星降る夜のセレナーデ 第53話 デジダル効果
翌日からスタジオでは新しいコンピュータによる録音が始まる。俺は直ぐに操作が出来るようになった。
DVDの音楽は最終に近づいている。次はピアノの音を録音する事になった。
「先生、8小節目から音を出します」
テープと違って思った小説から直ぐに始められるのでとても便利だ。
「了解!」
先生はエレクトリックピアノを弾いている。
「ちょっと間違えたなあ」眉を寄せ唇を噛んだ。
「大丈夫です、MIDIの方で修正できますから」俺はモニターの画面を切り替えて即座に修正する。
「はい、できました」そう言って再生した。
先生は確認して、OKを出した。
「便利だねえ、間違えても簡単に修正出来るなんて」不思議そうにモニター画面を見ている。
「音も後で変えられるんで、気に入らなかったら言ってください」
「そうなんだよね…………エレピの音をもう少し柔らかな音にしようかな」
「はい、この音源だといかがですか?」俺は内蔵されている音源からピアノの音を選んだ。
「良いねえ、それで決定しよう」
「了解です」俺はデータを消さないようにセーブした。
「テープを巻き戻す時間もいらないし、間違えても修正出来るから何度も弾かなくていいし、随分作業が楽になったなあ」
「そうですね、これで曲を作るペースが上がりますね」俺は先生を見てニッコリした。
「ただ…………真人くんがいないと何も出来なくなっちゃったよ」
「まずいですか?」俺は少し不安になって聞いてみる。
「いや、真人くんがいてくれたら何も問題ないさ」先生は笑った。
俺は頼りにされている気がして少し嬉しくなる。
しかし弊害も出て来た。音をミックスする時に上手く混ざらない。
「先生、これまではそれぞれ楽器の音を分離させるのが難しかったんですけど、デジタルだと分離しすぎて上手く混ざらないですね」
「そうだなあ、デジタルだと粒だちがハッキリしすぎて上手く馴染まないなあ」
「何か方法がないか小池さんに聞いてみます」
「そうだね、そうしてくれると助かるなあ」
二人は休憩にリビングへ出て来る。
「あら、もう休憩なの、早いわねえ」美夜子さんが驚いた。
「そうなんだよ、もう一曲出来上がったんだ」
「そう、とっても早くなったのね」
「ただ………真人くんがいないと何も出来なくなってしまったよ」先生は笑っている。
「そうなの、じゃあ真人くん、給料を上げてもらえるんじゃないの?」チラッと横目で見た。
「そんな事ないです、まだ俺は見習いですから」慌てて手を横に振る。
「そうだねえ、そろそろ昇給しなきゃいけないねえ」先生は頷いた。
「真人くん、10分程ゆっくりしてから来てくれないか」
「はい、いいですけど?」俺は不思議そうに頷く。
コーヒーを飲んでしばらくすると、先生は先にスタジオへ入った。
「多分パパは次の曲のアイデアを考えるんだと思うの、少しほっといてあげてね」美夜子さんは優しく微笑んだ。
俺は作業が早くなれば良いと思っていたが、やはり余裕も必要なんだと思った。
※MIDIは音楽の演奏情報を伝達する統一規格です。
