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『ニセモノドリア』の味わい方

創作大賞2025、ホラー小説部門にエントリーしている『ニセモノドリア』(三條凛花さん作)の感想です。

感想を書いている私は、大学時代に授業でホラー映画のレポートを書かされたり(苦手なのに)、ちょっと妖怪が好きだったり、ちょっと陰陽師ものや妖術系が好きなエンタメオタクです。

『ニセモノドリア』はTalesでの投稿エントリーです。リンクはコチラ

堂々と作品の中核への感想も綴っていくので、読んでない方は『ニセモノドリア』を読まれてからお願いします。
本編 全7話、35,072字です。





各章での人物像や物語の感想

1.崇

自分の思いつきで買った総菜を、自分の思いつきで簡単に捨てる。衝動で買ったのに気に入らないと食べない、別の物を食べたいという欲が出るとあっさりと捨てる。
ここの行動に崇の自分勝手さを感じる。

自分の後ろにいる女に気づいた時の表現。

はくはくと声にならない言葉が漏れた

1.崇 より抜粋

《ぱ》ではない事で力強く声を出せない様子、そして声どころか呼吸もままならないのではないかという様子がうかがい知れる。



2.梓

烏の表現が、1度話を最後まで読んだ者ならわくわくする(?)伏線。
「あぁ、そういう意味だったのか」
と納得してにやにやする(多分私だけ)

梓の周りの描写で、梓は自覚がない事が分かり、自覚がないのが怖ろしさを助長している。

祖母の記憶が蘇った時の“梓”と“私”の表記の差。
これも繰り返し読んでいると差が明確に分かって楽しい。



3.山田

見えてしまったが為に、危なかった千景を知っているが故に、つい、言ってしまった嘘。
【つい言ってしまった嘘】
つい言ってしまった事と、終ぞ言えなかった事。
その複雑な絡み合いが彼を帰れなくしてしまったんだろうか。。。

ここでわかる、崇にべっとりと絡みついている女についての私見。
『1.崇』で“別れた女”と表記された正体は梓だったが、離婚届は出したの?崇の性格は、素直に判を押すのかな?
千景へのミスリード狙いなのかなと思ったり、この話は元々1話予定だった経緯も知っているから(後述します)そこまで気にするほどの事でもないのかもしれないけど…



4.真喜

“違和感”どころではなくハッキリと違いを見せられているのだから、それを受け入れて我が子とするのは無理があるのだろう。
この話では真喜の苦悩に肩入れしながら読んでしまう。


梓はどうにもあの男に”執着”しているように見えた。

4.真喜 より抜粋

ある意味我が子だからではないからこそ育った、梓への観察眼も鋭い。

「亡くなった二人の男性」の描写に容赦なく山田の行く先がわかる。



5.千景

普通のあまり良くない恋愛話が始まってホッとする。
と思いきや確かにこれはホラー小説だったと思い出させる後半。

特集記事を組んでいる位だから、あの日会ったのは梓だと分かっている?

だとしたら、この特集記事は千景なりの気持ちの整理の付け方なのかもしれない。



6.羽白

決して怒りに呑まれてはいけないと。きつくきつく言われていた。

だから、死の間ぎわ、わたしは自らのこころを縛った。

6.羽白 より抜粋

怒りや悲しみといった種類の心を縛ったのかな。
縛っているのなら羽白の内にはある感情。

負の感情を手放すのか縛るのか

その違いの描写の解釈を突き詰めていくのも面白いかも。


しゃりりと鏡に罅が入る。

6.羽白 より抜粋

劣化した物に細かい罅が入った時の音にピッタリ。凛花さんの擬音の表現が好き。


見覚えのある者がいる。
 でもきっと、ニセモノ。

6.羽白 より抜粋

崇に四郎の面影がある事が、羽白の目から見てもそうだと分かる。面影がある事の証明は、梓の崇への執着の理由の答えになる。


ととさまが言っていた、禁忌の術じゃないの。

鬼は、やはり元々羽黒が使う禁術だった。
羽黒が自身を忘れてしまったから、使っている状態ではなく、憑いているモノみたいになった?
それとも使いすぎて別モノになっているから独立しているように見える?


“梓”が梓の元に戻り、羽黒と羽白もおさまる所へ収まりそうで。最後へと話がまとまっていくのだと読んでいた。

愛莉の言葉で思い知る、梓が子供の頃から羽黒と入れ替わっていたのだという事実。

羽黒が器に入るときは器の記憶は引き継ぐけど、器の魂が器に戻っても何も引き継ぐ事がないという事実。

・何も知らない梓
・真喜と愛莉の共通認識
「愛莉は羽黒の(以前のママの)子供であって梓の(今のママの)子供ではない」

真喜、梓、愛莉は家族になれない予感がする。

現在進行系で育児をしている私が何故こんな残酷な予想を立てられるかは謎だけど。
それは作者も同じで、創作をしている私も身に覚えがあるから褒め言葉だと受け取ってほしい。

これは無理矢理に大団円になんて出来ない。

とても悲しいよ。でも、他の可能性は難しい。



終章.愛莉

「愛莉ちゃん!!!!」

そんな言葉しか出てこない。
羽白は、羽黒の代わりに見ていてくれたりしないだろうか。
楓は、連絡がなくても陰で見守ってくれていないだろうか。

とても悲しいのは、それでも、ハッピーエンドを望んでいるから。

愛莉は自らハッピーエンドに変えていく道を選んだ。

強い子の先が、幸せで溢れますように。



『ニセモノドリア』の味わい方

なんてシャレたタイトルを銘打ちましたが

この話はnoteでのとある企画発祥の物語です。


その経緯と、両方読んでいるからこその加筆の妙の感想を書いていきたいと思います。

はじまりは
ヤス(ウエダヤスシ)さんのコチラの企画からでした。

私も参加しているので、私のマイルールで自分の分を投稿しないと他の人は見ないようにしています。
だから、三條凛花さんが全6話を書き終えてから読み始めました。

『ニセモノドリア』1話でのコメントから、全6話、ひいてはTalesでの創作大賞への応募へ繋がっていったようです。


note版とTales版(本稿)を読んで


『3.山田』の山田が千景に憑いている羽白が見えている部分。
確かに羽白がこの場面で見えていないと、山田が“みえている”辻褄が合わなくて信憑性がなくなるのよね。
ここは私気付いてなくて、読んでいて「確かにここの補足あった方がいい!」って唸った部分だった。

『5.千景』の特集記事
正直、ここの時系列が気になる。この特集記事の前後の千景の子供は幼いままっぽい。

千景が手に入れた参考資料は、真喜から?
手記などは登喜、花子が真喜の祖母なのは名前から推察できるけど、入手時期、原稿を書いている時期は?

Tales版加筆章『7.愛莉』
Talesを読む時、エピソードタイトルも、何話あるかも見ずに読んでいたんですね。

このタイトルを見た時に
「愛莉ちゃん!」
と叫ぶと同時に既に泣きそうになっていました。

「愛莉ちゃんの物語を読むのは覚悟がいる」
大げさだけど、腹を括る時間が必要でした。


その他の部分も、note版では「こういう事だろう」と脳内補足していた部分も書き足され、Tales版で更に読み応えのあるストーリーになっていました。

note版はnote版で、全6話を一週間の期間で書いているのも狂気の沙汰なんですけどね。なぜこの話を書き出せたのか、三條凛花さんの現在の取り組みの凄さの下地を感じます。


最後に

『ニセモノ』という言葉がキーワードの話。
誰かがニセモノと思うものも、誰かには本物。
誰かには本物と信じているものも、誰かにはニセモノ。
ニセモノでもいいと思う事も、ニセモノが許せないと思う事も人の業。

とても美味しいニセモノドリアでした。


#創作大賞感想
#創作大賞2025


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