いくつになっても。
「きみちゃんって、なんなんだろう。」
友達かなあ。
いや、ちがうな。
お母さんでもないし。
でも、他人って感じでもない。
見た目はね、
競馬場にいそうな感じで、
ハンチングかぶってて、黒いジャンパー。
遠くから見たら、
いや、近くで見ても、
オッサンのようなマダムだ。

近所に住んでる。
この前、スーパーの帰りに、
電動チャリ(通称ベンツ)に、
食材の入ったビニール袋を入れようとして、
マゴマゴしてたら、
スッと、横から手が出てきて、
私の手からビニール袋を取って、
何も言わず、カゴに入れてくれた。
振り返ったら、きみちゃんだった。
ほんとに、何も言わず。
きみちゃんは、都営に住んでる。
本当は、動物が好きなんだけど、
規約で飼えないらしい。
うちは猫を飼っていて、
旅行で3泊するときね。年に一回。
そのときだけ、きみちゃんに頼む。
餌やりと、トイレの砂の掃除。
『みーちゃん、次いつ行くんだい』
『猫が、餌を待っててくれてるんだよー💖』
って、うれしそうに言う。
なんか、その言い方が、いい。
ある日、きみちゃんが言った。
『みーちゃん、クーラー掃除したい』
でもね、前に家電量販店に頼んだら、
高かったんだって。
だから、
『業者さんと直接やりとりできるやつあるよ』って、
暮らしのマーケットを提案した。
『それいいね』って。
でも、ここから、問題が。
暮らしのマーケットって、
アカウント登録するよね?
『アカウントなーに?』って言われて、
あーーー、ってなって、
『じゃあ、私やるよー』って。
きみちゃんは、LINEもしない。
連絡は、電話。
☎️直接。
だから、アカウント登録とか、
たぶん無理かなあって思った。
でも、それで困ってる感じでもない。
だから、
そのまま、全部やることになった。
そんな流れで、
きみちゃんと、クーラー掃除の日が決まった。
当日は、
きみちゃんと私と、ふたりで、
女子…⁉️トーク。
作業してるのを見ながら、
『すごいなあ』って言ったり、
『こんなに汚れるんだね』って言ったり。
なんか、ふたりで見てた。
どうして、きみちゃんなんだろう。
親でもないし、
でも、なんか、ちがう。
きみちゃんは、
パートナーと長く一緒にいて、
先に亡くなって、ひとりになった。
いまは、都営に住んでいて、
お風呂もね、
かまの高さが高くて、足が上がらないから、
いつも、高齢者割引で風呂屋に行ってる。
そういう話を、
ふつうにする。
ひとりで、なんでもやってる。
それが、すごいとかじゃなくて、
ただ、そうやって生きてる。
わたしはさ、
もし、旦那がいなくなったら、
ひとりになる。
だからかな。
きみちゃんの生き方を、
ちょっと先の自分みたいに、
見てるのかもしれない。
だからかな。
きみちゃんと、ふたりで、
女子…⁉️トークしてる時間が、
なんか、いい。
いくつになっても。

