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【創作大賞感想】 「妻に煽られ、女子大生に刺され、美容部員に救われる」ヤスシさん

※この物語はフィクションです。

「妻に煽られ、女子大生に刺され、美容部員に救われる」のエッセイに触発されて書いた二次創作感想となっております。
ただし、ヤスシさんの作品に対する感想は作者の本心をベースに考えているものだということを、ここに記しておきます。



「ねぇ、サインペンの予備なかったっけ?」

リビングにいるはずの夫へ聞きに行こうとしたら、夫はそこにいなかった。

探し回ると、洗面台で鏡を見ながら顔を横にして百面相をしている。

正確には、頬の外側やこめかみの辺りの乾燥を鏡を見ながらチェックしているようだった。

私はインク切れのサインペンを持ったまま、洗面台をそっと立ち去った。

……見てはいけないものを見てしまった。

結婚して十何年、夫は自分の髪の毛は気にしても肌や日焼けなんて気にしない人だったのに。

確かにエアコンの風に当たると乾燥が気になる。
けれど、夫は私が美容導入液からいくつもの基礎化粧品をつけていると「何故そんなに必要なんだ」と言いたげな顔でこっちを見ていたのに。

……浮気?

そんな、連続ドラマみたいな展開が浮かんだけれど私はすぐにそれを頭から追い払って新しいサインペンを探すことにした──


俺は鏡を求めて洗面所へ向かった。

読み終わった後、つい、自分の顔を鏡で見たくなる。そんな記事。

鏡に映るのは思ってた以上に、年齢より年上に見える顔。

……疲れた顔してるな。

若く見えるでもなく、イケオジになるでもなく、雑に見えない。

ふと、あの人気記事の心に刺さった部分が蘇る。

自分は若い頃はそんなにモテていない。正直、同じ男として彼の「モテた」と言い切れる自信が少し妬ましい。

そんな人物でも何もしていないと“キツい”と言われる。

モテていない自分はどれだけ現在“キツい”のだろうかと、想像するだけでへこむ。

しかし、ノリよく女子大生と話せるのは、彼の職場環境なのだろうけれど……
そこにもやはり、昔のモテていた自信の蓄積があるようで妬ましい。

が、それを上回る勢いで現在の行動力が凄くて素直に話を聞く気になってしまう。

なぜ、ボディーソープで顔を洗っている人間がいきなり美容部員と会話しようと思うんだ。
そして出来るんだ。

認めたくはないが、モテるとは行動力なのだろうか……

流石に、四十も過ぎて今さら女性にモテようとは思っていない。

いないが『好意は持たれたほうがいい』は、それはそうと納得している。

寝癖もそのままに仕事へ向かう日もあったが、大抵そういう時は事務員受けが良くない。

今から思うと、後から「あの人寝癖のまんまよね」などと噂話のネタにされていたんだろうか。

……いや、自分なんかが、そんなネタにもならないか。なんせ、迷彩柄のように周りに溶け込み「あれ?川原さんは?」などと言われることも多々あるのだ。

迷彩、といえば。
最近の妻も、私のことが見えないかのような生活になっている気がしている。
お互いが空気のような生活。というより、私はこの家の背景になっていやしないだろうか。

仕様変更

浮かぶあの記事。

少しばかり、この記事をこれから先の自分の仕様変更の為の仕様書にしようと感じている自分を自覚する。

なにせ読者を納得という名の椅子に座らせるのが上手いから、ふとした瞬間に彼の文章が浮かぶのだ。

……百貨店は、自分の地域には通える場所にはないので、ドラッグストアへ寄ってみることにした──


「その……最近、顔の乾燥が気になって。ドラッグストアに行ったんだけど、何を買えばいいのかさっぱりで。何がいい?」

夫からのその珍しい白旗の言葉を聞いて、まぁ、浮気の線はなくなったかと安堵した自分を自覚した。

ただ、不審ではある。
私はその不審感を隠さずに聞いた。

「なんでまた急にそんな事言い出したの?そもそも顔は洗ってるの?洗ってない?まず洗顔料できちんと洗ってから化粧品をつけないと、お肌に浸透しないよ」

しまった。不審感とアドバイスがごっちゃになって言ってしまった。
一番夫が嫌がるパターンだ。ひょっとしたら拗ねるかも……

「やっぱり、ちゃんと洗顔料使った方がいいんだね」

ん?
なに?その反応?素直過ぎない?

え?やっぱりなんか怪しくない?

いつもの夫の様子にうっすらと浮かぶ違和感。
まるで迷彩のように些細な違いのようで違わない色合いをしている。

「誰かに、何か言われたの?まさか、この年齢でモテたいとか言い出すんじゃないよね?」

違和感が気持ち悪くて、つい棘のある言い方になってしまった。
そこまで言って、はじめて夫は私の不審感に見当がついたようで、慌ててスマホの画面を私に見せた。

「この人の、WEB記事……note、って、いうらしいんだけど。これが流れてきてさ。俺らと同じくらいの年齢で、ある時美容に目覚める話。すごいんだよ。ボディーソープで顔を洗っているような人が、一念発起して美容部員のいる場所へ一人でアドバイスを受けに行くの」

夫からスマホを受け取り、読んでみると面白い。

しかしこの美容部員さん、プロ中のプロだ。凄い。
ボディーソープで顔を洗ってるって聞いたら、私だったら「え!?」って声に出しちゃってるだろう。

そもそもその前の

「ええと……こう……全体的に……“おっさん”が出てまして」

この部分で私はアウトになる。
“笑ってはいけないシリーズ”だと一発目は堪えたものの、二発目の仕掛けでアウトだ。


に、しても……
最後まで、文章を読むと、これは……

「面白いね、この人。……ねぇ。やっぱり、モテたいとか、思ってたり、する?」

夫にもう少し意地悪く聞こうとしたが、失敗して私が照れてしまった。

……私に、モテたいとか思ってくれてるなら、今までの私のコスパと肌質解析のノウハウを伝授しようと、週末デートの予定をたてるのだった──



《今週の三題噺》
1.インク切れのサインペン
2.迷彩
3.連続ドラマ

#木曜日は3ースデイ


私、波 香月の企画「二次創作感想」へご参加くださり、ありがとうございました✨


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