介護士歴20年のプロでも利用者がめんどくさい話
わたしの職業は介護士。
主な仕事内容は嘘をつくことだ。
認知症。
高次脳機能障害。
統合失調症。
etc……
一般的な日常生活を送っているだけでは、絶対に出会えない妄想や幻覚・妄想が老人ホームや介護施設では繰り広げられている。
ある意味嘘だらけで、本当のことがひとつもない現場。
どんな嘘をついてやろうか気合いを入れるあたり、ちょっとフツーじゃない。
昨日書いた記事から引用するけど、こんな感じの嘘をついて仕事をしている。

施設で暮らすのは、まあまあ安全だ。
絶対ではないよ!(残念ながら)
迷子にならないように所在を確認される。
お薬を飲み忘れないように、一括管理される。
食事を食べ忘れや、暴飲暴食ができないように3食管理される。
転ばないように配慮されていて、もしも転んだらすぐ病院に連れて行く。
トイレを失敗したらすぐにパンツや服を取り替える。
清潔を保持するために、本人が望まなくてもお風呂に必ず入る。
家族としては、もちろん家族が困っていたり、苦しんでいるのは嫌だ。
そして、自分たちにも仕事や生活があって、24時間の介護は現実的ではない。
だから、介護保険制度があって、介護施設があって、介護士がいる。
しかも実費の何割かの負担で介護を受け続けられる。
これはいいことだと思う。
問題はたくさんあるけど、日本ってほんとに、社会保障が手厚い国だ。
安心して暮らせる最低限の保証があるってすごいことだよね。
わたしもその一端に介護福祉士として関われるのは、誇りだと感じるときもある。
利用者の安全と安心と快適を守るためにわたしたちはいる。
(正直快適かは自信ないけど……)
でも待って。
利用者の安全のために嘘をつき続けるのが仕事みたいなもんだけど、しんどくないわけじゃないんだよ?
よく介護現場の話題で取り上げられるのは、腰を痛めるとか運動量が多くてしんどいとか、夜勤がしんどいとか。そういうやつ。
それはほんとそう。
なんなら介護度4以上の利用者がいる施設は、介護ロボットの導入を義務化してほしいレベルで腰が痛い。
わたしの腰椎は潰れる寸前だ。
こっちが寝たきりになりそうなんだが、どうにかしてくれんか?
体のしんどさはわりとみんな知ってくれてる。
大変ねって言ってくれる。
ありがたい。
これはほんと。
でも精神的なしんどさも、知ってくれていいんだよ?
言うまでもないけど、利用者はみんな大人だ。
自分の役割を持ち、家庭を持ち、社会的な意義を持っていた人たち。
自分の意思で外出したり、買い物をしたり、玄関の鍵を開けたりっていう、選択や決定ができていた人たち。
わたしたちが今普通にできていることを、同じようにできていたひとたち。
忘れがちだけど、彼らはみんな大人だ。
「高齢者の尊厳を守れ」って、学校で教わったけど、その「尊厳」とやらをいちばん奪っているのが、介護施設じゃないかって最近よく思う。
管理したら楽だよ。
安全だよ。
便利だよ。
お金さえ払えば、衣食住は保障されるよ。
でもそれって、自分の意思が尊重されて、自由に生きるってこととイコールになるかな?
認知症だからできなくなること、たくさんある。
危ないことたくさんあるし、汚いこといっぱいあるし、こんなことまでわかんなくなるのかって、認知症怖いって働きながら思うときがある。
心身に不自由がある家族に、安全に長生きしてほしいって思うのは当たり前のことだ。
見て見ぬふりするほうが絶対しんどいし、監護責任ってものもある。
できる医療措置があるなら使いたい。
ご飯が食べられないなら、見殺しにしないで胃ろうとか経管栄養にして生きてほしい。
病気が進行したら、本人が嫌がっても薬を飲ませて治療してほしい。
まだ選択肢が残されているのに、選択しないのは非人道的だ。
じゃあ治療しなければいいとか、介護施設に入らなければ解決する問題でもないってことも、わかっているつもりだ。
わたしだってできればみんな長生きしてほしい。
仲良しの利用者を見送るときはいつだって悲しいしさみしいし、無力感に苛まれる。
でも。
じゃあそれは、利用者の「幸せ」なのか?
選択肢を奪って、大人として見てないのは、誰なの。
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