ChatGPTに「この株は買い?」と聞いた瞬間、あなたはすでに負けている | 投資におけるAIとの対話、その温度と論理の設計図
株価が急落した朝、あなたはこうしていないだろうか。
ChatGPTを開く。
「◯◯株を持っていますが、売るべきでしょうか?」と打ち込む。
AIは丁寧に答える。
バリュエーションの高さ、循環投資への懸念、過去の株価の動きとの類似。整理された箇条書き。客観的に見える。
(やっぱり、危ないんだ!)
そう思って、売る。
2週間後、株価は元に戻っている。
いや、上がっている。
底で売っていた。。。
逆もある。
突如、株価が暴騰した。
「◯◯株は、まだ上がりますか?買っても大丈夫ですか?」と聞く。
AIは成長シナリオを語る。
市場規模、導入率、技術的優位性。これも客観的に見える。
(やっぱり、まだいける!)
そう思って、買い増す。
天井だった。。。
あなたが見ていたのは、分析ではない。「鏡」だ。

不安を投げれば、不安の根拠が返ってくる。強気を投げれば、強気の根拠が返ってくる。AIは、あなたの感情を映して増幅する装置になりうる。

本稿では、この「鏡の罠」から抜け出し、AIを投資の道具として使いこなす方法を書く。12年間NVIDIAを握り続け、幾度の暴落でも狼狽売りを避けてきた具体的な手順と、私が実際に使っているAIへの指示文と手法を公開する。
4月7日、狼狽売りを避けた瞬間
2025年4月7日、私は画面の前で固まっていた。
トランプ大統領が4月2日に発表した「Liberation Day」関税、中国の報復関税、そして週末を挟んで加速した世界同時株安。S&P 500は2日間で10.5%下落し、1950年以来5番目の急落を記録していた。NASDAQは年初来で23%のマイナス。私が数億円のポジションを持つNVIDIAは、4月3日と4日の2日間だけで14%以上下落していた。
そして迎えた月曜日。ダウは史上最大の日中スイング幅を記録し、売買高は18年ぶりの水準に達した。
場中、NVIDIAは87ドル台まで叩き売られた。
1月につけた最高値153ドルから、わずか3ヶ月で43%の下落。私のポートフォリオの評価額は、散々な数字になっていた。

含み益が溶けていく。いや、溶けるどころではない。このまま持ち続けていいのか。指が震えていた。
(ああ、私、怖いんだな…)
この一言を心の中でつぶやいた瞬間、指は売りボタンから離れた。

私は狼狽売りをしなかった。
そして、次の日から、ゆっくりと段階的にNVIDIAを含め、いくつかの銘柄の買いのポジションを逆に構築し始めた。
4月9日、関税の一部停止が発表されてS&P 500が9.5%反発し、その後、NVIDIAの株価は10月に最高値を更新した。
観測という発見: 量子力学から学んだ感情制御法
5年前、私は一つの方法を身につけた。
名前をつけるならば「自己観測モード」だ。

量子力学に観測者効果という概念がある。粒子の状態は観測されるまで確定せず、観測という行為自体が状態を変える。感情も似ている。恐怖や怒りのような強い感情が湧いたとき、その感情に飲み込まれている間は、感情が際限なく膨らむ。
しかし、次のように気づいた瞬間に、流れが変わる。
(あ、今、心の中に恐怖がある)
感情は消えない。ただ、飲み込まれなくなる。観測という行為が、感情の暴走を止める。
やり方はシンプルだ。相場を見ながら、意識の10%から20%を「自分の観測」に割く。残りの80%から90%で相場を見る。100%を相場に使わない。常に一部を、自分の内部状態のモニタリングに回す。
(今の値動きに私、興奮してるな)
(あれ、焦りが出てきたかな)
(うーんこれ、買いたい気持ち強すぎる)

こうやって、自分の感情をリアルタイムで観測し続ける。分析しない。理由も掘らない。ただ、そこにあると認識するだけで十分だ。
ポイントは、気づくまでの時間にある。
普通は、感情が暴走してから10分後に気づく。その頃には、売りや買いのボタンを押してしまっている。狼狽売りやFOMOによる高値掴みは、たいてい「気づきの遅れ」から始まる。観測モードを維持していると、感情が動き始めた瞬間に気づける。10分後ではなく、10秒後に検知できる。この差は大きい。
2020年のコロナショック、2022年の利上げ局面、2025年4月のトランプ関税ショック。どれも、この方法のおかげで狼狽売りを避けられた。
5年間、この方法は機能し続けた。自分の感情を観測し、暴走を止める。それで十分だった。
しかし2025年末、私は違う種類の問題に直面している。
2025年、生成AIという鏡が映し始めたもの
「AIバブル崩壊は既定路線」
「忍び寄るAIバブル崩壊リスク」
「AIバブルの破裂は近い」
「AI銘柄には手を出すべきではない」
2025年10月頃から、こうした見出しの記事が急増した。日経新聞は「OpenAI、NVIDIAと200兆円『循環投資』 ITバブル型錬金術に危うさ」と報じた。Bloombergは「AIバブル、破裂の引き金はいつ何が引く-疑心暗鬼のウォール街」と煽る。
「2000年のITバブルと酷似」
「収益力がないのに時価総額だけ膨らむ」
「いつ弾けるか誰にも分からない」
Xやnoteを開けば、これらの記事を引用した「AIバブル崩壊」をテーマにした考察が溢れた。しかも、その多くが生成AIで書かれた形跡を持つ。似たような構成、似たような論点、似たような結論。恐怖を煽る見出しが、損失回避の本能を刺激し、PVを稼ぐ。読んだ人がさらに恐怖を感じ、AIに聞き、AIが恐怖を肯定する文章を生成し、また拡散される。
これが「まったく違う問題」の正体だ。
5年前に身につけた観測モードは、自分の内側を見る技術だった。しかし今、感情を揺さぶる情報が外からも大量に来る。しかも、その情報に含まれる感情がAIによって増幅されている。
なぜAIは感情を増幅してしまうのか。
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