カール・ポランニー「機能的社会主義と社会主義の計算問題」
提供された資料は、カール・ポランニーによる「社会主義の計算問題」に関する論考であり、特にルードヴィヒ・フォン・ミーゼス教授とフェリックス・バイル博士による批判に対する反論をまとめたものです。
1. 「積極的な社会主義経済理論」の提唱
ポランニーは、従来の「市場経済か、市場のない指令経済か」という二項対立に対し、**「機能的社会理論(機能的ギルド社会主義)」**に基づく第3の立場(積極的な社会主義理論)を提示します。この理論は、生産の最大効率の追求と、分配および生産の社会的な方向に対する社会的な支配(社会的構成の支配)の両立を目指すものです。
2. ミーゼスの「最終決定権」論への反論
ミーゼスは、共同体(コミュン)と生産者団体(ギルド)という2つの権力主体が存在する場合、最終的な決定権がどちらか一方に帰属しなければ社会は存続できないと主張しました(一方が勝てば集権的指令経済になり、他方が勝てばサンジカリズムになると批判)。 これに対しポランニーは、以下の論理で反論しています。
「承認関係」による合意: 社会体制には「力関係(支配従属)」だけでなく「社会的承認関係」の側面があります。決定権が一つに集中せずとも、複数の主体が**「合意の義務」**を負うことで、紛争を解決し社会を維持することは十分に可能です。
個人の内部での均衡: 同一の人間が生産者としての側面と消費者としての側面の両方を持ち合わせています。社会におけるギルドとコミュンの対立は、実は個人内部にある二重の動機の対立を社会化したものであり、個人が自分の中で要求のバランスを取るのと同様に、社会組織間でも機能的な均衡点を見出すことができます。
3. 価格形成と費用の概念
ポランニーは、経済の「自然的費用」と「社会的費用」を区別し、これらを動的な依存関係として捉えています。
協定価格: バイル博士が誤解したような単なる固定価格の変種ではなく、機能的に組織された社会の枠内で、合意によって規定される価格システムを想定しています。
費用の移行: 社会的干渉によって生じる「社会的費用」が、時間の経過とともに社会の一般的な生産条件(自然的費用)へと移行していく過程を、経済の動的な計算の中に組み込むべきだと説いています。
結論
ポランニーの主張の核心は、社会主義経済を単なる「集権的な指令」としてではなく、**「多層的な機能的組織間の合意と均衡」**のプロセスとして再構築することにあります。彼は、ミーゼスらが前提とした「決定権は単一でなければならない」というドグマを、機能主義の観点から批判し、より柔軟な社会主義の可能性を模索しました。
