星降る夜のセレナーデ 第49話 意地悪
スタジオの整理が終わってテラスへ出てくると、先生はバーベキューの準備をしている。
「俺、椎茸とか家にある野菜を持ってきますよ」
「そう、それは嬉しいな」先生は何度も頷いた。
家へ戻ると椎茸や玉ねぎ、ピーマンなどを持って来る。美夜子さんへ渡すと「ありがとう、真人くんのおうちの野菜は美味しいから嬉しいわ」とにっこりと受け取ってくれた。
無事に火起こしが出来て、バーベキュー炉の上は肉やソーセージ、そして野菜や椎茸も良い香りを放ち出す。
先生は冷えた缶ビールを二つ持ってきてその一つを俺に渡してくれた。
「えっ、飲んで良いんですか?」
「運転しないなら良いんじゃない」美夜子さんが微笑んでいる。
「私たちはこれにしましょう」そう言って美夜子さんはメイプルサイダーを持って来た。
「「「「カンパーイ」」」」
テラスの上は心地よいパーティ会場となっている。
先生は厚めの肉をほうばるとビールをグッと飲んだ。「美味しいねえ!!」
「とーたんはお酒が飲めれば何でも美味しいんでしょう」志音ちゃんが横目で見ながら笑っている。
「まあここの所パパも頑張ってるから許してあげましょう」美夜子さんは優しく微笑んでいる。
その言葉を聞いた先生はすかさず「もう一杯いただきま〜す」そう言って缶ビールを二つ持って来た。
「ありがとうございます」俺は頭をピコっと下げて受け取った。
志音ちゃんがピーマンを睨みながらパクっと食べた。「ピーマンも焼くと美味しいかも」何度も頷く。
俺はさっき畑で話したことを思い出して、思わず飲んでいたビールを噴き出してしまった。
志音ちゃんは顔を赤くすると頬を膨らした。
「モヒくんが意地悪だ!、意地悪だ!」
「どうしたの志音?」美夜子さんが不思議そうに覗き込む。
「だって…………………」志音ちゃんは項垂れた。
「ごめんね志音ちゃん」俺は笑いを堪えて謝った。
「うううう………………」
「さっき畑で志音ちゃんがピーマンは嫌いだと言ってたので、子供のうちは苦いと毒だと感じるけど、大人になったら美味しさがわかるよって言ってたんですよ」
「そうなの」美夜子さんもクスクスと笑いだす。
「ママまで笑うの?」志音ちゃんはさらに頬を膨らす。
「志音、どうしたんだい?」先生は不思議そうにした。
「パパは嫌い!」志音ちゃんは俯いた。
「志音ちゃん、そんなに急いで大人にならなくてもいいじゃないか、子供のうちに出来ることをたくさん楽しんだ方がいいよ、喘息で楽しめなかった事もたくさん今のうちに楽しんでおきなよ、嫌でも大人になってしまう時が来るんだから」俺は志音ちゃん頭を優しく撫でる。
「そうなの?」志音ちゃんは不安そうに俺を見上げた。
「志音ちゃん、真人くんの言う通りよ、焦る必要なんて無いわ。きっと真人くんは見ててくれるわよ」
「本当に見ててくれるの?」志音ちゃんは切なそうに俺を見つめた。
俺はにっこりと頷く。
志音ちゃんは機嫌が治って美味しそうにソーセージを食べた。
夕方になってフクロウの鳴き声が聞こえる。
「モヒくん、フクロウがいるの?」
「ああ、あの山に住んでるんだ」俺は指差す。
「そうなんだ、見たいなあ」
「俺もたまにしか見たことなんだよねえ」
「そうなんだ」
志音ちゃんの横顔を見ながら、美夜子さんが言った言葉を思い出す。
そして志音ちゃんが私を守ってくれるヒーローだと言ってた事も思い出す。
俺はこの家族との縁を大切にしていかなければと心から思った。
