【かき氷シリーズ】初めてのクリスマスをもう一度
生まれてから一度も、一緒に過ごさないクリスマスはなかった。
あの感染症の流行の時期ですら、プレゼント交換会だけだったけれどクリスマスパーティーをしたのだ。
今年も、大学入試共通テストが控えているとはいえ、私達の家族はクリスマスパーティーをすることになった。
「美也、透也くんに渡すプレゼントは決めた?」
雑貨屋をぐるぐる周っている私に、お母さんが聞いてくる。
透也が家に来て改めて私の両親に挨拶をした後、
『あなたたちのことだし、受験も将来も疎かにしないとは思ってるよ』と言ったお母さんが、初めて大人の女の人に見えた。
いつもは、趣味に仕事にと忙しい人で、それはそれで尊敬はしているけど、親じゃなくて人生の先輩だと思ったのは初めてだった。
「……これ、かなぁ……ちょっと、高いかな?」
店内を周りながら私が持っているのは、ジーンズ生地と合皮の切替がかっこいい財布。
正直、一ヶ月分のお小遣いギリギリ位で苦しいのだけれど、でも、透也のこれからの生活に私も混ぜて欲しいと願いを込めたかった。
私は、共通テストが待っているけれど。
透也は、推薦で既に進路が確定している。
そして、私と透也の志望大学はそれぞれ別の県だった。
離れたくない。けど、自分の夢も追っていたい。
お母さんの言葉が、日に日に大切で難しい事だと実感していく。
悪い、風邪ひいた
「え?…………」
パーティーがこの週末に近づいてきた週の真ん中。塾が終わってスマホを見ると、パーティーの中止の知らせが届いていた。
正確に言うと、透也からの「風邪ひいた」というLINEなのだけれど。
お互いの家族の間で、誰かが風邪をひいたらパーティーは中止すると約束をしていたのだ。
……透也のばか。
と、パーティーが出来ないことが悲しかった。
そして、透也の体調を一番に心配しなかった私が、少しだけ嫌になった。
熱は?
遅くまでゲームせずに、おとなしく
寝ときなね。
返したLINEも、少しトゲトゲしているように感じて、スマホを鞄にしまって見ないようにして家に帰った。
共通テストを控えている私の為に考えてくれた優しさなのに、私が一番さみしい。
でも。
私のために、私の親だけじゃなくて、透也も、おばさんたちも考えてくれたのだから。
と、勉強に打ち込むことにした。
その後熱が上がった透也は、インフルエンザと診断されていた。
そして、クリスマスイブ。
やっぱりさみしいな。という気持ちで、親と3人でクリスマスケーキを食べて、お風呂に入って。
まだ辛いかもしれないけど、せめて、LINEだけでもと
メリークリスマス🎄
辛いだろうし、返信はいらないよ
と送信して寝ようとした時だった。
今話せる?
私がLINEを見たとほぼ同時に電話がきて、私は慌てて、声も整えてないのに電話に出てしまった。
「も、もしもし……大丈夫なの?話せる?」
「パーティー……できなくてごめん、な」
透也の話しにくそうな声が聞こえると、抑えていた感情があふれ出す。
泣き声で、ぐちゃぐちゃな頭のまま、しばらく話していた。
お互いの、親から離れる漠然とした不安や、本当に今決めた道で良いのかという不安を語り合い。
けれど、私達は来年のクリスマスもこうして話していられるのだろうか。という不安は口に出せなかった。
今の、この距離以上に離れることができるのだろうか。
「来年のクリスマス、デートしよう」
『好きだ』と言ってくれた時と同じ真剣さで約束してくれた透也の声に、人生で初めての不安だらけのこの冬も、こうやって一緒に越えていけるのかもしれない。
と、初めて強く思った夜だった。
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