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短編小説|甘いのがいい

 真夜中のこと。コンビニに行こうと自宅マンションを出たら、ジョボジョボと放水しているような音がする。あたりを見回すと1人の男が目に止まった。そいつはマンション周りの植栽に向かって豪快に立ちションをしている。

 これが違う場所ならスルーしていたが、流石に自宅前でされるのを黙って見てはいられない。キツめの口調で注意したら、彼はぽかんとした表情。

「ああ、これはオシッコじゃないよ」

 酔っ払いの戯言かと思うも、確かに彼はズボンのチャックを下ろしていない。よく見れば、人差し指の先から水が飛び出している。

「指と爪の間から水が出るのさ。管理組合に雇われて、植栽に水やりをしてんのよ」

 手を股間の前におき、指を立てて放水しているからややこしい。非礼を詫びた後、なんとなく彼が水やりをするのを眺めていたら、フルーティーな香りが漂ってきた。

「柔軟剤を変えたからかなあ。ちょっと飲んでみるかい」

 ちょうど飲み物を買いに行こうと思っていた私は、ありがたく頂戴することにした。彼の前でしゃがみ込むと、開いた口に目がけて放水してくれる。

 まるで砂糖水みたいに濃厚な甘さ。むせてしまって飲み込めないのに、彼は構わず私に向かって放水を続ける。

「ほらほら、いっぱい飲んで大きくなれよ」

 全身びしょ濡れになっても止めてくれないので、苛立ちを覚えた私は彼の人差し指を掴み、強く握った。すると水は止まるも、彼の頭がどんどん膨らんでいく。

「いやいや、離して。離してくれよ。あっ」

 大きな破裂音と共に、彼の頭は吹き飛んでしまった。辺り一面に水が飛び散り、フルーティーな香りがさらに広がる。首から下は直立したままで微動だにしない。

 結局、喉の渇きを潤せなかった私はそのままコンビニに向かうことにした。甘いものが飲みたくて、何年か振りにいちごミルクを買った。

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