影の語り部と眠れぬ王女~盗んだ子ども~
三連休中日。
今日は公園にお散歩に。

急に寒くなりました。
おふとんから出たくない季節が
近づいてきましたね……
大好きなおふとんの中で聞いてほしい
寝落ち朗読です(o_ _)o
影の語り部と眠れぬ王女 第4夜
~盗んだ子ども~
窓の外で、風が小さく笑いました。
森の影がゆれて、月は静かに雲をかすめます。
王女さま、今夜もまだ眠れませんか。
では、ひとつだけ夜のはなしをいたしましょう。
とある村の、ひとりの男の子の話です。
その子は貧しい家に生まれました。
おもちゃはなく、遊び相手も少なかった。
ある日、友達の家へ遊びに行ったとき、
棚の上で光る小さな木馬を見つけました。
白く塗られた体、赤いたてがみ。
友達はたくさんの玩具を持っていて、
それにはもう飽きているようでした。
「これ、もらってもいい?」
そう聞こうとしたけれど、
声は喉の奥で消えてしまいました。
そして、手が動いてしまったのです。
家に帰ると、胸がどくどく鳴りました。
誰も気づいていない。
それなのに、心の奥で何かがざわめいていました。
夜、木馬を見つめていると、
影が伸びて、馬の形を飲み込んでいきました。
その日からです。
眠ろうと目を閉じるたび、
闇の中で“コトリ、コトリ”と木馬の足音が聞こえるようになりました。
ある夜、夢の中で少年は森の中に立っていました。
木馬はひとりでに動き、
赤いたてがみをゆらして、少年を見上げていました。
その背後から、低い声がしました。
「それは、誰のものだい?」
振り向くと、黒い烏が一羽、枝の上にいました。
少年は泣きながら言いました。
「ごめんなさい。ぼくが……盗んだんです。
でも、返せないんです。怖くて……」
烏は首をかしげて、
「ならば、その影を食べてあげよう」と言いました。
烏が羽をひとふりすると、
少年の胸の奥から黒い煙のようなものが出てきました。
それは、罪悪感という名の影でした。
「こんなに小さな影で、こんなに重いとはね」
烏はそれをゆっくりと啄みました。
すると、不思議なことに、
木馬の足音が遠ざかっていきました。
胸を締めつけていた痛みが、少しずつほどけていきます。
烏は言いました。
「影は、夜が食べてくれるもの。
だから朝が来るんだよ。」
少年は涙を拭い、
木馬を抱きしめたまま、深い眠りにつきました。
王女さま。
誰にでも、夜に沈むような影があります。
それを持っているからこそ、
ひとはやさしくなれるのです。
だから今夜も、
心の奥の影を夜に預けてしまいましょう。
灯を落として 目を閉じて。
おやすみなさい、王女さま。
※フリー台本ではありません
