識し、東海岸に地理的に集中する傾向にあるのに対し、USCのネットワークは互いに開かれた相互扶助の精神で機能している。USC卒業生ネットワーク担当副学長Patrick Auerbachはこう説明している。「トロージャン・ファミリーに入ると、誇りと帰属感を感じる。それは他の場所では感じられないことだ。」すべてのUSC卒業生は無料で終身会員としてUSC Alumni Associationに自動的に加入する。参加への経済的障壁は存在しない。


ネットワークが商業上の機能を公然と果たしていることは広く知られている。USCは「Trojans Hiring Trojans(トロージャンがトロージャンを採用する)」プログラムを運営し、卒業生同士の優先採用を奨励している。コンピュータ科学修士卒業生のJames Perngは公にこう語っている。「トロージャン・ファミリーの一員になると、仲間のトロージャンから優先的な扱いを受けることが多い。私は常にトロージャンを採用し、トロージャンとビジネスをしようとしているし、『USC Alumni』のステッカーを貼った車には渋滞でも優しくなってしまう。」あるMBA学生はこう証言している。「USC在学生であることを言及するだけで、そうでなければ困難あるいは不可能な多くの扉がすでに開いてきた。USCを引き合いに多くのCEOや経営幹部と面会できた。彼らは温かく私を迎えてくれた。」

このネットワークが際立って強固な背景には、いくつかの構造的な要因がある。USCはロサンゼルスにおける支配的な私立大学であり、この都市においてビジネスは学閥や機関の知名度よりも、人と人との繋がりによって動く。USCはアメリカのいかなる大学よりも多くの留学生を受け入れており、その多くはアジア・ラテンアメリカの裕福で人脈のある家庭の出身である。大学の強力なスポーツプログラムも共同体意識の形成に寄与している。トロージャンのアスリートはオリンピックで326個(金メダル153個)のメダルを獲得しており、これはアメリカのいかなる大学の実績も上回る。これが卒業年度の壁を超えた一体感と誇りを育んでいる。そして1972年以来の起業家精神重視の文化は、LinkedInにおいて起業を職業として登録する2万人以上の卒業生を生み出してきた。


産業分野別の影響力

トロージャン・ネットワークの影響力は特定の産業分野に根を張っている。
エンターテインメントとメディア分野においては、USCの優位性は他の追随を許さない。1927年にアカデミー・オブ・モーション・ピクチャー・アーツ・アンド・サイエンスとともに設立された映画芸術学校は、George Lucas・Ron Howard・Robert Zemeckis・Shonda Rhimes・Kevin Feigeらを輩出した。マーシャルの卒業生はビジネスとエンターテインメントの接点で活躍している。Kevin Tsujihara(BS '86年)はWarner Brothersを率い、マーシャルのMBA卒業生の13%がエンターテインメント・メディア業界に就職している。これはUCLAアンダーソン(6.5%)やNYUスターン(4.3%)の2倍以上の比率である。

技術分野においては、マーシャルの卒業生がデジタル時代を代表する企業のいくつかを創業あるいは共同創業している。Marc Benioff(BS '86年)は世界最大級の企業向けソフトウェア会社のひとつであるSalesforceを創業した。Brandon BeckとMarc Merillは2006年にLeague of Legendsを生み出したRiot Gamesを共同創業し、のちにテンセントに買収された。Sean RadはTinderを創業した。Chris DeWolfe(MBA '97年)はMySpaceを共同創業した。Brett CrosbyはUrchin Softwareを創業し、Googleに買収された後、Google Analyticsへと発展した。

財務分野においては、Ivan Glasenberg(MBA '83年)が世界最大級の商品取引企業のひとつであるGlencoreのCEOを務めた。Preston Martin(MBA '48年)は連邦準備制度理事会の副議長に就任した。Joe Ucuzoglu(レベンタール会計大学院卒業生)はDeloitteのグローバルCEOを務める。不動産分野においては、Bradley Wayne Hughes(BS '57年)がPublic Storageを創業し、Alan Casden(BS '68年)はCasden Propertiesをロサンゼルスの主要不動産開発会社に育て上げた。小売分野においては、Dan Bane(BS '69年)がTrader Joe'sの会長兼CEOを務め、Paul Orfalea(MBA '71年)がKinko'sを創業した。


アジアとのビジネス的接続

日本の大学で経営学を専攻する学生にとって特に重要なのは、トロージャン・ネットワークのアジアにおける影響力が着実に拡大を続けている点である。Yang Ho Cho(MBA '79年)は大韓航空と韓進グループを率いた。Ronnie Chan(MBA)は香港の恒隆集団と恒隆地産の会長を務める。Daniel Tsaiは台湾の富邦グループの会長を務める。Kevin AluwはインドネシアでGojek/GoToを共同創業した。Masagos Zulkifli(MBA '95年)はシンガポールの政府大臣を務める。IBEAR MBAの卒業生であるShiro Nabaは日本エアターミナル株式会社の上席常務取締役となり、このプログラムが4つの多国籍企業を率いる自らの能力の基盤になったと語っている。韓国ではUSC卒業生協会をOttogi(韓国を代表する食品企業のひとつ)会長のHam Young-joonが率いており、韓国語情報源はUSCが強泳勲元首相・1988年ソウルオリンピック組織委員会委員長・複数の韓国の大学の創設者を輩出したことを記録している。

このネットワークは世界各地に75以上の卒業生組織を維持しており、アジアには東京・北京・上海・香港・台北・ソウル・シンガポール・ジャカルタ・バンコク・ムンバイ・デリーの専門クラブが置かれている。 USC日本卒業生クラブは東京を拠点として(連絡先: Japan@alumni.usc.edu )アジア太平洋卒業生協会の一部として機能している。マーシャルはまた日本人を対象としたHonjo Foundation/Jack G. Lewis奨学金(IBEAR MBAプログラムの日系参加者向け)と、韓国人を対象とした韓進・大韓航空奨学金を提供している。

韓国語情報源はネットワークの商業的影響力についてとりわけ力強く語っている。韓国の知識情報プラットフォームNamu Wikiはこうつづっている。「LAでは、常春藤大学連盟の卒業生であってもUSCの卒業生の圧力で成功が難しいと言われるほど、USCの卒業生ネットワークの影響力はカリフォルニア州において広く知られており、カルテルまたはマフィアに例えられることがある。」同情報源は、マーシャルのネットワーク文化を「互いを引き上げ合う」文化として描写している。現在USCには約500名の韓国人学生が在籍し、韓国国際学生協会(1987年設立)によって支援されている。韓国系コミュニティのフォーラムは「LAダウンタウンの大手会計事務所には、管理職・部長職・役員がUSC卒業生で占められている」と報告している。

 
各種ランキングが示す特定分野における優位性

マーシャルのランキングは微妙な実態を物語っている。同校はMBAの上位7校(M7:ハーバード、スタンフォード、ウォートン、ブース、ケロッグ、コロンビア、MITスローン)には含まれないが、特定の分野においてはそれらの学校と競合し、一部では凌駕する。

直近の評価サイクルにおいて、USニューズはフルタイムMBAを第22位(2026年)、ブルームバーグ・ビジネスウィークは第20位、QSは第34位と評価している。フィナンシャル・タイムズの世界MBAランキングでは2025年に世界第50位(2024年の第33位から下落)であり、変動が見られる。しかしUTDトップ100ビジネス・スクール研究ランキングでは、24の権威ある主要経営学術誌への掲載論文数に基づき、マーシャルは世界第7位に位置しており、複数のM7校を上回っている。オンラインMBAはフィナンシャル・タイムズが全米第1位・世界第4位と評価している。学部課程のビジネス・プログラムはPoets & Quants(2025年)では全米第3位、USニューズでは第8位に評価されており、合格率は約9%であり、多くのM7 MBAプログラムより選抜率が高い。

専門分野別ランキングはマーシャルの際立った強みを示している。不動産は全米第7位(USニューズMBA)、コンサルティングは全米第3位(Fortune 2025年)、マーケティングは全米第3位・世界第16位(QS経営学修士マーケティング2026年)、財務は全米第1位(フィナンシャル・タイムズ財務修士)、サプライチェーン管理は世界第5位(QS 2026年)である。起業家教育プログラムは一貫して全米トップ5にランクされている。

直近のMBAクラス(2025年秋入学)について、平均GMATスコアは742(Focus Edition)、平均GPA 3.55、平均職務経験年数6年、留学生比率43%(35カ国から)である。2024年修了MBAクラスの報告では、平均基本給14万4,442ドル、平均サイニング・ボーナス(入社一時金)3万2,524ドルであり、就職先産業はコンサルティング28%・技術19%・金融サービス13%・エンターテインメント・メディア9%という構成である。主要採用企業にはMcKinsey・Bain・Deloitte・Amazon・Google・Microsoft・Disney・Warner Bros・Goldman Sachsが含まれる。

費用面での優位性として、マーシャルの2年間MBA総授業料は約15万2,000〜16万7,000ドルであり、M7プログラムの総費用(24万8,000〜27万5,000ドル)と比べて約10万ドル安い。また同校はM7校が原則として必要性に基づく支援のみを提供するのとは異なり、優秀な学生に対してより積極的に成績優秀者奨学金を提供している。

 
代替不可能な教室としてのロサンゼルス

マーシャルの立地は偶発的なものではなく、教育制度の観点から不可欠な役割を果たしている。USCはロサンゼルス市最大の民間雇用主であり、カリフォルニア州全体に年間80億ドルの経済的波及効果をもたらし、5万3,000人の雇用を支え、5億1,400万ドルの資本投資を行っている。大学はロサンゼルス都心部に位置し、西半球で最も多様とも言える大都市圏に隣接している。140以上の国籍、224の認識された言語、コリアタウン・リトル東京・歴史的フィリピノタウン・マリアチ広場に至る多様な文化的共同体が共存している。

ビジネスを学ぶ学生にとって、LAはどの単一都市にも勝る多様な産業への接点をもたらす。サン・ペドロ湾港湾複合施設(ロサンゼルス港とロング・ビーチ港)は西半球最大のコンテナ港湾であり、年間1,020万TEUを取り扱い、アメリカの全コンテナ海上貿易のおよそ31%を担っている。主要貿易相手国は中国・韓国・ベトナム・日本であり、マーシャルを太平洋圏ビジネス教育の自然な玄関口とする。サンタモニカからプラヤ・ビスタにわたるシリコン・ビーチにはGoogle・Amazon・Snap・TikTokをはじめ500以上の技術企業が集積している。LAは米国第3位・世界第4位の新興企業エコシステム(生態系)であり、過去10年間の四半期平均31億ドルのベンチャーキャピタル投資が集まる技術エコシステム(生態系)の中心に位置する。さらに、Disney・Warner Bros・Netflix・Sony・Universalのすべての主要映画・映像制作会社と大手芸能事務所が本社を置くエンターテインメント産業は、ボストン・シカゴ・ニューヨークのいかなる学校も得ることのできない教育的な財産である。

USCの情報科学研究所(Information Sciences Institute)は1972年にマリナ・デル・レイに設立され、ARPANETの構築に貢献した。文字通りUSCはシリコン・ビーチの技術的根源を生み出した機関である。大学は現在USC量子コンピューティング・センター(2011年に設置された大学運営の商用量子コンピュータとして世界初のもの)を運営しており、10億ドル以上の投資を伴うコンピューティングのフロンティア・イニシアティブの一環としてウェスト・LAにシリコン・ビーチ新キャンパスを建設中である。

太平洋圏ビジネスの中心に位置するという地理的優位性は、日本の主管省庁からも注目を集めた。経済産業省は2002年に起業家育成プログラムの対象校としてUSCマーシャルを選定し、日本の実務家をロサンゼルスに派遣している。日本語情報源は一貫して、マーシャルのハリウッドと起業家教育への接続を同校の際立った魅力として指摘している。
 

アメリカ最高峰のビジネス・スクールとの比較

マーシャルはアメリカのビジネス・スクール序列において独特の位置を占める。全体的な威信の頂点には立たないものの、特定の分野では他を圧倒し、全体的な競争力においても上昇を続けている。

地元の競合校UCLA Andersonに対しては、マーシャルは卒業生ネットワークの結束力(一般に強固であると認められている)、エンターテインメント就職率(13%対6.5%)、そして起業家教育の歴史において優位性を持つ。両校の授業料とGMAT平均スコアは同程度であり、Andersonがいくつかの総合MBAランキングでわずかに高いスコアを示すこともある。

Stanford GSB(全米第1〜3位)に対しては、ブランド威信・シリコンバレーのベンチャーキャピタルとの接続・初任給(18万ドル超対14万4,000ドル)においてマーシャルは競合できない。しかし総プログラム費用が約10万ドル安く、より結束力のある地域卒業生ネットワークを持ち、エンターテインメント産業への接続で優れている。

Harvard Business Schoolに対しては、マーシャルは根本的に異なる教育方法論を提供している。HBSがほぼ唯一の手法としてケース・メソッドに依拠するのに対し、マーシャルは講義・演習・コンサルティング・プロジェクト・国際現地調査という複合的手法を採用している。また少人数のクラス構成(約210名対HBSの930名)が深い仲間関係の形成を可能にする。

ウォートンとの比較は学部課程レベルにおいて最も興味深い。Poets & Quantsは2023年にマーシャルの学部課程プログラムを全米第1位と評価し、一時的にウォートンを上回った。ウォートンの学部長を経て着任したGarrett学部長のもとで、MBA入学者の平均GMATは742まで引き上げられており、これはいくつかのM7校と同水準である。研究成果においては、マーシャルのUTD世界第7位のランキングはトップ2〜3校を除くすべてのM7校と競合し得る水準にある。

学校自らの分析は競争優位性を次のように整理している。エンターテインメント・メディア分野における世界第1位のMBAプログラム(いかなるM7校もこの分野で匹敵しない)、アメリカ最古の起業家教育プログラム、いかなる東海岸校も模倣できない太平洋圏ビジネスへの玄関口という機能、そしてM7のMBAと比較して総費用が10〜12万5,000ドル安く、M7校が通常提供しない成績優秀者奨学金を伴うという経済的優位性がそれである。
 

日本語・中国語・韓国語・スペイン語情報源が明かすもの

多言語による調査は、英語情報源だけでは見えない重要な洞察をもたらす。
日本語情報源は、マーシャルが日本と深く関与していることを示している。PRIMEプログラムは東京の企業への実地コンサルティング訪問にMBA学生を派遣しており、2019年には物流企業Hacobuへの訪問が記録されている。経済産業省は2002年に同校の起業家教育プログラムを選定した。日本語の留学情報ブログ(35mba.themedia.jp)がMBA体験に関する継続的な情報を発信している。在米日本人向け情報誌「USライトハウス」は日本人マーシャル学生を特集し、「ビジネス・スクールにはアジア系留学生が特に多い」と記している。早稲田大学との交換留学協定が、さらなる日本の機関との接続を提供している。

中国語情報源は、上海交通大学とのGEMBAパートナーシップを画期的なものとして強調している。百度百科(Baidu Baike)はマーシャルを「米国西海岸で最もよく知られたビジネス・スクール」と記載し、中国の留学支援プラットフォームは中国の学部生がマーシャルの修士課程プログラムに出願するための専用選抜経路(MEAP:Master's Early Application Program)を紹介している。中国の知識共有プラットフォーム「知乎(Zhihu)」は、マーシャルの2020年フルタイムMBAクラスが女性比率52%を達成した点を特記している。これは全米トップ20校で初めての男女同率クラスの実現であった。

韓国語情報源はネットワークの商業的影響力について最も力強く語っている。知識情報プラットフォームNamu Wikiの記載はこうつづっている。「LAでは、常春藤大学連盟の卒業生であってもUSC卒業生の圧力で成功が難しいと言われるほど、USCの卒業生ネットワークの影響力はカリフォルニア州において広く知られており、カルテルまたはマフィアに例えられることがある。」同情報源は「互いを引き上げ合う」文化としてマーシャルのネットワーク文化を描写している。現在USCには約500名の韓国人学生が在籍し、韓国国際学生協会(1987年設立)によって支援されている。韓国系コミュニティのフォーラムは「LAダウンタウンの大手会計事務所には、管理職・部長職・役員がUSC卒業生で占められている」と報告している。

スペイン語情報源はマーシャルを「アジアとラテンアメリカへの玄関口」として位置づけており、同校はラテン系の支援体制を充実させている。大学院レベルのラテン系経営・ビジネス協会(LMBA)、創立50周年を迎えたUSCラテン系卒業生協会、そして事例競技大会・奨学金・指導制度を提供するALPFAチャプターがその具体例である。

 
卒業生が互いのために何をするかで定義される学校

USCマーシャルの競争上の優位性は、主として学術的威信にあるのではない。それはネットワークの濃密さ、実践重視の教育姿勢、そして代替不可能な地理的優位性にある。エンターテインメント産業の首都の内部に立地し、アジア貿易に向けたアメリカ最大の港湾複合施設に隣接し、四半期平均31億ドルのベンチャーキャピタル投資が集まる技術エコシステム(生態系)の中心に位置する。他のいかなるトップ・ビジネス・スクールも、このような組み合わせを再現することはできない。またトロージャン同士が互いを支え合うネットワークの結束力に匹敵するものも存在しない。同じトロージャンを積極的に採用し・出資し・指導し・昇進させる文化を、韓国人観察者がカルテルまたはマフィアに例え、学校自身がアイデンティティとして誇りをもって受け入れている。

日本の大学で経営学を専攻する学生にとって、三つの事実が最も重要である。

第一に、マーシャルの実践的カリキュラムは、ビジネスを「学んだ」のではなく「実際にやった」卒業生を輩出する。必修の国際コンサルティング・プロジェクト、学生による実際の800万ドルの基金運用、新興企業育成、世界第1位の映画学校との複合学位がそれを可能にする。

第二に、トロージャン・ネットワークのアジアにおける影響力は着実に拡大を続けている。東京・ソウル・上海・北京・香港・台北・シンガポール・ジャカルタ・バンコクの卒業生クラブ、日本人を対象とした奨学金制度、日本への積極的なPRIMEコンサルティング訪問、そして大韓航空・富邦グループ・Gojek・Ottogi・日本エアターミナルを率いる著名なアジア系卒業生がその証左である。

第三に、M7プログラムと比べて総費用が約10万ドル安く、STEM指定によりアメリカでの就労期間延長が可能というマーシャルが提供する実質的なメリットは、単純な威信ランキングが示す以上のものがある。

1997年に3,500万ドルでGordon Marshallの名を冠した学校は、1920年の設立理念が描いた姿に今まさになっている。知識を授けるだけでなく、「実際のビジネスに対する包括的な把握力」を身につけさせ、そして48万人のトロージャンが扉を開くために控えているという学校に。



いいなと思ったら応援しよう!