第4回 BLIの原理:干渉パターンの変化から分子結合を読み取る仕組み— BLIとSPRを学ぶシリーズ —
みなさま、こんにちは。
本シリーズでは、BLIとSPRを学びます。
BLIは Bio-Layer Interferometry(バイオレイヤー干渉法)、SPRは Surface Plasmon Resonance(表面プラズモン共鳴) の略であり、いずれも分子間相互作用をラベルフリーかつリアルタイムで解析するための代表的な手法です。
テキストとしては、”A Compendium for Successful BLI and SPR Assays”、
和訳すると「BLIおよびSPRアッセイを成功させるための総合ガイド」になりますが、こちらを使います。
下記のリンクから入手可能です。
SPRやBLIは、抗体医薬品の開発や分子間相互作用解析において日常的に使用される技術ですが、「装置が実際には何を測定しているのか」を厳密に説明しようとすると、意外に難しい技術でもあります。特にBLIでは、センサー表面で起きている抗原抗体反応そのものを直接“見ている”わけではなく、分子結合によって生じる光学的変化を干渉パターンとして読み出しています。今回は、BLIがどのような物理原理によって分子間相互作用を測定しているのかを、図を参照しながら整理してみたいと思います。
BLIは何を見ているのか?
干渉パターンの変化から分子結合を読み取る仕組み
BLI(Bio-Layer Interferometry)は、抗体と抗原などの分子間相互作用をリアルタイムで解析できるラベルフリー技術として広く使われています。しかし、「実際には何を測定しているのか?」という点は、最初は少し分かりにくい技術でもあります。
まずFigure 17を見ると、BLIでは白色光がバイオセンサー先端へ照射され、二つの界面から反射されていることが分かります。

一つはセンサー内部の参照層(Internal Reference)であり、もう一つは液体と接する生体適合性マトリックス表面(Interface with Liquid)です。この表面にはリガンド分子が固定化されています(注1)。
つまりBLIでは、
- センサー内部からの反射光
- 分子結合が起こる表面からの反射光
の二つの光波を利用していることになります。
次にFigure 18では、これら二つの光波が互いに干渉する様子が示されています。

二つの波の位相が揃っている場合には、光は強め合い(建設的干渉)、逆に位相がずれている場合には光は打ち消し合います(破壊的干渉)。ここで重要なのは、BLIが単純な光強度変化を測定しているわけではない、という点です。
BLIでは、二つの反射光の位相差によって生じる干渉スペクトル全体を観測しています。
Figure 18下段のグラフでは、波長ごとに干渉強度が変化している様子が示されています。
では、この干渉パターンはなぜ変化するのでしょうか。
その答えがFigure 19です。

リガンドにアナライトが結合すると、センサー表面の分子層が厚くなります。厳密には、分子層の「光学的厚さ(optical thickness)」が増加します。
すると、表面側で反射する光の光路長が変化し、二つの反射光の位相差が変わります。その結果、Figure 19下段に示されているように、干渉スペクトル全体が波長方向へシフトします。
BLIでは、このスペクトルシフトを nm shift としてリアルタイムで測定しています。
つまりBLIは、「リガンドとアナライトの結合によって生じる光路長差の変化」を観測している技術と言えます。
アナライトが結合すると分子層が厚くなり、スペクトルシフトは大きくなります。
一方、アナライトが解離すると分子層は薄くなり、スペクトルは元の位置へ戻っていきます。
この時間変化を追跡することで、
- 結合速度定数(kon)
- 解離速度定数(koff)
- 平衡解離定数(KD)
などを求めることができます。
さらにBLIの特徴として、“Dip and Read” 方式があります。これは、SPRのような複雑な流路系を使わず、バイオセンサー自体を96ウェルまたは384ウェルプレート中のサンプルへ浸漬する方式です。
この構造によって、
- 高スループット化
- 未精製サンプルへの対応
- シンプルな装置構成
などが実現されています。
BLIは単なる「結合量測定装置」ではなく、「分子結合によって変化する光学的厚さを、干渉スペクトルの位相変化として読み出す光学測定技術」として理解すると、本質が見えやすくなります。
今日は以上です。
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