アスベスト飛散防止マニュアル④
「特定粉じん排出等作業」とは何か?(対象工事の定義)
まず、どんな工事が「大防法」の規制に引っかかるのかを明確にします。
定義: アスベストが0.1%を超えて含まれる建材(特定建築材料)が使われている「建築物」や「工作物」を、解体・改造・補修する作業のこと。
対象範囲: 昔は「一定規模以上のビル」など制限がありましたが、今は**「規模や種類は一切関係なし」**です。
戸建てでも、小さな倉庫でも、アスベスト建材を壊すならすべて対象になります。
現場の判断に迷う「グレーゾーン」の考え方
サンプリング(分析調査のための採取):
単にカッターで少し切り取って検査に出すだけであれば、建物の「解体・補修」には当たらないため、特定粉じん排出等作業には該当しません(届出不要)。
ただし、飛散させない配慮は当然必要です点検で「一時的に外す」場合:
配管の点検等で、保温材をそっと外してまた戻すだけなら、該当しません。「石綿のない部分」を切る場合:
配管の曲がり角(エルボ)にだけアスベスト保温材が巻いてあり、アスベストを触らずに前後の直管部分だけを切断して「配管ごと撤去」する場合。
これも原則として該当しません。
ただし、振動で保温材から粉がこぼれ落ちるような劣化状態ならアウト(対象工事)になります。
絶対に守るべき「5つの共通ルール」(施行規則第16条の4)
アスベスト建材(レベル1〜3すべて)を扱う工事(特定工事)を行う場合、元請業者(または自主施工者)は、以下の5つの義務を負います。
作業計画の作成: 作業開始「前」に、誰が・いつ・どこを・どうやって除去するかを書面(計画書)にすること。
掲示板の設置: 公衆(近隣住民など)から見やすい場所に、A3サイズ以上の掲示板を設置すること。
※必須記載事項:発注者・元請名、工期、アスベスト建材の種類と場所、作業方法など作業の記録と保存: 現場での作業状況(負圧の確認、清掃状況など)を記録し、工事完了まで保存すること(写真・動画が有効)。
元請による確認: 下請け業者がちゃんと計画通りに(安全に)作業しているか、元請業者が記録をもとに確認すること。
完了後の「有資格者」による確認: 除去作業が終わった後(または隔離シートを解く前)に、必要な知識を有する者(※建築物石綿含有建材調査者など)に、本当に取り残しがないか「目視」で確認させること。
現場で一番トラブルになるのが「掲示板の出し忘れ・記載漏れ」と、「隔離解除前の目視確認の記録(写真)がない」ことです。
役所の立ち入り検査では真っ先にここを見られます。
建材レベル別「作業基準(やり方)」のルール
ここからは、建材のヤバさ(レベル1〜3)に応じた、具体的な「除去のやり方」のルールです。(別表第7)
【レベル1・2(激ヤバ)】吹付け石綿・石綿含有断熱材等の除去
一番厳重なルールです。以下の「フル装備」の対策が求められます。
完全隔離と前室の設置:
作業場をプラスチックシートで完全に密閉し、出入り口に「前室(着替えや除染をする部屋)」を作ること。負圧とHEPAフィルタ:
集じん・排気装置を使い、作業場の中を「負圧(外より気圧を低くして空気が外に漏れない状態)」に保つこと。排気は必ず超高性能なHEPAフィルタを通すこと。毎日の点検:
毎日、作業の開始前と中断時に「ちゃんと負圧になっているか?」「排気口から粉じんが漏れていないか?」を機器でチェックすること湿潤化: 水や飛散防止剤を撒いて、アスベストを常に濡らした状態(ホコリが舞わない状態)で取ること。
解除前の厳重確認: 除去後、飛散防止剤を撒いて清掃し、「もう絶対にアスベストが外に出ない」と確認してからシート(隔離)を解くこと。
【レベル3(要注意)】石綿含有成形板等(スレート屋根など)の除去
カチカチに固まっているので隔離までは不要ですが、ルールがあります。
原則「そのまま外す(手ばらし)」:
ハンマーで叩き割ったり、グラインダーで切ったりしてはいけません。ネジを抜いて、原形のままそっと外すのが大原則です。湿潤化(割るしかない場合):
どうしても原形のまま外せず、割ったり切ったりする場合は、必ず水をかけて「湿潤化」すること。
さらに、粉塵が出やすい建材(けい酸カルシウム板第1種など)を切る場合は、周辺の「養生(シート保護)」も必要になります。
【レベル3(塗装類)】石綿を含有する仕上塗材の除去
外壁の塗装などを剥がす場合のルールです。
湿潤化:
水や剥離剤で濡らして剥がすこと。グラインダーを使う場合
電動工具(グラインダーなど)で削り落とす場合は、粉塵が激しく舞うため、周辺の「事前養生」と「湿潤化」の両方が必須になります。
現場管理者のための「まとめ」
大気汚染防止法の作業基準は、「レベル1・2は隔離して負圧!」「レベル3は割らずに原形で手ばらし!」が基本戦略です。
そして何より、「計画書を作ったか」「看板を出したか」「作業中の写真を撮ったか」「最後に取り残しがないか有資格者が確認したか」というプロセスの記録が、元請の責任として重くのしかかることを忘れないでください。
