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GPUかASICか、ジェンセンの答えは第3の道にあった ── NVIDIAとIntelの提携が導くディスアグリゲーテッドコンピューティング時代の幕開け

2025年9月9日、サンタクララのAI Infrastructure Summitで、NVIDIAが発表した新型チップ「Rubin CPX」に市場は困惑していた。

NVIDIA Rubin CPX

投資家が期待していたのは、競合を圧倒する最新鋭のフラッグシップGPUだった。しかし、NVIDIAが披露したRubin CPXは、明らかに「格下げ」されたチップだった。高価なHBM4メモリの代わりに安価なGDDR7を採用。HBM4を採用し、最大20.5TB/秒に達するNVIDIAの最新R200 GPUと比較して、わずか2TB/秒程度のメモリ帯域。さらにGPU間を高速接続するNVLinkも削除。まるで10年前の設計に逆戻りしたかのような仕様に、株式市場も動揺を見せた。

さらにNVIDIAはカンファレンスにおいて、「Rubin CPXを採用することで1億ドルの投資で50億ドルの収益を実現できる」という前代未聞の数字を提示したのだ。NVIDIAの主張を聞いて、多くの投資家は眉をひそめた。「1億ドルの投資で50億ドルの収益」など、あまりにも非現実的に聞こえるからだ。

その9日後の2025年9月18日、半導体業界に激震が走った。

なんと、NVIDIAとIntel Corporationが、データセンターおよびPC市場向けの戦略的パートナーシップを発表したのだ。NVIDIAはIntelに50億ドルを出資し、両社は複数世代にわたるカスタムプロダクトを共同開発するという。

市場の反応はまちまちで、両社のシナジー効果を歓迎するポジティブな声もあれば、Intelの救済のためだ、、トランプ政権の圧力だといったネガティブな憶測も飛び交った。しかし、NVIDIAを十数年以上ずっと追ってきている私は「ついに来たか!」と大興奮していた。Rubin CPXとIntelとの提携、この2つの発表は、AI推論需要獲得競争の中で高まるASICの脅威論に対するJensen Huang CEOの「完璧な回答」であり、これでJensenが描く真のディスアグリゲーテッドコンピューティングの構築に必要なパズルのピースが揃ったからだ。

本稿では、なぜこの2つの発表がASICの脅威論に対する「完璧な回答」なのか、そしてこの提携がNVIDIAの長期的な支配力をどう強化し、いかにディスアグリゲーテッドコンピューティングの未来に繋がるのかを、技術的・経済的観点から徹底的に分析する。今後のAI半導体戦争の行方が気になっている方には、ぜひ最後までお読みいただきたい。


見えざる90%の無駄 ── AI推論が抱える根本的矛盾

現在、MicrosoftやGoogle、Metaといった巨大テック企業は、年間数兆円規模でAIインフラに投資している。彼らが購入する最新GPU「B200世代」は、1台あたり3万ドルを超える高額な製品だ。

しかし、驚くべき事実がある。

これらの最先端GPUの性能のうち、実に90%以上が使われていない瞬間が存在するのだ。

なぜこれほどの非効率が生じるのか。その答えは、AIの「思考プロセス」に潜む根本的な矛盾にある。

ChatGPTに質問を投げかけた瞬間を想像してほしい。AIはまず、あなたの質問を理解し、膨大な知識の中から関連する情報を瞬時に検索・整理する。これがプレフィルフェーズ、つまりコンテキスト処理だ。その後、整理された情報を基に、一文字ずつ丁寧に回答を生成していく。これがデコードフェーズ、つまり生成処理である。

この2つのプロセスは、まるで異なる惑星の住人のように、全く異なるコンピュータ資源を必要とする。

プレフィルフェーズでは、大量の並列計算が必要となり、全体の計算量の70-80%を占める。しかし、メモリ帯域幅の使用率は極めて低く、10%以下に過ぎない。まるで広大な図書館で本を探すような作業だ。

一方、デコードフェーズでは計算量は全体の20-30%と少ないが、超高速メモリアクセスが必須で、帯域幅の90%以上を使用する。一文字ずつ丁寧に文章を紡ぐ、繊細な作業である。

従来のGPUは、この両方を1つのチップで処理しようとしていた。それは、F1レーシングカーで買い物に行き、大型トラックでサーキットを走るようなものだ。どちらの用途にも最適化されていない。

この矛盾に最初に気づいたのは、皮肉にもNVIDIAの顧客たちだった。

Googleは、上記の処理効率性を高めるため、独自のTPU(Tensor Processing Unit)の開発に年間100億ドル以上を投資。独自のAIインフラ構築を加速させている。

Metaも負けていない。2026年までに100万個以上の独自チップ「MTIA(Meta Training and Inference Accelerator)」を投入する計画を発表。Mark ZuckerbergはMeta Connectで「我々は自身のAI運命をコントロールする必要がある」と宣言した。

OpenAIもまた、コードネーム「Titan」と呼ばれる独自チップの開発に着手。Sam AltmanはMicrosoftとの協業を維持しながらも、Broadcomと独自のハードウェア戦略を推し進めているとされる。

彼らはなぜ、NVIDIAという優れたパートナーがいるにもかかわらず、莫大な開発費を投じて独自チップに走るのか。

答えは明白だ。効率性の追求

しかし、これらのASIC(Application Specific Integrated Circuit)には致命的な限界がある。それは「アグリゲーテッド」、つまり固定的で分離不可能な構造だということだ。一度設計が固まれば、その用途以外には使えない。技術の進化や新たなユースケースへの対応が困難になる。

重要なのは、AIアルゴリズムの変化への対応力だ。

現在の生成AIはTransformerアルゴリズムに基づいているが、これがいつまで続くかは誰にも分からない。より効率的なアルゴリズムが登場すれば、必要な計算リソースの比率も変わる。GPU中心からメモリ中心へ、あるいは全く新しいプロセッサへ。量子プロセッサに劇的な進歩がある可能性もある。

アグリゲーテッドシステムでは、こうした変化に対応できない。数千億円の投資が一瞬で陳腐化するリスクがある。しかし、ディスアグリゲーテッドシステムなら、必要な部分だけをアップグレードすればよい。投資の保護と将来への適応性、両方を実現できる。

NVIDIAのJensen Huangは、この状況を冷静に見つめていた。そして、顧客の動きから学び、さらにその先を見据えていた。


格下げGPUの真実 ── 意図的な性能制限に隠された天才的発想

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