私が、おじさんをリフトした日
温泉施設へ行った。
ほんとは平日、大人ひとり830円。
でもその日は、ダンナと行ったからペア割で650円。
もう入口から、ちょっと機嫌がいい。
温泉って、不思議だよね。
入る前から、少しやさしくなる。
男女別だから、ダンナが何してるかはわからない。
あっちはあっちの湯気。
こっちはこっちの湯気。
私は露天の寝湯へ。
体の↑うえ半分は、冷たい風にさらされる。
でも、下半分は40度超え。
上はひやっ。
下はじわっ。
この真逆が、なんとも、いいのよ。
のぼせないのに、ちゃんとあったまる。
私は、お湯と風に挟まれて、ミルフィーユ。
上が空気。
真ん中に、私の麻痺してる足
通称・働かないおじさん。
下が温泉。
顔は、完全にカスタード。
とろけてる。
温泉あがり。
歩いたとき。
踵がついて、
足の裏がついて、
つま先で、すっと蹴る。
本当は、こうやって歩く。
でも普段は、働かないおじさんが足ぴーーーん。
遊びがない。
固い。
余裕がない。
「今日はこのへんで」って顔。
なのに、その日は違った。
踵と、裏と、つま先のタイミングが、合った。
「あ、いま一緒に出た。」
って、わかった。
あれはね、
りくりゅうペアみたいだった。
氷の上じゃない。
温泉あがりの廊下。
でも、
ふたりで同じ方向を向いて、
同じタイミングで踏み出す感じ。
私は、はじめて思った。
今日なら、リフトできるかもしれない。
いつもは、持ち上げられてる気分なのに。
でもこの日は、
私が、おじさんをリフトした。
ほんの一歩ぶん。
それだけで、十分。
650円で、金メダル。
温泉って、すごい。

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