奥様はおじさん?魔女?魔おじさん。
私の左足には、“働かないおじさん”が住んでいる。
脳出血のあと、足が思うように動かなくなった。
「麻痺」って言葉は、なんか冷たくてイヤで、
代わりに“働かないおじさん”って呼んでいる。
サボりがちで、気まぐれで、でも憎めない同居人。
うちではもう、ファミリーみたいな存在だ。
おじさんは、世間の関心も高いのか、
今日がハロウィンだと、知ってか知らずか——
魔法使いになった。
私の足を棒に変えた。
だから、魔法使い。
ピキッ、と音がして、
膝のあたりが固まっていく。
おじさんの声が聞こえた気がした。
「スムーズに曲がると思うなよ。」
……発動。
今日も無言の呪文、炸裂である。
棒になった私の足は、文字通り棒で、屈伸がうまくいかない。
なめらかにいかない。
みんなは、なにげなくしゃがんだり、すっと立ったりするけど、
私にとってそれは、魔法の動作みたいなものだ。
でも、私はもう怒らない。
だってこの魔法が、今日も私を立たせてくれているから。
魔法使いって、普通さ、
魔法使いサリーとか、魔女の宅急便のキキとか、
ハリーポッターとか、なんか、かわいいじゃん。
でもうちの魔法使いは、おじさんだよ?
おじさんが、ね、イソジのみーちゃんに魔法をかける。
足を棒に、ってさあ。
なにさそれ。
全米も泣かないし、ともすれば炎上かもしれない。
もしも、「働かないおじさん愛護団体」なんてものが存在したならば、
私は間違いなく、毎回コンプラ違反で大炎上だろう。
だって私は、おじさんをイジリイジリ倒している。
棒だの、魔法だの、ストライキだの。
でも——
それでも、おじさんは、
私の中の家族みたいな存在なんだ。
動かない日も、痛い日も、
おじさんがいるから、私は立っていられる。
今日もハロウィンの魔法にかかりながら、
私はおじさんと一緒に歩いている。
だってうちの魔法使いは、
サリーでもキキでもハリーでもなく、
おじさんだから。

