
【社員インタビュー】f4samurai社員がゲームの力で防災研究へ。論文が国際会議CollabTech 2026に採択
新規タイトルのゲーム開発と新規事業を担当するディレクター・中村は、ゲーム開発と並行して防災士の資格を取得し、防災研究を続けてきました。
このたび、その成果をまとめた論文が専門家による査読を通過し、ドイツで開催される国際会議CollabTech 2026にフルペーパーとして採択されました。
ゲームづくりで培ってきた経験を、ゲーム以外の領域にも広げられないか。その問いから始まった活動が、大学の研究者の方々との共同研究につながっていくまでのストーリーを聞きました。
▼中村の記事はこちら
「防災意識を高めるために、ボードゲームは有効」を実証

―論文の査読通過と、ドイツでの国際会議での発表採択、おめでとうございます。あらためて、今回の活動について教えてください。
ありがとうございます。私はf4samuraiでの仕事と並行して、防災研究を行う学術研究会に所属しています。その研究会の先生方と連名で、「防災意識を高めるために、ボードゲームは有効な手法である」ということを実証する研究を行いました。
ハザードマップを使ったボードゲームを遊んでもらって、防災意識がどれくらい変わったかを測る研究で、それを論文にまとめました。サンプル数がまだ十分ではないので「初期評価」という位置づけです。
論文は専門家による査読(審査)を通過し、2026年9月22日から25日にドイツで開催される国際会議CollabTech 2026で発表されることになりました。
▼CollabTechとは
協働技術やヒューマン・コンピュータ・インタラクションなどを扱う、30年以上の歴史を持つ技術系の国際会議です。専門家による査読があり、採択された論文はSpringerの学術論文集にも収録されます。
今回採択されたのは、短い発表原稿ではなく、完成した研究成果として審査される「フルペーパー」です。大学や研究機関を本務としない会社員が、研究者と共同で取り組んだ研究が採択されました。
―いきなり国際会議に投稿されたわけではないそうですね。
はい。研究内容をより精度の高い論文にまとめるため、事前に情報処理学会の中の比較的小規模な研究発表の場で、査読付き論文を一度通しています。そこで論文の構成や研究としての整理の仕方、査読への対応も経験しました。
最初からCollabTechへの採択だけを狙って準備していたわけではないのですが、論文の完成度を高めるために、その時点でできることを一つずつ積み重ねてきました。その経験や改善が、結果として今回のフルペーパー採択につながったのだと思います。
また、研究者には「ORCID」という世界共通の識別IDがあります。今回を機に研究者識別子「ORCID」を取得し、所属先として株式会社f4samuraiを登録しました。
ゲームづくりの経験を、ゲーム以外の領域にも広げられないか

―普段はスマホゲームの開発をされていますが、なぜ「防災ゲーム」の研究を始めようと思ったのですか?
40代の頃、社長の金さんとの会話をきっかけに、これまでのゲーム開発の経験を活かして、別の形でも会社や社会に還元したいと考えるようになりました。
30年近くゲームを作ってきて、面白いゲームをどう作るかということばかり一生懸命勉強してきた人間なので、その力を、既存のゲーム市場とは違う領域にも広げられないだろうかと。
それに僕はこれまで、新規事業や学校での講師活動といった、主力タイトルの外側の仕事も多くやってきました。そこで得たものを生かせる場所を探していた、という面もあります。
▼新規事業チームの仕事についてはこちら
防災士とゲームクリエイター、二つの経験を生かす

それで考えたんです。トレンドに左右されにくくて、長くニーズがあって、これまでのゲーム開発の経験がそのまま生きる領域はどこだろう、と。
たどり着いた答えが「防災」でした。
毎年のように地震や台風に見舞われる日本には、防災の知見が地域ごとに蓄積されています。そして防災は、地元のコミュニティと一緒に取り組む必要があって、地域ごとに事情もまったく違う。だからこそ、実際に地域へ入っていく活動そのものに価値があると考えました。
30年近いゲーム開発の経験と、地域に入って行う防災活動。この二つを組み合わせた「防災士クリエイター」という立ち位置なら、これまでの経験を別の形で生かせるんじゃないかと思って。そこから防災士の資格を取って、町内会の防災活動に参加するようになりました。
あとは講師活動を通じて学校の先生とお話しする機会が多かったので、そのご縁で研究会のグループを紹介していただき、所属することになりました。
―防災というテーマは、多くの人に届けられるプロダクトだと思います。一方で、収益の面ではどうですか?
そこは悩んでいるところです。防災と聞くと行政のイメージが強いと思いますし、サービスとして収益を上げるのが難しい領域ではあります。
なので今後は、実証実験やワークショップなどの実績を積んでいって、いずれは教育機関や教育系の企業、防災が必要な施設の運営企業と提携できたらと考えています。
ゲームであれば、SteamやApp Storeといった確立された販路があるので、マーケティングをすれば広げられます。でも防災には、その販路がまだないんですよね。
だからサービスを急いで作るよりも、実証を続けて、まず影響力のある方々に認知してもらう。パートナー企業と組むのは、そのあとだと考えています。実証を積み重ね、防災教育や地域活動の中で、まず相談していただける存在を目指しています。
実際にいま、大型施設を運営する企業から「防災エンタメを作りたいので、アドバイザーになってもらえないか」というご相談をいただいています。研究を社会実装につなげて、いずれは新規事業の一つとして育てられたらと思っています。
研究者の知見と、ゲーム開発の経験を組み合わせる

―今回一緒に研究開発をした方々とは、どういう関係なんですか?
きっかけは、岸本好弘さんです。ゲームクリエイターとして『ファミスタ』などを手掛けたあと、研究・教育の分野に進まれて、現在は「ゲーミフィケーションデザイナーLv99」として、ゲーム体験や遊びの要素を教育や社会の体験設計に生かすことを提唱・実践されています。
僕にとっては、ゲームづくりと今の活動の両面で師匠のような存在で、岸本さんの導きで日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)に入りました。
DiGRA JAPAN 日本デジタルゲーム学会 - 日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)は日本国内におけるデジタルゲーム研究の発展及び普及啓蒙を目指し設立された学会です
学会の中にはたくさんの分科会があります。そのなかに「ゲームの力で防災に貢献できないか」と考えているグループがあって、そこに入れてもらいました。6人くらいのチームで、僕以外は大学の先生方です。
今回の防災ボードゲームとは別件で、日本大学の古市先生や、東京国際工科専門職大学の小野先生と僕の3人で、フィールドワークショップの実証実験をやったこともあります。
地図に防災上必要な場所を登録するアプリを作って、参加者のみなさんに街を歩きながらマッピングしてもらい、最後に発表してもらう。一番防災力が上がった人を表彰する、というものです。

―2〜3日間のゲームジャム(※)でプロトタイプを作ったそうですね。普段のゲーム開発の経験やスキルが活きたと感じる部分はありましたか?
※ゲームジャムとは、ゲーム開発者やプログラマ、デザイナーなどが集まり、決められた「短時間(一般的に48時間から72時間ほど)」と「お題(テーマ)」に沿って、ゼロからゲームを作り上げるイベントのことです。
先生方が持っている防災や研究の知見と、僕が持っているゲーム設計の経験。この二つが組み合わさったことが今回のチームの強みだったと思っています。
たとえばゲームジャムでは、先生方から「要支援者の中には、一人の支援だけでは避難できず、複数の人が協力しないと助けられない人もいる」という、実際の防災や共助における課題を提示していただきました。
それを僕が「複数のプレイヤーが協力することで、要支援者を助けられる」というゲームシステムに落とし込んでいく。先生方からは、ほかにもたくさんのアイデアや要望が飛んできて、それを2時間くらいでゲームの仕組みにまとめていきました。
「どうやったらゲームは面白くなるんだろう」「これをやって気持ちいい瞬間は何だろう」ということを普段からずっと考えているので、そこがそのまま活きた形です。
ボードゲームは、紙や駒を使って短期間で試作と検証を重ねられます。完成したゲームは、地元のご年配の方々にもプレイしてもらえました。
▼関連リリース
―研究を進めるうえで、社内のチームや環境に助けられたことは?
社内のメンバーには本当に助けられました。プロトタイプを会社のボードゲーム部に持っていって、意見を聞かせてもらったんです。ゲーム開発のプロたちから具体的なフィードバックをもらえたことで、自信が持てただけでなく、ゲームとしてのクオリティも実際に上がりました。世界に向けて発表する後押しにもなったので、協力してくれたみなさんには感謝しています。
あとは、f4samuraiに所属していることで受けられた恩恵も大きかったです。新しいことを始めるときって、新規のご挨拶や営業が多いんですね。そのときに、個人か企業所属かで受け入れられ方が全然違う。会社の信用や環境があったからこそ、外部の企業や研究者の方々にも話を聞いていただけて、活動を広げられました。
―国際会議への採択を聞いたときは、どんなお気持ちでしたか?
実は最初、その国際会議のことをよく知らなかったんです。日本語の論文のうちゲームに関する部分を僕が書いて、先生方から「英訳して出すね」と言われて、お任せしていました。
そこから「ドイツに行くかも」という話になり、「研究者IDを作ってください」と言われて。そのとき「どこの所属か」を書く必要がありました。「学校に所属していないなら会社でもいいよ」と言われて、社長の金さんに許可を取り、「f4samurai所属の研究者」ということになりました。
そのあたりから、じわじわと「もしかして、大変なことになったのか?」と実感がわいてきました。
ドイツでの発表は共同研究の先生方が行ってくださるので、僕は行かないのですが(笑)。
9月には展示イベントへ。コマは木工で手作り中

―今後の展望を教えてください。
新規事業部として収益につなげることを目指しています。
防災ボードゲームで大切なのは、遊んだあとに、その内容について地域住民のみなさんでお話しする時間を持つことなんです。なので、その時間まで含めて自治体などに提供する、研修のような形はいずれ作りたいと思っています。
直近では、9月にボードゲームを使った教育・研修に関するプロダクト / サービスを「見る」「体験する」「商談する」ための総合イベント「Play&Learn」に出展します。
いま、そのためのコマを木工で手作りして、作り直しています。今朝も出社前に3個作ってきましたよ(笑)。

以前はオセロのようなコマを家に見立てて、ひっくり返して赤が付いていたら要支援者がいる、という表現だったのですが、それだと手触りがなくて。木で家を作って、人のコマを中に入れて、というのを試しています。
これが大量生産なら発注もできると思いますが、今はプロトタイプなので。「本当にこの形でいいのか?」を確かめるために、手で作っています。
f4samuraiへの想い

―最後に、f4samuraiでこの事業を育てていくことへの想いを教えてください。
シンプルに会社が好きだから、というのが大きいです。僕に居場所を与えてくれているので、その恩に報いたい。
チームや会社に多くの機会をもらってきたので、これまで培ったものを新しい形で会社に還元していきたいです。
―ありがとうございました!
▼f4samurai Recruitサイト
最新の募集状況については、当社のRecruitサイトをご確認ください!
▼ f4samuraiについて
▼関連記事