浅草ほおずき市、あの頃はデニーズ、今宵は堀切で一献
今年も、行ってきた。
浅草の、ほおずき市。
毎年毎年、行くんだ。
暑いし。
混んでるし。
浅草寺まで歩けば、汗だくだし。
それでも、行く。
もはや、
「今年も夏が来ましたね」
を確認しに行く行事みたいなものになっている。
ほおずき市には、死んだ母ちゃんとの思い出がある。
と書くと、
いきなり湿っぽい話が始まりそうだけど、
今日は、悲しさメインじゃないよ。
母ちゃんは、私が小さい頃、
よく浅草のほおずき市に連れて行ってくれた。
ずらっと並ぶ、ほおずき。
威勢のいい売り声。
人、人、人。
子供のみーちゃんは、
ほおずきそのものより、
そのあとのことを楽しみにしていた。
帰りに、デニーズでご飯を食べる。
これ。
当時の私にとって、
デニーズは、ご馳走だった。
今でこそ、
「ちょっとお茶でも」
くらいの顔で入れるけれど、
小学生のみーちゃんにとっては、
完全に特別なお店。
メニューを開くだけで、ワクワクする。
何を食べたかは、もう覚えていない。
ハンバーグだったか。
スパゲティだったか。
もしかしたら、デザートのことしか考えていなかったかもしれない。
でも、
ほおずき市の帰りに、母ちゃんとデニーズ。
そのワンセットだけは、今もちゃんと覚えてる。

そして、時は流れた。
小学生だったみーちゃんも、
今では立派な中高年。
立派かどうかは別として、
年齢だけは、しっかり中高年になった。
今年は、旦那と二人で浅草へ。
行きは、つくばエクスプレス。
速い。
とにかく速い。
文明って、すごい。
昔の思い出も大事だけど、
行きは時短したい。
中高年は、体力の配分も大事なのだ。
ところが、帰りは、
あえて東武線に乗った。
そこから、京成線へ乗り換える。
昔、母ちゃんと帰った道。
効率だけ考えたら、
もっと早い帰り方はある。
でも、帰りだけは、
ちょっと昔をなぞってみたくなった。
行きは文明。
帰りは思い出。
このくらいが、ちょうどいい。
そして私たちは、
最寄り駅でもないのに、
堀切菖蒲園駅で途中下車した。
なぜなら、
飲みたかったから。
思い出をなぞると言いながら、
途中から完全に、酒のにおいがしてくる。
東武線とか京成線って、
なんだか味のある駅が多い。
駅を降りただけで、
ちょっと昔に戻ったような感じがする。
きらびやかではない。
でも、
こういう町には、こういう町の良さがある。
向かったのは、
ホルモンのお店、富吉さん。
テレビでも紹介される有名店らしい。
有名店と聞くと、
ちょっと構える。
常連さんばかりだったらどうしよう。
一見さん、お断りみたいな空気だったらどうしよう。
そんなことを考えながら入ったけれど、
店主さんが、とても気さくだった。
初めて来た私たちにも、
自然に話しかけてくれる。
コの字カウンターに座って、
旦那と二人。
下町のハイボールを飲みながら、
ホルモンを食べる。
うまい。
値段を見て、
もう一回うまい。
安いからうれしい、だけじゃない。
ちゃんと、おいしい。
そして、居心地がいい。
こういうお店は、
料理だけじゃなくて、
店の人も、店の空気も、
全部ひっくるめて、ご馳走なんだと思う。

子供の頃は、
ほおずき市の帰りに、母ちゃんとデニーズ。
今は、
ほおずき市の帰りに、旦那と堀切で一献。
食べるものも変わった。
一緒にいる人も変わった。
デニーズは、ホルモンになり、
ジュースは、ハイボールになった。
ずいぶん、大人になったものである。
でも、
ほおずき市に行って、
帰りにおいしいものを食べて、
「今年も来たね」
みたいな気持ちで一日を締める。
そのワンセットは、
今も変わっていない。
母ちゃんとの思い出を、
そっくりそのまま残すことはできない。
でも、
形を変えながら、
今年もちゃんと、続いている。
浅草ほおずき市。
あの頃はデニーズ。
今は、堀切で一献。
来年は、どこで締めようか。
たぶんまた、
帰り道まで含めて、
ほおずき市なんだと思う。
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