『最強』のAIが3日で消えた|モデルが"部品"になる時代、AI投資はどこへ動くか
最強を名乗ったばかりのAIが、公開からたった3日で、世界中から消えた。
2026年6月12日、Anthropicが、出したばかりの最上位モデルFable 5とMythos 5を、世界中で止めた。米政府の輸出管理上の指示だった。ジェイルブレイクの手口が見つかった、外国人のアクセスを止めろ、という命令に、同日中に応じる方法が、全面停止しかなかった。公開から、わずか3日後のことだ。

2026年6月のこの2週間は、AI業界にとって怒涛の2週間だった。順番に、振り返りたい。
始まりは、6月1日の台北だった。COMPUTEXに合わせて開かれたNVIDIA GTC Taipeiで、Jensen Huanがいつもの黒い革ジャンで壇上に立ち、こう言った。
私たちはPCを再発明する。
スクリーンに映ったのはRTX Sparkという新しいチップ。バッテリー駆動のノートPCの上で、700億パラメータのモデルが毎秒40トークンを吐きながら、同時にリアルタイムで動画を解析し、コードを書いていく。会場がどよめいた。
その翌日、6月2日。今度はサンフランシスコで、Satya NadellaがMicrosoft Build 2026の壇上に立った。テーマは、奇妙なほどNVIDIAと揃っていた。エージェント。Windowsを、AIエージェントが動くプラットフォームに作り変える、と。
6月8日。AppleがWWDCで答えた。延期に延期を重ねたSiriを、ようやくステージで見せた。ただ、その答え方は、私が予想していたものとは少し違っていた。この話については後で詳しく書く。
ここまでが、最初の一週間。3社の王者が、順番にキーノートを打った週だ。そして週が変わると、今度はモデルそのものが揺れ始めた。冒頭に書いた通りFable 5が、3日で消え、中国からはオープンモデルとして GLM-5.2 が出て、Microsoftはコストの観点から自社のAIの頭脳の一部をオープンモデルであるDeepSeekに替える検討に入った。
この2週間で、ハードの王者も、OSの王者も、消費者デバイスの王者も、口を揃えて同じことを言った。
オンデバイスAIエージェント。PCの再発明。オープンモデル。コスト。
その一方で、肝心のモデルのほうは、最強のものですら一晩で消えるほど、危ういものになっていた。

スペックの話も、どのモデルが最強かの話も、いったん脇に置く。私がこの2週間でいちばん引っかかったのは、もっと地味で、でも投資には決定的なことだ。
価値は、いちばん目立つ場所には無いんじゃないか、という引っかかりだ。
ジェンセンは、チップの絵の隣に一枚の絵を並べた。そこに書いてあったのはGPUでもCUDAコア数でもなく、OS、の一文字だった。
ハードの発表会のはずだった。なのに彼は、チップと同じ重さでOSを「PC再発明の中心」に据えた。
(なんで、NVIDIAのプレゼンでOSの話をあれだけ長くするのか…)
本記事では、私のこの小さな違和感から引いた糸を、順番にたどっていく。NVIDIA、Apple、Google、そしてMicrosoft。4社の投資ストーリーが、まるで違う顔で見えてくる。そして、その後に加速した Fable 5 の提供停止を伴うソブリンAIナラティブ…。怒涛の6月のAI界隈の動きを総括し、「で、結局どこに投資するのか」を紐解いていきたい。では早速、降りていこう。
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