星降る夜のセレナーデ 第56話 失敗!
カフェへ入るとコーヒーを注文して、席に座った、少し冷たい空気が流れる。
「あのう…………一体何でしょうか?」俺は不思議になって聞いてみる。
「実はこの前秩父に行った時、白河先生に曲を作って頂けないかとお願いしたんです」
「そうなんですか……………」
「でも、私がいる事務所と先生はあまり関わりたくないらしくて………だから真人さんに作って頂くなら良いと言う事なんです。勿論先生が手伝ってくれると言う事なので……」真美さんは少し俯く。
「前にも言いましたが、俺はまだ曲を作れるようなレベルではないんです」少し不機嫌になった。
「そうですか………でも先生が協力していただけるなら大丈夫ではないんですか」切なそうに俺を見つめている。
俺は直ぐに帰りたくなったが、先生に何か考えがあるのでは無いかと思い、返事に困った。
「先生と優さんは前に私がいる事務所に所属されてたんです、でも社長と何か問題があって事務所を辞められたそうなんです」
「優さんって?」俺は聞きなれない名前に首を傾げる。
真美さんは少し驚いた。
「そうですか、何も聞かれて無いんですね」彼女の視線は俺から離れ、壁の絵へ向けられる。
「俺、全く話が見えないんで帰って先生に聞いてみます」
真美さんはコクリと頷いて「よろしくお願いします」そう言った。
俺はカフェを出ると止めてあったバイクに乗り走り出す。バックミラーには真美さんの切なそうな表情が見えている。俺は何か割り切れない気持ちでバイクを加速させた。
秩父に帰りログハウスへ辿り着いたので「ただいま帰りました」と先生に挨拶する。
「お疲れ様でした」美夜子さんがニッコリ迎えてくれた。
ヘルメットを見た先生は「えっ、バイクで行ったの?」驚いている。
「はい、天気が良かったのでバイクで行きました」
「そうなんだ…………」先生は残念そうな顔をしている。
「あなた、策略は失敗したみたいね」少し笑った。
「先生、出版社に真美さんが待ってましたけど?」
「真美ちゃんが相談があるって言ってたからさ」とぼけた表情だ。
「俺、曲を作るなんてまだ無理ですから」少し不機嫌な表情になってしまった。
「だからさあ…………いい曲を書けるようになるために…………」先生は言いかけて残りの言葉を飲み込んだ。
「パパ、真人くんはパパとは違うのよ!」少し強い口調だ。
「はいはい、解りましたよ」先生は諦めたようにため息を漏らす。
そこへ志音ちゃんが帰って来た。
「モヒくん、今日はバイクで行ったのね」駐車場のバイクを見たようでニッコリした。
「志音の勝ちね」美夜子さんが笑った。
「パパ、モヒくんに夜のお店の女の人を紹介したらダメだって言ったでしょう」先生を睨んでいる。
「志音までパパの事を怒るんだ」先生は寂しそうな表情だ。
「当分の間パパですからね」志音ちゃんは横目でさらに睨んでいる。
俺は家に帰ると『優さん』の名前が気になった。誰なんだろう?先生と関係がありそうだけど……………しかし先生のプライベートにはあまり関わらない方がいいと思った。
