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第8回 正しい解離定数を得るために— BLIとSPRを学ぶシリーズ —

今回はBLIとSPRを学ぶシリーズの第8回目です。
ここでは、アナライトとリガンドの選び方やセンサーチップへの固定化法など、実験設計に関わる実践的なポイントについて考察します。

SPRやBLIについて学び始めると、多くの人はデータ解析やフィッティング方法に目が向きます。しかし実際には、きれいなセンサグラムが得られるかどうか、そして信頼できる解離定数(KD)が得られるかどうかは、「実験設計」の段階でほぼ決まっています。
抗体と抗原のどちらを固定化するか。どの固定化方法を選ぶか。どのセンサ表面を使うか。
これらの選択は、真の結合定数を得られるかどうかを左右します。
今回は、実験設計で特に重要だと感じた4つのポイントを紹介します。

(1)タンパク質Aとタンパク質Bのどちらを固定化すべきか?

どちらを固定化することも可能ですが、この選択は測定結果に大きな影響を与えます。
例えば分子量の小さなタンパク質Aと分子量が大きなタンパク質Bを測定する場合、タンパク質Aをセンサ表面に固定化し、タンパク質Bを液相側に流す方が一般的です。
理由の一つは、BLIやSPRのシグナルは分子量の変化に依存するためです。小さい分子を固定化し、大きい分子を流す方が、結合による質量変化が大きくなり、応答も大きくなるためです。

また、分子量の以外にも固定化による立体障害も考慮する必要があります。
必要に応じてリンカーを導入すると、結合部位が露出しやすくなり、より自然な相互作用を測定できる場合があります。

(2)AvidityがKDを良く見せてしまうことがある

抗体は通常2つの抗原結合部位を持っています。もしセンサ表面に抗原を高密度で固定化すると、一つの抗体が2つの抗原へ同時に結合できる場合があります。この現象をAvidity(アビディティ)と呼びます。
Avidityが生じると、抗体が非常に外れにくくなるため、「本来よりも解離速度(kd)が遅く見える」という現象が起こります。

その結果、「KDが非常に小さく結合性の良い抗体」であるかのように見えてしまいます。
分子本来のAffinityではなく、多価結合による効果(Avidity)を測定しているためです。

その対応策として、抗体-抗原相互作用の速度論解析では、仮に抗体の方が分子量的に大きかったとしても、抗体側をリガンドとして固定化し、抗原をアナライトとして流す実験系が推奨されます。

(3)ランダム固定化は結合部位を隠してしまう

タンパク質やペプチドなどをセンサーチップに固定化するもっとも一般的な方法は、アミノ基を利用した共有結合固定化(アミンカップリング)です。しかし、この方法ではリガンドがどの向き(配向)でセンサ表面に固定化されるか制御できません。

つまり、
・結合部位が上を向く分子
・横を向く分子
・下を向く分子
がランダムに混在した状態になります。

もし、相互作用に必要な部位がセンサ表面側を向いてしまえば、アナライトは結合できません。
このような「ランダムな向き」は、シグナルの低下や再現性の低下につながります。
そのため、配向を制御できるCapture法が選択されることが多くあります。

(4)Capture法は「向きを揃える」ための方法でもある

Capture法というと、「センサを再利用できる」という利点が紹介されることが多いですが、それ以外にも重要な利点があります。
それはProtein AやProtein G、抗His抗体などを利用することで、リガンドを一定方向に並べて固定でできることです。
つまり、結合部位が溶液側へ向いた状態を揃えやすくなります。

この結果、
・活性の高い表面を作れる
・再現性が向上する
・ランダム固定化による立体障害を減らせる
といったメリットが得られます。

一方で、解離速度が遅い相互作用を観たいときには要注意です。
それはCapture分子自身が観測したい抗原-抗体の解離より先に解離してしまう可能性があるためです。
この場合、抗原と抗体はまだ結合しているのに、Captureした分子がはずれてしまったために、あたかも抗体と抗原の解離が起きてしまったかのようなセンサーグラムになってしまいます。
そのため、観測したい現象を理解した上で、その実験系に応じたセンサーグラムへの固定化法の使い分けが必要になります。

おわりに

SPRやBLIでは、フィッティングモデルに注目しがちです。しかし、その前段階の実験設計も非常に重要です。
リガンド・アナライトの選択、Avidityの回避、固定化方法、Capture法の選択。
これらを適切に設計することで、初めて信頼できる速度定数やKDが得られます。

今回は以上です。
過去のBLIとSPRを学ぶシリーズは以下のリンクからお読みいただけます。

また、本記事を書くのに参照したアプリケーションノートは以下のリンクから入手できます。

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