星降る夜のセレナーデ 第122話 笑顔
アイランドへ来ていつものようにローストビーフを頼んだ。
ローストビーフが運ばれてくると、それを写真に撮る。
そして志音ちゃんへ送った。
「真人、最近すっかり有名人だなあ」マスターがニッコリしている。
「大したことないです」俺は少し首を横に振った。
食べ始めると奈津美がやって来た。顔を見ると怒りが込み上げてくる。
志音ちゃんを傷つけた行動に腹が立った。
「あら、元気……………最近どうなの?……………」
その言葉に俺の怒りはピークに達した。
「何言ってるのか解らないなあ」俺は睨む。
「お前の、元気?最近どうなの?は、恐らく、一人で寂しそうね、あの子がいないと悲しそうよ、どうせそんな意味合いだろうさ。俺の話す元気?は体調は大丈夫ですか?そして最近どう?は仕事や家庭などお変わりはありませんか?そういう意味だ!同じ日本人で秩父に生まれ同じ言葉を話しても、全く意味が通じない。だから今後一切話しかけて来るな!」俺は吐き捨てるように言った。
「何よ!同じようなもんじゃない!」
「奈津美ちゃん、やめなよ」マスターが嗜めてくれた。
マスターは拭いていたナイフを奈津美に見せる。
「俺たちにはナイフはこう見えてる」横にして形がわかるように見せた。「でも真人にはこう見えているんじゃないかなあ」そう言って鋭い切り口を奈津美に見せた。
「同じものを見ても、同じ意識にはならないこともある、鋭い方を見ている真人の方が辛いのかもしれないよ」マスターは優しそうに俺を見ている。
奈津美は両手で顔を押さえると震えながら店から出て行った。
「マスター…………すみません……………」俺は頭を下げる。
「いいさ、真人は真人の道を進めばいい、大変だろうけど、誰もが進める道じゃないからね」
「ありがとうマスター……………今日は全部食べれないや………………」
「いいよ、また皆んなで来てくれよ」マスターは優しく微笑んでくれた。
俺はアイランドを後にして家へとたどり着く。
その夜志音ちゃんへメールした。
『今日は嫌なことがあったので、志音ちゃんの笑顔が欲しいです』
優しく微笑んだ志音ちゃんの画像が送られて来る。
涙がポトリと落ちた。
