夏休みの昼下がりだけ、女王になれた話。
昭和の我が家。
テレビは、1台だけだった。
チャンネル権を持っていたのは、
父ちゃんと、姉ちゃん。
父ちゃんは、プロレス。
姉ちゃんは、8歳上。
「レッツゴーヤング」。
小学生のみーちゃんは、
アニメが見たかった。
でも、無理だった。
いつも、蚊帳の外。
それが我が家での、
みーちゃんのポジションだった。

でも。
夏休みの昼間だけは、違った。
父ちゃんは仕事。
母ちゃんも仕事。
姉ちゃんもどっか遊びに行ってて。
家には、
みーちゃん、ひとり。
家の中は、しーん。
扇風機だけが、
ぶーーん、と回っている。
麦茶をコップに入れて。
誰にも邪魔されず、
テレビの前へ座る。
その時間だけ。
チャンネル権は、
みーちゃんのものだった。
無敵。
夏休み限定の、
女王タイム。

何を見てもよかった。
今の私なら。
迷わず
「笑っていいとも」を見る。
笑って。
お昼を過ごす。
でも。
あの頃の私は、
違った。
選んだのは。
「あなたの知らない世界」。
もう、
オープニングから怖い。
お地蔵さんが映るだけで、
なんだか怖い。
そして。
必ず出てくる人がいた。
新倉イワオ先生。
心霊の人。
ではなく。
新倉イワオ先生。
フルネームに、
「先生」までセットで覚えている。
子どもの私は、
「あ、この人は本当に詳しい人なんだ。」
そう信じていたんだと思う。
人形の髪が伸びる話。
夜のトンネルの話。
鏡の向こうに誰かいる話。
今では定番になった怪談ばかり。
でも。
当時の小学生には、
全部が初見だった。
怖い。
でも、見たい。
チャンネルを変えればいいのに。
変えられない。
最後まで見てしまう。
そして。
本気で怖くなる。

でも。
記憶って、不思議だ。
あんなに怖かった番組なのに。
今思い出すと、
怖さよりも。
夏休みの空気。
扇風機の音。
麦茶の味。
誰もいない家。
そんな景色の方を、
先に思い出す。
だから。
最後は。
怖い思い出のままじゃ終わらせない。
小学生のみーちゃんと。
オカルト先生キャラ。
おそろいの朱色ジャージサロペットを着て。
「オバケの手」を顔の横でパタパタ。
ふたりで、
楽しそうに踊ることにした。
※先生キャラは実在の人物ではなく、オリジナルデザインです。
あの頃の、小学生のみーちゃんへ。
一人で留守番して。
テレビの前で固まって。
CM中にトイレ行って、洗面台の鏡で自分見るの、ちょっと怖かったね。
でも、大丈夫。
あの夏は、
ちゃんと、
笑い話になった。
今では一緒に踊れるくらい、
懐かしい思い出になったよ。
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